
念願の好物が漸く手に入った。宮崎産の「日向夏」(ひゅうがなつ)である。
日向夏は、宮崎が原産である「みかん」の一種。文旦(ぶんたん)と柚(ゆず)の交雑種とみられるもので、江戸後期に発見された。昨今の園芸果実の濃厚な風味とは趣を異にする、古種らしい自然な甘さと清爽な香に惹かれ、毎年その旬を心待ちにしている。
しかし、何故か今年は旬である連休頃を過ぎても目にすることが出来なかった。為に、遅れ馳せながら1箱注文することにしたのである。写真は届けられたその5キロ入りの小箱。箱のデザインもその風味同様、どこか控え目なのがいい。
父祖地へ繋ぐ「味の奇縁」
この果実と出会ったのは、昔東京に住んでいた頃のこと。父方の実家と同じ、宮崎出身の人から偶然振舞われたことが最初であった。それまで存在を知らなかったその美味に驚くと共に、時空を超えて父祖地へ繋ぐ「味の奇縁」に、感慨深くさせられたのである。

外皮を刃物で剥いてから食すという独特の方法が要る為、それを説明した紙が入っていた。知らない人の為に説明すると、日向夏は、白いワタ部分を含めた外皮以下の全てを食べることが出来る。実はこの独特の食感も、好みの理由になっている。

町家・古家に相応しい色調
味と食感、そして実はもう1つ好みの理由がある。それは、その色調である。
レモン等の外産果実の色とはひと味違ったその黄色は、漆器等の伝統食器や家具との相性がいい。つまり、古家に飾れば実に「様になる」果実なのである。どちらかといえば暗色多いその中にあっても違和感なく、それどことか、恰も初夏の陽気が訪れた気分にすらさせられる。日向夏は、私にとって正に町家・古家に相応しい果実の1つなのである。

古い水屋棚の中でもこの通りの役者ぶり。「セザンヌな果実」達ではこうはゆくまい(笑)。









