2017年09月18日

先駆大観

写真家ロバート・フランクの「ブックス アンド フィルムス、1947-2017 神戸展(Robert Frank, Books and Films, 1947-2017 in Kobe))」が開かれていた、神戸三宮の「デザイン・クリエイティブセンター神戸(「KIITO」)」の建屋外観

台風一過。大原から神戸へ大返し

今朝は台風一過の秋晴れ風情。折角なので、郊外の大原辺りまで昼食兼ねて出かけることにした。

昨日、避難勧告が出されたとは思えない秋の長閑をみせる大原にて地元食材の料理等を食べ、寛ぐ。このあと更に奥地の山村などを巡ろうかとも思ったが、さすがに道路事情の危うさを想い断念した。

さて、どうするか、と思っていたら、突如行きたかった写真展のことを思い出す。スイス出身アメリカ人写真家のロバート・フランクの稀少な回顧展なのだが、神戸三宮での開催と、かなり遠い。

しかし会期は22日(金曜)までだったので、今日しか都合がつかない。折角、山辺風情に浸っていたのに、人で溢れる阪神地区に向かうことも疎ましく、少々悩んでしまった。

元来あまり写真界に詳しくないので、友人の写真家K君に電話して訊ねると、是非行くべきだと言う。前もって調整していれば今日一緒に行けたのに、との言も(何故かカタログは持っているらしいが未参観らしい)。

残念、すっかり忘れていた。しかし後悔するのは嫌なので、助言を採ってこれから向うことにした。こうして、急遽大原とは性質も方角も正反対の神戸へ大返しすることとなった。


上掲写真: ロバート・フランク展が開かれていた神戸三宮の「デザイン・クリエイティブセンター神戸」の建屋外観。「KIITO(生糸)」の名も持つここは、昭和初期に開かれた元生糸検査所跡という。


写真家ロバート・フランクの「ブックス アンド フィルムス、1947-2017 神戸展(Robert Frank, Books and Films, 1947-2017 in Kobe)」の会場
ロバート・フランク:ブックス アンド フィルムス 1947-2017 神戸展会場

予想外の本格展示

大原から京都市街に戻り、そして列車を乗り継ぎ三宮に着く。駅からは15分程の距離であったが、なんとか16時過ぎに会場入りすることが出来た。

会場に対する知識はなかったが、意外な大きさに驚く。無料と聞いていたので、もっと小さな会場で行われているのかと思っていたのである。中に入ると更に驚いた。写真の如く、体育館か、それ以上の大広間一面での展示が行われていたからである。

美術・博物館クラスで行われる、本格展示同等の規模である。しかし、それには特異な状況が含まれていた。


新聞用ロール紙に印刷され会場に吊るされる、ロバート・フランクの「ブックス アンド フィルムス、1947-2017 神戸展(Robert Frank, Books and Films, 1947-2017 in Kobe)」の写真作品及び解説

それは、写真の如く、作品を長く吊る展示法にあった。実は、これは新聞用のロール紙で作られたものであり、作品も解説共々そこに印刷されていたのである。

画質優先の写真展示に於て、これは特異なこと。しかも、歴史的大家とされる人の、世界的回顧展に於てである。解説によると、大家故に高額となった展覧会経費や開催困難を克服する為に考え出された方法だという。

初めから保存価値のない新聞紙で作品を複製し、展示が終れば破棄するというものらしい。これにより、大家ロバート・フランクの70年に及ぶ表現活動の大回顧展が実現したのであった。

なかなか面白い企画である。ストリート・フォトグラフィの先駆とされる当の老大家も大層気に入っているらしい。


ロバート・フランクの「ブックス アンド フィルムス、1947-2017 神戸展(Robert Frank, Books and Films, 1947-2017 in Kobe)」の各部冒頭を飾る、茶色のロール紙による解説
「ブックス アンド フィルムス展」にて各部冒頭を飾る茶色紙

展示は年代や作品集毎に区分されており、それぞれの冒頭には解説付きの章題的なものが茶色いロール紙を使い付けられていた。


ロバート・フランクの「ブックス アンド フィルムス、1947-2017 神戸展(Robert Frank, Books and Films, 1947-2017 in Kobe)」の会場中程に設けられた、宙に写真集等が浮く糸吊り閲覧展示
会場中程には宙に浮く本たちが。これまで発表された写真集等を、手に取って鑑賞出来るようにした、糸吊りの展示

得る物多いユニークな催し

いやぁ、聞きしに勝る見応えある展示であった。遠路無理して来た甲斐があった。映像作品の上映や関連イベントもあったので、もっと早い時期に来るか、何度か来ればよかった。少々後悔……。

作品からは、何か、写真や美術、そしてアメリカや現代社会そのものに至るまでの、脆さやいかがわしさ、しかし、本来的な逞しさの様なものを感じることが出来た。

展覧会としては、写真本来の役割である「複製」に深く根差した企画かと思われた。世界50カ国の非営利会場を巡回し、それぞれの版がまた終了後直ちに廃棄されるという形態にも深い意図を感じる。目で見てもらう展示を超えた、非常にユニークな催しではなかろうか。

移動時間の方が多くなったが得る物は多かった。しかも、これだけの規模で無料。主催の老大家や関係者、そして参観を促してくれたK君に感謝!


建物も貴重で面白い、ロバート・フランク「ブックス アンド フィルムス、1947-2017 神戸展(Robert Frank, Books and Films, 1947-2017 in Kobe)」が開かれたKIITOの玄関
KIITOの玄関。建物も貴重で面白い。良い役割、余生を与えられて何より。唯一の不満は会場がかなり暑かったことか


ロバート・フランク「ブックス アンド フィルムス、1947-2017 神戸展(Robert Frank, Books and Films, 1947-2017 in Kobe)」で販売されていた、茶封筒入りの特製新聞風カタログ
会場で販売されていたカタログとその中身

抜かりないカタログも微笑まし

帰り際にカタログを購入したが、それも実に心憎いものであった。

それは茶封筒に入れられた特製新聞であった。記事の内容は勿論、本展と作家ロバート・フランクについて。

日本巡回用、しかも神戸展限定仕様で、日本語による作家インタビュー等の記事も読み応えのあるものであった。しかも僅か500円!

ここにも、特異な本展の潔さや気安さ、そして微笑ましさの如きが感じられた。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 催事(友人其他)
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