
入梅前に九州遊覧へ
昨夜、遅くまで宴席があったが、少し早めに起きて諸々を準備。
そして、バスや電車を乗り継いでゆく、関西空港への路程へ。今日から数日間、九州へ行くこととなった。
とはいえ、急に決まった訳でなく、以前より定めていたこと。前々から、宮崎の本家の従兄弟より阿蘇・高千穂観光に誘われていた為の遊覧行であった。
この時期になったのは、山岳行の寒さと梅雨入りを避けた為。先方との調整もあって、九州の入梅ギリギリである、今週末となった。
さて、関西空港からは勿論飛行機。陸路なら遥かな旅程も、僅か半時(はんとき。凡そ1時間)余り。まあ、飛行場前後の行程に結構時間をとられるのではあるが……。
飛行機の着地は、宮崎ではなく同県北隣の大分は別府。今まで通り過ぎるだけだったので、一度行きたいと思い、前泊して訪れることにしたのである。
今日1日別府を遊覧し、宮崎の本家へは明朝向かう手筈であった。
上掲写真: 別府署の建屋越しに聳える、別府の象徴・ランドマーク的山岳「鶴見岳」(1375m)。恥ずかしながら、以前はこの山を観光写真等で目にする由布岳かと思っていた(笑)。しかし、当らずも遠からじ。草色優しいこの山も同じく火山であり、しかも雲仙や霧島に同じく、気象庁が常時監視する危険な活火山であった。奇しくも、今日、口永良部島の噴火が伝えられたので、少々心配に……。

関西空港内、離陸前の機上にて。空には生憎の厚い雲が……
やはり梅雨入りが近いのか、折角日を選んだが、空は生憎の曇天。予報では、降雨はないとのことだったが、滞在中である明後日、つまり日曜は雨予報であった。昨日までは好天が続いていたのに……。
残念だが、こればかりは仕方あるまいか。降るのは1日だけなので、まだ幸運としよう。

機は離陸して瀬戸内の山陽道沿岸を飛行。岡山児島湾辺りを過ぎると、北方に雪を残した山岳が現れた。山陰の雄峰「大山」(だいせん。中央奥。1729m)であった。その右肩のピークは、同山系の「矢筈ヶ山」(やはずがせん。1358m)

続いて現れたのは、天然の良港であり、海軍要地で知られた呉(手前側港湾部)。対岸は江田島、その向こうには広島市街が広がる。三方に出口を持ちながら、全て本土や島に接する狭い水道に護られるという、堅固な要塞立地が窺える

広島西部の厳島を過ぎ、やがて祝島が現れた(発動機下。上の小島は小祝島)。小さな離島だが、最短で九州・国東へ渡ることも出来る、古来よりの瀬戸内交通の要衝。現代の飛行機が奇しくも古来海上のルートを辿ることに少々感心

祝島から、古来の航路と同じく、一気に国東半島に接近。手前は国東東部の要地「富来」(とみく)、奥は半島中央部で最高所である「両子山」(ふたごさん。720m)。このあと、間もなくして大分空港に着地

別府遊山
国東半島沿岸に造られた空港から、すぐにバスで別府に移動し、遊山開始。温泉街でもある駅裏辺りを散策し、名物の別府冷麺を食したりした。
冷麺は蕎麦を使った麺で有名だが、生地を細く押し出して成す製法は、朝鮮の「ミョン」式かと思われた。実際、本場と同じくキムチが入る。在留外人か、半島からの引揚者が広めたのであろうか。
宿は別府駅前の温泉宿であったが、郊外の温泉街「鉄輪」(かんなわ)辺りも見ることに。市街バスに乗り、着いたのが、写真の鉄輪名物「地獄」。
特異な源泉地を指す、地獄は幾つかあるが、その内の青色をした「海地獄」であった。名だたる観光地で人が多い為、当初は行くつもりはなかったが、近くまで来たので少々観覧を。
年中枯れることなく熱湯を産する、その計り知れない力に感心。

鉄輪の共同浴場。本来は地元向けのようだが、100円程の小銭を払えば誰でも入れるところが多い
鉄輪の街は、意外に高層の建屋も少なく、昔ながらの風情も残り、好ましく感じられた。さすがは屈指の温泉地、街なか至る所に浴場があった。
折角なので、幾つか入ってもよかったのであるが、真夏の様な気温と陽射しに断念し、見学に徹することに。

鉄輪の宿泊施設前にあった竃様の設備。使われていないにも拘らず、盛んに水蒸気が上がっている。泉源を利用した調理設備であろうか。

鉄輪の路上にあった、温泉印入りの溝蓋。源泉からの供給配管が収められているのであろうか

壁際、道際などでは、こんな様子も多く見られた。
街なかに、お湯の滴る別府かな――。

ちょっとした公園というか空き地には、こんな噴気孔も。周囲は結構、住居密集地なのであるが。高温が危険な為、柵で囲われている。
冬でも燃料要らずのようで羨ましい反面、恐ろしい気も……。

南国の為か、紫陽花の成長も一足早く感じられた

別府駅前裏町にあった古い家屋。元は民宿か何かであろうか
再び別府駅前
少々気になったこと
鉄輪を巡り、またバスで別府駅前に戻る。時は既に夕方、入浴や食事の前に、今暫く街を巡ることにした。
駅周辺も古くからの温泉街ではあるが、街並みに統一感というか特徴がなく、あまり魅力を感じられない。特に裏町は再開発の立ち退きの所為か、方々で空き地が目立ち、どこか破壊的な印象を受けた。
古いものを残せばいいというだけでは、ダメであろうが、もう少し遣りようはなかったのであろうか。この辺りは、どこか我が京都に似ているように感じられた。
有名社寺や名勝等の「点と線」頼みで、面としての街づくりに疎い様が、である。別府で言うなら、温泉頼みということであろうか。恵まれた資源を持つもの同士が陥る、危機を感じずにはいられない。
温泉も魅力だが、わざわざ訪れる人達は、それのみを求めている訳ではあるまい。観光地としての価値の本質を見極め、面として、総合的に街を盛り上げていくことが肝要ではなかろうか。

折角なので海辺の夕景も味わうことに。別府タワーを擁する別府中心地(駅前下)や猿で有名な高崎山(628m)が見える。由布・鶴見岳と似た高崎山の極端な山容を思い調べれば、やはりこれも火山であった。但し当座の危険はなさそうである
海を見て駅前の宿に帰る。小規模ながらも源泉を有する、歴とした温泉宿である。
下階の温泉に入り、近くで食事などして別府での日を終える。本来は名物の鳥料理などを食そうかとも思っていたが、従兄弟が明日彼の地のものを食べに連れて行ってくれる、ということで控えた。