2019年06月09日

霧雨鈴鹿行

三重側から鞍掛峠へと続く、巻き道の鈴鹿山脈・御池岳登山道

入梅前に間に合うも……

今日は入梅前の山会。本来なら梅雨入り後となる可能性もある日であったが、幸い月初の雨が続かず、何とかその名目が保たれた。

しかし、今日は朝からの曇り。しかも、現地他、近畿では午後から雨予報もあった。だが、その分気温上昇が抑えられ、大きな崩れにもなりそうもなかったので、一先ず決行することとした。

元々、この時期は山に限らず天候が読み難いので、雨具や着替えの完備を参加者に事前連絡し、自身も抜かりない状態で臨んだのである。

唯一、気掛かりなのは、この山域に多いという山蛭(ヤマビル)だけか……。まあ、これも一応対策は考えていた。


上掲写真 滋賀・三重両県を隔てる、鈴鹿山脈主稜線を潜る「鞍掛(くらかけ)トンネル」の三重口から続く鞍掛峠への登山道。鞍掛峠は近世以前から近江・伊勢を結ぶ参詣路上にあったとされるが、比較的路面が狭いここが古道かどうかは不明。


鈴鹿山脈の鞍掛峠付近より見た三重県員弁(いなべ)部分の伊勢平野
鞍掛峠付近より見た三重県員弁(いなべ)部分の伊勢平野方面

三重口より古格なき峠道へ

今日は友人の車輌支援を受け、滋賀側から鈴鹿山中に入り、三重側に出た。既に他の登山者の車輌が並ぶトンネル出口の余地に駐車し、ここから準備して登山道に入る。

乗っけから植林地の急斜をつづらで登る道となり、慣れぬ人を苦しめたが、無理ないペースで進みやがて前掲の巻き道を経て鞍掛峠に到着した。

然程古くはない峠の地蔵堂前に先客の家族がおり、蛭の除去を行っている。事前の情報では確認出来なかったが、5月の高温の所為か、かの「難儀者」は既に活躍を始めていたのであった。

人が払ったものを貰ってはいけないので、峠から少し離れた場所で小休止。峠の画像がないのは、その為である(笑)。まあ、撮るほどの古格を備えた場所でもなかったが……。


鈴鹿山脈の鞍掛峠手前の稜線道
鞍掛峠手前の稜線道。峠の十字路と地蔵堂は道先の木立の中にある


鈴鹿山脈の鞍掛峠・鈴北岳間の尾根道の下部から吹き上げてくる霧

霧の広尾根をゆく

峠を後にして登坂の尾根道を進む。頂部の凹凸を避けた効率の良い巻き道もあり、その途中には数基の炭焼窯遺構も確認出来た。しかし、道は狭く、荷車に対応した一般的な古道とは異なるものに見られた。

途中霧が多くなり、写真の如く森の下部から吹き上げてくる様が観察された。天気の推移が早いのか、空の明るさも徐々に下がりゆく観があった。


鈴鹿山脈の鞍掛峠と鈴北岳間の広くなだらかな高原状尾根

尾根に沿い高度を上げると、写真の如く、木が少なく、広くなだらかな高原状の場所に。所謂、広尾根である。残念ながら霧で眺望はないが、蛭の危険性が減る明るい高燥地のため、幾分朗らかな気分となった。

しかし、こんな場所にもかかわらず杉苔が密生していることが気になった。その色も姿も大変美麗であったが、皆で首を傾げることに……。他にも、羊歯等の湿生植物が多く、晴天率の低さ等を考えさせられた。

そういば、ここは琵琶湖と太平洋両方の気流がぶつかる場所であった。果たして、それが関係しているのであろうか。そして、古来著名な蛭の多さも……。


霧深い、鈴鹿山脈・鈴北岳直下の登坂
光度は益々下がり、霧が深くなった。見上げる登坂もこの通り。身体中、持ち物中に水滴が付く


鈴鹿山脈の御池岳山塊・鈴北岳直下の石灰窪地「ドリーネ」

石灰台地・御池山塊着

そして登坂上部の急登を越え、広くなだらか頂に着いた。「鈴北岳」の標識あるここは、本日の目的地「御池岳(おいけだけ。1247m)」の広義的北辺に当たり、標高1182mの地点であった。御池岳は幅約半km、全長約3kmの舟形の台地状をしており、狭義的な山頂はその中央最高所にある。

写真は、鈴北岳の標識直下に現れた、本日初遭遇の石灰地形「ドリーネ」。石灰地盤の融解により生じた窪地で、これに水が溜まった池が点在することから「御池岳」の名も付けられたとみられる。

風が強く、霧も雨と化してきたので、雨具を着用。ただ、まだ撤収は意識しない程度の荒れ具合。


鈴鹿山脈・御池岳山塊山上の石灰岩

台地状とはいえ、山上には起伏があり、巨大な船上にいるような感覚はない。ただ、頻繁に現れる窪地や写真の如き石灰岩の露出が、御池山上に居ることを実感させる。

規模は比較にならないが、昔訪ねた日本最大のカルスト地形「秋吉台」を想い起こさせた。


ドリーネが繋がって形成された、鈴鹿山脈・御池岳のウバーレ
こちらはドリーネが繋がって形成された窪地「ウバーレ」か


滝組みの様な岩がある、鈴鹿山脈・御池岳のウバーレ
滝組みの様な岩を持つウバーレ。付近に「日本庭園」と呼ばれる場所があるらしいが、正にこれらの姿により名づけられたのか


雨で濁る鈴鹿山脈・御池岳の真ノ池

雨降る台地上に続く浅い谷道を進むと、本日の目当ての一つ、山上池が現れた。写真のそれは「真ノ池」と呼ばれるものらしく、大きくはないが、モリアオガエルらしき蛙やその卵塊・蛇等の、動物の営みが観察出来た。


鈴鹿山脈・御池岳山頂直下の植生豊な「雨の森」

雨の森経て山頂へ

真ノ池を越えた辺りから雨粒が大きくなり、手や下半身に雨具を足して完全防備となる。気温も、12、3度と低いので水濡れは禁物となった。

写真は谷道を外れ、いよいよ御池岳山頂へと向かう登坂途中の森。正に「雨の森」状態。湿度は高いが、気温が低いため比較的快適であった。

標高1200m前後の高所ながら、意外と植生が豊かなことに感心する。来る前まで、疎らな灌木くらいしかない、貧しい高原を想像していた。


雨の森なかの登坂の果てに見えた、鈴鹿山脈・御池岳の山頂標柱

時折顔を打つ大粒の雨を手でぬぐいつつ森の登坂を進むと、やがて写真の如く標柱が見えてきた。鈴鹿山脈最高所の御池岳山頂である。しかし、ここも、あくまでも、なだらかであった。

御池岳山頂は舟形台地の中央に緩く聳えるため艦橋状の場所で、眺望に優れるという。ただ、残念ながら今日は荒天の為その褒美は無し。

そういえば、カメラのレンズに雨が当たり、写真にその影が現れている。非防水なので、これ以上降らないことを願いつつ山頂での休息に入った。


鈴鹿山脈最高峰・御池岳山頂で頂いたソーセージとアスパラの炒め物やおにぎり
御池岳山頂でのひと時。Nさんがソーセージのアスパラ炒めを大量提供。また、食後のホット珈琲等も。気温が低く、雨にも当たったので有難い限り。それらの気遣いが空に通じたか、雨も一時弱まってくれたのであった


鈴鹿山脈・御池岳の断崖から突き出た天狗の鼻

台地南部の急崖

山頂での食事休憩後は、台地南部の見学へと向かった。艦橋的な、なだらかな山頂を少し下ると、「天狗の鼻」と呼ばれる写真の岩場が現れた。

雨霧で周辺状況が解らないが、台地端の急崖から突き出ており、近づくと危険な場所。本来なら琵琶湖や遠近の山々等が見渡せる絶景箇所らしいが、生憎の天候により叶わず。


鈴鹿山地・御池山塊の台地南西端と、その際に続く道
御池山塊の台地端と、その際に続く道(左端)


鈴鹿山脈・御池岳南部の崖際から「天狗の鼻」とその下の断崖を見る
少々緊張する崖際の道を進み「天狗の鼻」を振り返る。雨霧のなか、急崖から突き出ていることが良く解り、更に緊張する。雨風も強くなったきた


鈴鹿山脈・御池岳ボタンブチの遭難者慰霊用ケルン

「天狗の鼻」の次には「ボタンブチ」と呼ばれる断崖と絶景場が現れた。ここには岩の突き出しはないが、写真の如く遭難者慰霊のための石積み「ケルン」があった。

遭難のことは後で知る。当時の状況は解らないが、この下は高さ数百mの急崖となっているので、痛ましい事故が想像された。

因みに、ボタンブチの名は、ここが「猟で猪を追い込むフチ(縁)」であったことに由来するらしい。


鈴鹿山脈・御池岳の石灰岩中の化石

本来は台地南端の「奥の平」と呼ばれる場所も探索したかったが、少々危険を感じる風雨となり、また、これまで以上の見ものにも乏しく想われたため、撤収することとした。

崖際から尾根へと進路を変え、その後北上して山頂に戻り、来た道を辿った。

写真は鈴北岳手前の石灰岩中に発見した化石。左の白く円い物と、右の筋のある小判形の物である。当初巻貝や三葉虫の様な動物を想像したが、観察の結果違う物と断じた。サンゴの一種であろうか。


滋賀県多賀辺りから見た、鈴鹿山地奥に霞む鞍掛峠南・御池岳北横の主稜線

下山そして帰宅
危険な同伴者あり!?


そして、雨により状態が悪化した急斜の道を慎重に下り、無事峠下の車輌に帰着。生憎の曇り空ながら、雨が多かったのは高所のみだったらしく、車で下った山下の路面は乾いていた。

写真は麓の多賀辺りから見た鈴鹿山地。中央最奥に霞む山が鞍掛峠の南で御池岳北横の主稜線辺り。御池岳はこの南、即ち右側に台地の姿で聳える筈であるが、前山や雨雲の所為で遂に認めることは出来なかった。

帰宅後、道具類の片付けをしていると、何と、雨具のファスナー蓋奥に蛭が潜んでいることを発見。すぐに処分したが、危ないところであった。

あれほど注意していたにも拘わらず取りついていたとは、中々手強い相手である。雨具の着用順序から、恐らく高所として油断していた御池山塊上で取りつかれたとみる。同様の行程を予定する人はどうかご注意を……。

さて、今日は生憎の天候ながら、無事一通りの予定をこなすことが出来た。参加者皆さんのご協力に感謝。お疲れ様でした!

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会
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