2020年05月03日

連休急務

新緑の季節を迎えた、5月初旬の京都雲取山の天然林斜面

未曾有の自粛連休
警戒厚くし近山往復


4月に至って見舞われた予想外の低温気候も漸く去り、平年通りの温暖、またはそれ以上の気温を維持しつつ5月に入った。

5月初旬といえば黄金週間――。

早い人なら先月29日辺りから始まったようであるが、個人的には通常暦通りに動いているため、あまり有難みは感じない。ただ、年中で最も過ごし易い時季の一つであるため、やはり特別な時期に感じてしまう。

しかし、今年は存知の通り新型肺炎騒動とそれに連動して発令された緊急事態宣言により、その華やぎや特別感は大きく減じられることとなった。

全土に対して観光や帰省のための移動は疎か、近場の外出さえ自粛が呼びかけられたため、それまでの通勤・通学の中止や諸営業・諸行事の自粛の動きに加え、更なる閉塞感が国中に充つ観となった。市井の人間として感じたそれは、恰も地域という籠に閉じ込められたような感覚であった。

そのため恒例の春の野営会も中止せざるを得なくなった。自粛の趣旨に適う形で独り行うことも考えたが、適地が他県や遠隔地にあるためそれも難しくなった。ただ、どうしても京都市内の山に短時間行かざるを得ない用があり、今日時間が取れたので、それを以て気を宥めることとした。

山での用とは、以前から機会を窺っていた、この冬失くしたザック(背嚢)の部品を探しに行くこと。軽微なものだが再入手が叶わないもので、風雨日射で傷む恐れがあり、また現地が間もなく山蛭の巣窟となるため、どうしても今行く必要があった。

ただ、私にとっては急務であったが、客観的には不要不急の外出ともいえるため、先月の山行同様、感染対策は勿論、道中人と接しないことや、短時行ながら救難装備を完備するなどして万全の対策で臨んだのである。


上掲写真 京都市街近辺の山々に遅れること暫し、漸く新緑の季節を迎えた京都北山の天然林斜面。


京都市北部の山上集落・芹生の奥で満開を迎える5月の桜

向かったのは京盆地北縁にはだかる北山山地。その中の雲取山(911m)であった。京都市外の人には、かの貴船の奥といえば解り易いであろうか。

このサイトでもお馴染みの山上集落「芹生(せりょう・せりう)」の近くで、個人的な冬の鍛錬地夏の避暑地でもあった。

公共交通を使わず、自宅から空いた道を車輌で北上し30分強にて集落に達したが、なんと、写真の如く、まだ桜が満開であった。

標高は620m程。自宅からこれ程近いにも拘わらず、一気に北日本まで飛び至ったかのような錯覚を覚えたのである。


IMGP6943.jpg

非常時の奥地にて

芹生集落からは、その奥の未舗装路を慎重に進み、支流谷の分岐付近にて下車した。道は雲取山山体による行き止まりまで更に続くが、倒木や路盤流失のため、その辺りが車輌進入の限界地となっている。

貴船から先は対向車に遇わず、人も殆ど見なかったが、写真の如く、何とこんな奥地に家族連れがおり、車が停められていた。平時でも時折車輌を見る場所ではあるが(恐らく釣り人)、時節柄少々驚かされた。

一家は水槽のようなものを手に路上の水溜まりを探っているので、水生昆虫か何かの採取であろうか。そして車の鑑札は所謂「他府県ナンバー」。1台は隣県、もう1台は比較的遠方かつ感染が活発な地域であった。

誰もマスクを用意していないので、非常時という意識は無いのであろう。今、他府県車輌への批判的実力行使が問題化しているが、やはり目立つ存在であることは留意した方が良いように感じられた。

特に、郊外・地方では猶のこと……。


京都・雲取山の南尾根へ続く急斜の尾根

失せ物探し山へ

さて、下車地にて、素早く準備して山に入る。3月とは全く異なる温暖のため、泥濘近く等での足下を警戒しつつ……。

乗っけに挑む写真の急斜尾根は3月試みた雲取山南尾根への非正規ルート。背嚢部品を失くした場所は定かではなかったが、恐らくは道なき行程で物が引っかかる藪も多かったここの可能性が高いと判断していたのである。

そして、早くも最初の小頂を越えた岩下にて、失せ物を見つけることが出来た。早々に目論見が当たり、喜び安堵したが、引っかかるべき藪のない場所であったことは意外であった。

しかし見つかった部品は細かく切れて散乱しており再使用が叶うものではなかった。2カ月の風雨で劣化したかと思ったが、素材自体は元の強靭を保っており、獣か何かに食い千切られたような観があった。食べ物は疎か人の匂いも付き得ない外装品のため不可解を感じ、また不気味さも感じた。

こうして、探し物は早々に見つかったものの、使えない状態と化す残念な結果とったが、ゴミとならずに回収出来たことは良かった。また、気持ち的にも諦めをつけることが出来た。


誰もいない緊急事態宣言下の京都・雲取山山頂

目的果たし短時観覧

失せ物捜査の目的はすぐに果たせたが、折角なのでそのまま山頂等の様子を見ることに。どのみち平時でもまず人と会わない山でもあるので……。

ただ、今日は午後から雨予報で、既に空も曇っていたので、短時間で撤収する予定に変わりはなかった。

写真は南尾根を登り達した雲取山山頂。本日最も人と出会う可能性がある場所であったが、見ての通り、誰も居らず、通らず。


樹々の枝先に漸く新緑が芽吹く、京都・雲取山山上の自然林。2020年5月3日撮影
雲取山山頂北の天然林。雲取山山上一帯は意外にもまだ冬枯れが優勢で、樹々の枝先に漸く新緑が芽吹いたばかりの状況であった


緊急事態宣言下の京都・雲取山北峰山頂。2020年5月3日撮影
雲取山山頂から更に進んで達した、雲取山北峰山頂。曇天のため、あまり遠望はきかない。いつもはここで食事を摂ることが多いが、今日は水分補給のみで、すぐに引き返す


京都・雲取山の二ノ谷の新緑と立命館大学ワンゲル部の山小屋施設。2020年5月3日撮影

北峰から雲取山山頂に戻り、谷道では最短の復路となる二ノ谷道を下る。写真は標高約760m辺りまで下降して現れ始めた新緑の天然林。

因みに、中央の建屋は立命館大学ワンゲル部の山小屋施設。当然ながら人影は無く、短い学生生活の貴重な1年、最良の時季にこんな事態となり、実に気の毒に思われた。


京都雲取山・二ノ谷の沢辺に散る山桜の花弁
京都雲取山・二ノ谷の沢辺に散る山桜の花弁。因みに、表題画像もこの付近にて撮影


緊急事態宣言下の貴船神社奥宮の新緑と多くの参観車輌

急務果たし無事帰るも……

そして二ノ谷の終端まで下り、更に本流の灰屋川(大堰川・桂川水系)を下ること程なくして下車地に帰還した。その後は往路と同じく貴船を経て、無事京都市街の自宅へと帰ったのである。

写真は、芹生峠の車道を下り達した貴船神社奥宮(標高340m前後)。ここも新緑が鮮やかだが、何と、朝より参観車輌が増えている。満車までには至らないようであったが、それに近い状況である。

さすがにこれは不要不急の誹りは免れまい。しかもこんなに沢山。思えば、芹生の桜を撮影していた時、連休を利用して来たとみられる旧住民もしくは新住民(現住人によると近年大阪等の人間が家屋の権利を手に入れ別荘的に使用)とみられる家族連れに接近された。

大人6、7人の多勢で、誰もマスクは無し。そのまま通り過ぎてくれればまだしも、わざわざ最接近して燥ぎ(はしゃぎ)喋りながら同様に写真を撮り始めた。因みに、桜は私の位置以外の方々で撮影可能である。

どうしてこんなに無思慮の人が多いのであろう。基本的にテレビを見ない私でさえ、他媒体のニュース等でソーシャルディスタンス(人間距離)の重要性や医療現場の逼迫、新型肺炎の儘ならぬ性質について認識している。これらの人々は、皆大半の情報をテレビに頼るごく普通の人々とみられるので、私以上に事態の深刻さに触れている筈であろう。

「戸外だから大丈夫」「山だから問題ない」という話ではないことは自明の筈である。仮に外出の必要があり、また欲求があったとしても(但し近場・安全が条件)、対策は何ら難しいものではない。マスクがない(または嫌)なら他者から離れればいいだけのこと。そんな簡単なこと、僅かなことが実行出来ないのか。いやはや、この先大丈夫なのであろうか……。

うーん、折角個人的急務を果たし、山の自然も紹介出来たのに、何やら世間への懸念が増し、愚痴めいた報告となってしまった。えい、致し方あるまい、これも非常時の一端を記録するものとして掲げることにしたい。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会
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