
置き床補修
今日は久々の木工紹介。
とはいえ、作業が完了したのは先月のことであった。仕上げに施した植物油の乾き等に時間がかかったため、完成の日が定められず、そのままとなっていたのを、漸く今日紹介することとなったのである。
行ったのは、客間の「釣り床」下の畳上に置いていた「置き床」名目の杉板修理。友人から頂戴した分厚い良材であったが、残念なことに穴を伴う「死に節」が幾つかあった。これを埋めることと、水染みの恐れがあった白木表面に乾性油がけをすることを目的としたのである。
上掲写真: 立てかけた置き床材。凡そ90cm×40cmの大きさで厚みは6cmある、店舗カウンターの端材である。下方中央に見える色の濃い場所が「死に節」箇所。裏面まで続き、更にもう一箇所あった。

刻苧漆と桐油にて
節埋めには、伝統的な天然素材「刻苧漆(こくそうるし)」を使用。
本漆に小麦粉と水を合わせたもので、単純ながら伝統接合材のなかでは最強の接着力と強度をもつものとされる。ただ、調合を失敗すると全く役に立たなくなる恐れもあった。
そのため、以前は敢えて避けていた工法であったが、近年ネット上で詳細な調合法が紹介されるようになり、その会得に成功したため、多用することとなった。実に有難い限り。
写真は刻苧により埋められた「死に節」。輪状の複雑な形状であったが、完全に埋めることが叶った。手順としては、紙テープで周囲をマスキングしてから刻苧を埋め込み、ラップで均して乾燥後に削り平滑化する。

表面と同様に埋められた、裏面に続く「死に節」
「死に節」補修後、全体的に乾性油の「桐油」を塗布して水染み対策(防水)とする。
乾燥後に再度塗る、2度塗り仕上げである。しかし、最初に記したとおり、当初は気温が低かったため、乾きが悪く、時間がかかってしまった。これもまあ、教訓である。
また、色変化が最も少ないとされる桐油だが、やはり濃いめの仕上がりとなり、好んでいた白木の風情は失われた。これもまあ、仕方あるまい。
とまれ、全てが完了したのが、初めの画像の姿。色のことはあったが、やはり「死に節」も埋まり、外見的には良い具合に落ち着いたのであった。