
2度の中止経て武奈ヶ岳へ
今年の秋の山会は、隣県滋賀西部の比良山塊へ。
去年、その前と、雨で中止になった比良の最高峰「武奈ヶ岳(1214m)」への登頂を目指す。以前企てたのは山塊北部の集落から長い北稜を経て向かうものだったが、今回は渓谷沿いの短縮した行路であった。
短縮した分、傾斜度も強くなるが、まあ致し方あるまい。それより、自身が未だ未踏の名滝群「八ツ淵の滝」を通過出来ることが楽しみであった。
11月最初の週末。今日辺りから気候は一段と冷える、とのことだったが、どうなることやら……。
上掲写真: 武奈ヶ岳直下の北稜上にある細川越(標高約1000m)から見た比良奥地の紅葉。夏の暑さの所為か、色づく前に散った葉も多いかと思われた。

バスの下車地で、比良山脈北部の入山口の一つ、ガリバー青少年旅行村(滋賀県高島市)
レクリエーション施設抜けて登山口へ
朝は列車にて湖西入り。近江高島からはバスで渓谷の入口となる山麓に移動して、体操等の準備後、登山開始。

「死亡事故多発」の警告が記された、八ツ淵の滝案内図
レクリエーション施設・ガリバー村を抜けて登山口に至る。案内表示はあるも、施設の周遊ルートと混在し、また脇道が多く、意外と判じ難い。地形図では縮尺的に粗いが、一応ここまで掲載されたものを持参した方がスムースかと思われた。
因みに、ガリバーの入場施設に係員がいたが、以前知人が払わされたという1人400円の通行料(入村料)なるものは求められなかった。
時期の所為か、はたまた駐車料金のみの請求に変更されたのか。

危険な滝道を避けて谷上を巻きつつ続く登山道
今回は、健脚行路ながら初心者が参加しており、危険とされる滝道は避け、一般道を進むこととした。
結果、滝の大半は見られなくなるが、車道にも近く、それのみの見学も容易な為、またの楽しみとすることにしたのであった。

登坂の途中現れた崩落地。ここ数年の豪雨によるものか

大擂鉢から名滝地帯をあとに
暫くすると、道は平坦となり、下部で並流していた沢と同じ高さとなった。渡渉点である。

岩に鎖が渡される大擂鉢(左上隅の淵)下の渡渉場
渡渉点は、多くの岩が沢に干渉する場所で、一角にはそれらにより小滝と深い淵が形成されていた。八ツ淵の滝の1つ、「大擂鉢(おおすりばち)」である。
特段危険という訳ではないが、岩が大きく、水量もある為、既設の鎖等を頼りつつ、慎重に渡渉した。

大擂鉢横の支流谷。静かな奥山風情に清冽な水が流れ下る良き場所であった
大擂鉢を渡渉せず、上の小擂鉢等を越えて沢を遡上するルートもあったが、これも初心者向けでない為、断念。
渡渉後は、存在感ある小滝も見れた風情ある支流谷を遡上し、その後、谷上の巻き道に出た。

標高700mを超えた辺りから現れ始めたブナの林
進むにつれ標高が上がり、何時しか谷の巻き道はブナの天然林に入った。その黄葉と、秋の梢の軽さが行路を明るく、暖かくした。
今朝は前日等より気温が下がるとの予報が出ていたが、幸い温暖であった。天候も快晴で雲一つなく、絶好の山日和となった。

山中に現れた巨大な台杉
やがて、小さく浅い水無谷の奥に巨大な台杉が現れた。幹回り数mか、近くには同様で相生の姿を見せる2本もあり、さながら聖地めいた雰囲気も感じられた。
付近を旧志賀郡と高島郡の境界が通る為、境界木の役割があったのか。また、水源か何かを祀る祠でもあった場所なであろうか。

静かで温和な広谷
魅力的な広谷から北稜の急斜を詰め山頂へ
そして緩い尾根を越え、浅く広い谷に下降。
広谷である。それは、名の通り、武奈ヶ岳と釣瓶岳(1098m)に挟まれた高地上に、高層湿地に近い緩傾斜で存在する。
ここで進路協議。
沢を渡った尾根向こうに「イブルキのコバ」という古道分岐があり、そこを通る主路を採れば武奈ヶ岳へ早く着くが、広谷遡上の道は未踏で興味を感じたからである。
相談の結果は、皆一致で広谷ルートに。天然林と清冽な沢が続く、静かで温和な広谷が、誰の目にも魅力的だった為である。

期待通りの、広谷の牧歌的な道をゆく。沢も水量が豊富で魚影も濃い、素晴らしいものであった。
そして1km以上に及ぶ緩やかな遡上の果てに、武奈ヶ岳北稜に繋がる山脈主稜線に出た。細川越と呼ばれる地点で、ここからは目標の山頂まで高低差約200m、距離にして約800mの登りが待ち構えていた。
写真は、北稜上から見えた比良最高峰の姿。近いようでまだ遠く、そして高い。

北稜上では、先ほど通過した広谷(画像中程緑樹の帯辺り)や、その奥の釣瓶岳(同中央の頂)が見えた
地図上では今まで経た傾斜と変わらぬ筈であるが、何故かキツく感じられた。疲労が溜まってきたのか。
しかし、そんな中でも辺りを見回すと、晴天に映える素晴らしい紅葉が広がっていた。標高1000mを超えるこの地帯の紅葉は今が盛りではないか。

武奈ヶ岳山頂から北東方面を見る。雲の線上から頭を出すのは滋賀最高峰の伊吹山(1377m)か
武奈ヶ岳山頂から八雲ヶ原へ
そして13時前に山頂着。広谷への遠回りや多めの休憩をとったため3時間以上かかったが、まあ仕方あるまい。

武奈ヶ岳山上から見る比良の紅葉。中央の頂は比良山脈第2位のコヤマノ岳(1181m)
後続も順次到着して昼食に。時期と天候の所為か、山頂には多くの登山者がおり、同じく昼食等に興じ、賑わっていた。

秋色を纏う高層湿地・八雲ヶ原
沢水を沸かして暖かい飲み物も味わった休息後、一行は下山の行程へ。進路を東へ採り、湖西方面を目指す。
写真は、その途上通過した八雲ヶ原。標高約915mの八雲ヶ原は、氷期より続く高層湿地で、希少植物の自生地として国定公園に於ける特別保護区域に指定されている。
その池中にある板橋を通過したのであるが、以前来た時より傷んでおり、危険な状態であった。貴重な湿地観察の場、交通路なので、何とか補修してもらえないのであろうか。

北比良峠、ロープウェイ山上駅跡広場から琵琶湖方面の眺め
北比良峠で休み最後の下降へ
八雲ヶ原からは風化花崗岩の砂礫が続く、歩き難い坂道を上がって山脈南主稜線に出た。
北比良峠とも呼ばれる場所で、以前ロープウェイの山上駅があった場所である。湖西側眺めが良く、広場のような休憩適地の為、最後の下りに備えて少々休息。

麓の「大山口」まで続く通称「ダケ道」の痩せ尾根道。まだ麓には遠い高地上である
さて、北比良峠は武奈ヶ岳から随分下った場所のように思われるが、実はまだ標高970mもあった。
ここから麓の林道までは標高差約600mを下降、駅までなら同900m近くも下らなければならない。初心者には辛い急斜が続くが、ここは最後のひと踏ん張り。

林道との出合い地点、登山路の終点である「大山口」の木橋
無事日没までに下山
山の料理店で打上げ
途中、幾度か休憩をとりつつ、延々と続くつづらの下りを進む。近年整備されたらしく、以前程荒れた場所、危険な場所はなかった。
そして、麓の沢と、そこに沿う林道に出ることが出来た。少々休憩後、林道を下り、更に麓の出合いで旧リフト乗場があった「イン谷口」に到着。
残念ながら、そこから駅へ向かう登山バスは30分前に終了していたが、広谷ルートを選んだ時に覚悟していたので、気にせず。
それより、暗くなる前に無事山道を抜けられて良かった。

駅までの麓歩きの途上、湖西道路傍から見えた叡山方面の夕焼け。中央左端の水面は琵琶湖
駅までの道程で暗くなり、道や方角が判じ難い別荘地の林を進んだが、大きな間違いもなく、40分程の歩行で比良駅に着くことが出来た。
そして、タイミング良く列車が現れ、京都市街へ帰着。そのあとは銭湯で疲れを落とし、近くの信州料理屋(山小屋風で渓流魚の丸焼き等あり!)にて打上げを行ったのである。
皆さん、お疲れ様でした、色々有難う!