2023年11月03日

紅葉試履

比良山脈主稜線上にある北比良峠から見えた、ススキ越しの琵琶湖や近江舞子水泳場・小松沼等

新靴慣らしに秋山へ

今日は朝から隣県滋賀に出掛ける。

先月、9月末の高山行で浸水するようになった登山靴の替えを新調したが、滋賀西部の比良山脈で、その慣らしや試験をするためであった。

勿論この時期恒例の、山の紅葉具合の観察も兼ねて。例年なら標高1000m超の比良山上は紅葉が終り冬枯れとなる頃だが、今年は猛暑で、しかも今日ですらまだ暑かったので、良い秋景が観られると思ったのである。

新調の靴は高山用の重登山靴。保温材入りの雪山対応ではないので「ライトアルパイン」と分類される場合もあるが、厳冬期以外用としては最も重厚な部類の革靴である。

それは、15s以上の野営装備を担ぎ、1日当り歩行10時間以上、登行高度2000m以上、山中移動15km以上、そして岩稜帯通過という、高所登山・縦走に耐えられ、足を保護できるものであった。

まあ、普段よく行く畿内の山には無用の長物ともいえるが、更新を機に導入することにした。これまでの靴も本場イタリア系のしっかりした革靴だったが、重登山仕様には満たぬ柔さ有るものだったので、高山の長大な下りで小指を傷めたり、岩場・ガレ場での安定等の問題を抱えていた。

また、その靴が昨今の円安・物価高により倍くらいの値になったことも影響した。しかし、その他も靴も軒並み高騰しており、一時は早期の更新を諦めかけたが、偶々良い靴が格安で手に入れられたので、思い切って購入したのである。

入手したからには、早期に慣れる・慣らす必要がある。重厚な登山靴こそ、また高負荷の条件で使う靴だからこそ、その必要があり、今日の出動の動機ともなった。

手入れや修繕を繰り返し10年大事に履いた旧靴は、機を見て靴底を張り替え、近山用にでも使おうかと思う(浸水は他の補修である程度対処可)。


上掲写真 比良山脈主稜線上にある北比良峠(標高970m)から見えた、ススキ越しの琵琶湖や近江舞子水泳場・小松沼(内湖。中央上)等。なお、今日表題の「試履」は、「しり」もしくは「しくつ」と読む。「試し履き」と「履(くつ。靴と同意)試し」の両方の意を持たせたのである。


比良山脈・武奈ヶ岳等の登山口「イン谷口」付近に駐車する登山者の車列
朝9時半くらいに麓に着いたが、サングラスを探したりしたため、結局10時前の開始となった。登山口の谷なかには、この様に既に多くの登山者の車輌があり、停め場を探して再度麓に下る車も次々現れた。さすがは紅葉期の比良。人気山域らしい状況である


早朝の霧が晴れ始めた、比良山・正面谷上方

敢て直登、正面谷・コヤマノ岳ルートへ

今回は靴や足の具合次第なので、行ける処まで行くことにしたが、一応最奥の山脈最高峰・武奈ヶ岳(標高1214m)往復を目標にした。

その道程は一般的なものではなく、敢えて登坂が強く足下の悪い「正面谷」と「コヤマノ岳」を直登するものにした。

今朝は滋賀に入った途端深い霧に閉ざされ見晴らしを危惧したが、写真の如く、山上方面は急速に晴れ始めたようである。


比良・正面谷上部の青ガレ脇の紅葉
正面谷沿いの登山路を上がると、やがて急なガレ場で知られる「青ガレ」に達する(標高650m前後)。青みある大石が散乱する斜面で、通行注意箇所だが、脇には、樹々の紅黄葉がみられた


比良・正面谷上部で金糞峠下の谷なかの紅葉
青ガレを更に進むと、紅葉に覆われた水無谷に達した。稜線まであと少し


紅葉あるも霧で琵琶湖が見えない比良山・金糞峠
大小の石や砂で足下の悪い水無谷を詰めると、やがて稜線上の鞍部・金糞峠(かなくそとうげ。標高約880m)に達した。本来ならこの切れ目の先に琵琶湖が見えるのだが、まだ霧があって叶わなかった


金糞峠裏の紅葉の源流谷

金糞峠裏から未踏ルートへ

金糞峠で今日最初の補水休息を行い、峠裏の谷を緩やかに下りつつ進む。山脈の東を流れる安曇川の源流域の一つで、大きな台杉が多い鬱蒼とした森だが、今日は黄葉のお蔭で明るめであった。


比良・金糞峠裏のヨキトウゲ谷の古道の分岐点「コバ」跡平坦地
金糞峠裏の谷なかには、こんな平坦地も現れた。古道の分岐点で、材木や石材等の牛馬運搬に利用された「コバ」と呼ばれる造成地か。台杉共々、山と人との古くからの関わりが知れる遺構である


比良・金糞峠とコヤマノ岳・武奈ヶ岳を結ぶ、尾根上の近道急登
金糞峠裏の谷なかでは、途中支流谷を遡上する道を進み、やがて谷横の尾根に乗る急登を採った。負荷が高く、靴擦れの発生も自覚したが、これまで通ったことのない道だったので、楽しみつつ進む


比良・金糞峠とコヤマノ岳・武奈ヶ岳を結ぶ、尾根道上部の落葉したブナ林

意外の冬枯れとオーバーユース(?)崩落地

急登の尾根道をひたに進むと、やがて写真の如き明るい樹林に到達。樹皮が白いので、ブナ林と思われたが、なんと既に落葉していた。そのため、樹間の向こうに、先程越した山脈主稜線が見えた。


比良山脈第2位の高所・コヤマノ岳の標識と落葉したブナ
冬枯れのブナ覆うなだらかな稜線を進むと、間もなくコヤマノ岳(標高1181m)の標識に遭遇。実際の最高点は少し先だが、一応比良第2位の高所


コヤマノ岳近くの落葉したブナ林越しに見えた、比良山脈最高峰・武奈ヶ岳山頂
コヤマノ岳の近くからは本日の目標地・武奈ヶ岳が見えてきた(山頂は右端)。そして、山上に多くの人がいるのも見えた


PB037192.jpg
結構な高所・奥地に達したが前進を止める不具合は生じなかったので、そのまま進む。武奈ヶ岳山頂近くでは崩落した山肌が現れ驚く。多くの登山者通行の影響で脆くなり、大雨等を機に崩れたのか。土嚢による対策はあったが効いていないので早急な処置が必要に思われた。思えばここを通過するのは久々(7年ぶり?)。まさか元の道が消える程荒れているとは……


秋晴れの武奈ヶ岳山頂

眺望に難有?好天の武奈山頂

そして山頂着。時は丁度正午、出発から2時間強であった。硬く重い新靴を履いた割に遅れは無し。一先ず登りの試験結果は上々か。

写真は人が少ない時を見計らったが、本来は百人を超えるような混雑ぶりであった。


武奈ヶ岳山頂から見た北側は広谷の紅葉
武奈ヶ岳山頂から北は高島・今津方向を観る。手前の高所緩傾斜谷「広谷(標高1000m前後)」の紅黄葉が美麗だが、やはり、冬枯れも多い


武奈ヶ岳山頂からみた、北の広谷の紅葉
広谷の紅葉を望遠撮影。尾根に囲まれている分、温暖なのか、紅葉が良く残っている


武奈ヶ岳山頂から見た、紅葉するコヤマノ岳等
同じく武奈ヶ岳山頂から見た、南はコヤマノ岳方面。先程通過してきた稜線である。冬枯れ広がるブナ林の具合から、結局今年の比良の紅葉に暑さの影響は見られず、平年並みかと思われた。先月一旦冷えた際、一気に進んだのか。そしてまだ霧の影響が残っているのか、琵琶湖は殆ど見えない


武奈ヶ岳山頂から見た、晴天ながら霞む丹波山地の紅葉
こちらも同じく武奈ヶ岳山頂から見た東方は丹波山地。京都北部の山塊で、1000m弱までの山々が連なる。こちらも、微妙な紅葉具合。元より、霧の影響か、ぼんやりして精彩に欠ける。天気が良くなったのに残念


武奈ヶ岳山頂から八雲ヶ原へ下る谷道の紅葉

帰路は八雲ヶ原・ダケ道経由

武奈ヶ岳山頂にて40分程撮影や食事に費やしたのち、帰路へ。復路は少々迂遠となるが「ダケ道」と呼ばれる一般的ルートを辿ることにした。

その途上のコヤマノ岳東の谷あい等では、この様に紅黄葉が見られたが、盛りは過ぎた感じであった。


旧比良スキー場ゲレンデ跡の美麗な紅黄葉
コヤマノ岳東の、標高920m程の場所にある旧比良スキー場ゲレンデ跡に下ると、陽当たりや温度条件の所為か、美麗な紅葉が現れた


八雲ヶ原湿地の旧比良スキー場跡に原状回復された池沼
旧比良スキー場ゲレンデ跡下に続く八雲ヶ原湿原。スキー場施設があった場所だが、撤去後法律に基づき二つの池が原状回復された。意外だったのは、池畔にテント泊のグループが多かったこと。それは、老若男女様々な人で構成され、以前にはなかった状況であった。コロナ禍を機に生じたキャンプブームの所為か。または11月とは思えぬ高気温・連休の所為か……


崩壊して通行不能となった八雲ヶ原の木道
こちらは、二つの池の西隣にある、スキー場閉業以前からあった池沼。昔の山会では通れた木道(板橋)が崩壊し、通行不能と化していた。山中通路の一つ、近道だったのに、残念


旧ロープウェイ山上駅跡の北比良峠とテント
平坦な八雲ヶ原の池沼帯を抜け、荒れた林道状の登坂を1km弱進むと、花崗岩砂で白々と開けた場所・北比良峠(標高約970m)に達した。金糞峠東北に位置する比良主稜線上の鞍部だが、かつて索道駅があった関係からか、整地され峠らしい姿はない。そもそも、本来の峠は北側の鞍部ではなかろうか。そして、ここにも幾つかのテントが張られており、その初見に驚かされた。八雲ヶ原共々、皆便所はどうしているのか。人数が多いだけに少々案じる。表題写真の場所だが、結局霧は晴れず、琵琶湖は見え難し


北比良峠西北に見えた紅葉のコヤマノ岳や武奈ヶ岳
北比良峠にて後方は西北を眺めると、正面に午前通過したコヤマノ岳(山嶺中央)や、昼休息した武奈ヶ岳(同右奥)が見えた。これらは、主稜線裏の奥山なので、これから東麓に下ると見ることが出来なくなる。再見!


北比良峠近くのダケ道から見た釈迦岳山腹の紅葉

「ダケ道」にて

北比良峠にて靴紐を調整し、再出発。主稜線東斜面に下るため暫く支尾根上の道をゆくと、対面は釈迦岳(標高1060m)の美麗な紅葉が見えた。そこは、比良の紅葉名所の一つである。

まだ時間が早いため、これら好眺望が得られる場所場所では飲食休憩する人の姿が見られた。


比良山脈・ダケ道山上の紅黄葉
同じく北比良峠と麓を結ぶ「ダケ道」にて。まだ標高が900m超の場所だが、どうやら今比良では同700mからこの辺りまでが紅葉盛期のようである


比良山脈・ダケ道山上のイタヤカエデの紅葉
イタヤカエデらしき楓葉も鮮紅の鮮やかさ


比良山脈・ダケ道山上の冬枯れの痩せ尾根
しかし、吹き曝しの痩せ尾根では既に冬枯れ


11月なのに夏山同様の緑を見せる、比良山脈・ダケ道下部の谷道。
そして標高を下げると、この通り。あたかも、夏山同様の緑景であり、また、気温も高い

下山。靴のことより……

やがて、つづらの古道に乗って沢まで下り、元の正面谷に帰着した。今日の試験山行の終了である。時は14時半前、総計約4時間半の行動となった。

結果は、右足踵(かかと)に盛大な靴擦れが出来たが、懸念していた下山時の小指衝突は起こらなかった。

靴擦れは紐の結び等で何とかなりそうであり、また、靴が足に馴染むことで軽減される筈なので、一先ず成功・問題なしと言えた。

それより、とにかく暑かった。11月に入ったというのに、こんな暑い紅葉登山は初めてではないか。ちゃんと冬が来るのであろうか。靴のことより、そっちの方が心配になったのであった(笑)。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会