2024年03月10日

三月深雪

堅田辺りの列車車窓に現れた、山裾まで冠雪する比良山脈南部

意外の寒波再来

暖冬との予報通り今季の冬は観測史上2番目に暖かいとの発表が先頃気象庁からなされた。それは過去126年間の結果というので、相当なものである。

しかし、2月までは、そうした温暖の実感があったが、本来は寒さが緩む筈の3月に入ってから、結構な寒さを感じるようになった。

正確には年初から比較的温暖が続き、所々で鋭い寒さが現れるといった特異な傾向を繰り返していたが、ここにきて寒さの頻度が増したのである。

さて、前日土曜にまた低温日が現れ、ここ京都市街でも降雪が観測された。雪は積ることはなかったが、京盆地北縁の北山や叡山等には、確りした積雪の様がみられた。

冬季限定の近山雪山行も先週で最後かと思っていたが、意外にもまた機会が巡ってきた。これは是非行かねばならぬ。

とういことで、今朝また山に向かったが、昨夕まで吹雪いているのが見えた北山は麓の貴船辺りの積雪や凍結で近づくことが不能と思われたため、公共交通で随時接近可能な隣県滋賀の比良山脈に出掛けることにした。

写真は、滋賀西部・堅田(かただ)辺りの列車車窓に現れた比良山脈南部の姿。先週とは異なり、山裾まで確り雪があることが確認できた。

京都市街から直線僅か20km強。驚くべき冬山景の出現である。


比良駅からみた、雪を戴く比良山脈
薄暗い車窓外に現れた厳寒の連山に天候を案じるが、下車駅「比良」に到着すると、山脈上空に青空が見え始めた。今朝までは雪、その後は晴れ予報だったので、このまま回復しそうである


比良駅から見えた麓まで冠雪する堂満岳
比良駅で準備後、山へ向かい歩き始める。美しく、鋭い冠雪の様を見せる堂満岳(1057m)が、独り進む身を迎える。登山口まで遠いが致し方なし


比良山脈麓の別荘地奥の積雪
比良山脈麓の別荘地辺りから地面や屋根上に雪が現れる。標高はまだ高くないので、週末は麓でも結構降ったのであろう


積雪のある比良山脈イン谷口の駐車場
そして山の谷なかに入り、やがて登山口着。駐車場自体は冬タイヤ以外難しい状況だが、その手前までは普通の状態だったので少々誤算。しかし、こればかりは実見しないと判らず、何かあってからでは遅いので仕方なし


3月なので雪に塗れる、比良山脈・大山口分岐
登山口からは、すぐに雪道に。先週との違いに驚くばかり。標高約400mの大山口分岐付近もこの通りで、全くの冬山景であった。3月というのに、また1月厳冬期に戻ったような、少々信じ難い光景である


雪が覆う、比良山脈の難所・青ガレ
途中、早くもアイゼン(靴底氷雪爪)を装着し、谷なかの道を進み、やがて比良著名の難所「青ガレ」に至る。ここも先週とは異なり、確り雪が載って登りやすそうである


3月なのに雪が深い金糞峠下の谷道
雪量的にワカン(輪かんじき)が必要な程であったが、先行者の踏み跡が溝の様に続いていた為そこを辿る限りは必要なかった。下ってきた人の話では、ルート外のルンゼ(急斜溝)の中は新雪が深く、アイゼンやピッケル(斧頭雪杖)が効かず登攀を中止したという。恐るべき3月寒波である


金糞峠裏の雪原とそこに続くトレース
やがて越えた金糞峠(標高約880m)裏もこの通り。峠裏は先週も雪が多かったが、今日は一段と増していた。ただ、意外にも踏み跡が確りあり、ワカンを出す必要はなかった


比良山脈・コヤマノ岳近くのスノーモンスター
更に雪を求め先へと進む。先週同様、金糞峠裏を西北に進み、コヤマノ岳(標高1181m)を経て山脈主峰・武奈ヶ岳(同1214m)に向かうのである。途中、方々で多雪の証・スノーモンスター(樹雪塊)に遭遇。近山でのそれは実に久々であった


雪深い3月の比良・コヤマノ岳山頂
そしてコヤマノ岳山頂に至る。完全な雪山景。先週とは異なり今日はこの手前の急登を特段辛く感じなかった。やはり先週は風邪をひいていたのか


コヤマノ岳西からみた雪深い武奈ヶ岳山頂
コヤマノ岳を過ぎると、いよいよ武奈ヶ岳山頂のお出まし


コヤマノ岳北からみた、武奈ヶ岳山頂の大きな雪庇
目を凝らすと、武奈ヶ岳山頂には大きな雪庇が見られた。その高さは人の背丈程か。僅か一日二日でこんなに発達することに驚く。まあ、週末、かの山陰の雄「大山(だいせん。標高1729m)」で一気に90cm程積ったらしいので、有り得なくはないか。しかし行動中にそんなに降れば危険である


武奈ヶ岳山頂から見た、3月なのに雪景色を見せる釈迦岳等の比良山地に、麓に広がる青い琵琶湖や緑の沖島等
最後の登りを詰め、武奈ヶ岳山頂に到着。四方どこを見ても、山中は雪景色であった。そして、気温は-2、3度。雪山としては然程の寒さではないが、今日麓を覆ったらしき、春の温暖は感じられなかった


先行者が武奈ヶ岳山頂の雪庇下に掘った竪穴
遅めの昼食兼休息にしようとしたが、風があり寒いため、先行者が雪庇下に掘った竪穴を利用した。それは、深く掘られていたが、全く地面の気配がなかったので、山頂の雪深さが窺えた。恐らく1mはあるのではないか


武奈ヶ岳山頂の雪庇越しに見る雪被る丹波山地と彼方に覗く京都市街
雪上での昼食中、先程下から見上げた武奈ヶ岳山頂の雪庇を横から見る。実は画面左奥に今や春めく京都市街が見えている。20数kmしか離れていないので当たり前なのだが、改めてその差に驚く


トレースが全く無い金糞峠から堂満岳へと続く雪の稜線道
トレースが全く無い金糞峠から堂満岳へと続く雪の稜線道

延長戦(?)開始

昼食後、来た道を下り、また金糞峠に至る。後はここを下るだけだが、何か物足りない。雪は申し分なくあり、歩行距離や登坂標高的にも十分冬山山行は味わえた筈である。

しかし、終始先行者のトレース(踏み跡)を辿っていたため、雪でもがくこともなく、雪山に来た気がしなかったのである。また、先週と同じ道程も、何やら芸が無いように感じられた。

そういえば、金糞峠から脇の堂満岳(1057m)の頂を経る道に替えれば、もう少し雪を味わえるのではないか。峠を真っ直ぐ下るより遠回りとなるが、下山場所は少し比良駅に近くなり、然程無駄にはなるまい。

あと、往路出会った人が堂満岳に通じるルンゼの雪が深かったと話していたことも思い出した。

時計を見れば既に15時半。しかし、峠から堂満岳及びそれ以降も馴染みの道であり、山頂までの核心的登坂部も雪があろうが20分程しかかからない筈なので、十分明るい内に下れると判断し、その道に進んだ。

何十回も通った道なので何も考えずに進むが、すぐに違和感を感じた。いきなり道を間違えたか? 違う、乗っけからトレースがないのである。即ち、今回の雪が積もってから誰も通過していないのであった。

ここでまたルンゼの話を思い出す。堂満ルンゼは有雪期登攀訓練のメッカなので、その連中が山頂経由でここに下ってくることが多いが、今日は深雪のため誰も登頂出来なかったのではないか。

そうなると、これから先が思いやられるが、ワカンを持参しているので、一先ず山頂まで行くことにした。


トレースの無い金糞峠から堂満岳へと続く新雪の稜線ルートをツボ足でラッセルする
まさかの、3月の深い新雪に、自らの足跡のみ記して進む

金糞峠を出ていきなり雪に深く足を取られつつ進む。気温が然程上がらなかった所為か、今日の晴天では融けず、新雪のままの厄介な道が続く。

先程までのトレース路と比べると、舗装路からいきなり泥濘になったような気分である。半ば望んだ状況ながら、あまりの極端さに呆れる。


新雪深い尾根道の樹間から見えた堂満岳山頂方面

情報得て前途青信号に

深い新雪に、いきなりラッセル(開路進行)を強いられ、忽ち疲労する。これぞ、望んだ雪山行動ではあった。しかし、樹間から見えた山頂方面(画像左奥)はまだまだ遠く、そして高い。

そろそろワカンを出した方がいいか、と思いかけた時、前の灌木の間から突如人が現れた。挨拶を交わすと、何処まで行くのかを訪ねられ、時間が遅いのでは、と心配される。

私は、堂満山頂からそのまま駅に下ることやワカンがあることなどを説明し、懸念を払拭した。彼は私の逆コースを辿ってきたようで、山頂から向こうには確りとしたトレースがあることを教えてくれた。

有難い情報である。これで安心して進める。実は、この先ずっとトレースがないと、たとえワカンを履いても時間的に厳しく、引き返すことも考えていたのである。


金糞峠・堂満岳間の雪道途中に見えた琵琶湖や伊吹山等
金糞峠・堂満岳間の雪道途上に見えた琵琶湖や伊吹山(左奥。標高1377m)


堂満岳山頂からみた積雪越しの琵琶湖等々
堂満岳山頂からみた積雪越しの琵琶湖等々

懸念実感の雪塗れ(苦笑)

そして堂満岳山頂着。簡単に記したが、実は結構大変であった。

途中ルンゼからの踏み跡が一つ増えたが、幾度も現れる急登部分に難儀し、一部には手足全てを使っても登り難い箇所があった為である。

時間も倍以上かかり、正に雪塗れになった。写真の一部にボケた部分があるのは、ケースで保護したカメラさえ雪塗れになった為である。

望んだこととはいえ、やはりその極端に呆れるというか、独り苦笑さえ生じた。先程の彼の懸念は、実にこのことだったと、ここに来て実感した。

これぞ、侮れぬ雪山の奥深さかつ危うさ。良い経験・鍛錬となった。


深い雪上にトレースが続く、堂満岳山頂直下の急斜面
堂満岳山頂で水分補給してすぐに下る。先程の彼の教示通り、そこからは確りしたトレースがあり、この様な乗っけの急下降も難なくこなせた。ワカンは山頂までの辛抱と思い結局装着しなかったが、折角なので使っておけばよかったと少々後悔。今年は使用頻度が少なかったからである


標高を下げても雪深い堂満岳東稜の道
堂満岳山頂直下の急斜面を下りにくだるも、雪は減じず。陽当たりの良い東面のこの区間は雪が融けやすい筈だが、今日は、さにあらず


標高を下げても湿雪多い堂満岳東稜の道
更に下るもこの通り。ただ、少し湿雪気味と化してきた


堂満岳下の山中湿地・ノタノホリ
標高約440mの山中湿地「ノタノホリ」近くまで下ると、漸く雪が減り始めた。そこからの比較的急な下降路途中でアイゼンを外す


地面に雪残る、堂満岳登山口の別荘地の夕景
そして、車道との接点である麓の別荘地に下りきった。時間は17時半過ぎ。暗くなるまでに、あと1時間程あったが、途中の難儀を思うと、色々と考えさせられた。勿論、電灯をはじめ、様々な備えは準備している


遠くに比良駅が見える堂満岳麓の夕景
麓に下っても、今日の山旅は終らない。比良山脈麓から最寄りの比良駅まで歩き下らなければならないからである。やがて山裾を抜けるも、琵琶湖岸にあるその駅はまだ遠い(左奥)


比良駅近くの田圃中から見た、夕景の比良連峰
比良駅近くの田圃中から振り返って見た比良の山々。中央左奥が1時間半程前に通過した堂満岳山頂である。この後、30分程して暗くなった

北陸以上の欲張り山行に

比良山脈麓に広がる田圃をひたに歩いてやがて比良駅に到着。しかし、列車が行ったばかりで、次便を30分近く待つこととなった。不便だが、今日は公共交通利用なので致し方あるまい。

そして、列車に乗り、無事、京都市街に帰還したのであった。

結局今日は、歩行8時間強、移動距離16km、積算登坂1500m弱になるなど、北陸の規模ある山行以上の行程となった。少々欲張って行動し過ぎたきらいもあるが、まあ今季最後の雪山行と思われるので、良しとした。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会