
予想外の寝難い夜を経て
コロナ禍での実験的野営会2日目。
今日も朝から良く晴れた山日和となったが、意外にも前夜から未明にかけて低気温となり、皆寝難い一夜となった。
昨晩は0時半頃寝たが、その時点での簡易計の値は5度を切る寒さであった。後に知った京都市街の今朝の最低気温は10度程。滋賀南部にあり市街地にも近い標高300m程度のここでそんな低温となったことに少々驚く。
秋は気温のバラつきが大きいため、かなり寒い日に当たることもあったが、春にここまで低下するのは初めてであった。何事も油断禁物である。
また、春にはあまり生じない夜露・朝露が多かったことも異例であった。それは、正に天幕等の全てが雨に濡れる如き量があり、その湿度も寒さを助長したように思われた。
ただ、それ程の寒さも水分も、日の出と共に急速に減少し、はや朝の内に幻と化す程、昨日同様の温暖・乾燥に復したのであった。
「2021春野営会」初日の記事はこちら。
上掲写真 滋賀湖南アルプス山中に於ける野営会天幕場。恒例の場所と異なり、湿地や藪に阻まれ平地に乏しいため各テントは比較的近接する形となった。私も、前夜、当然寒さに圧せられながら寝たが、それよりも、この状況に因り他者の鼾(いびき)を回避できぬことに難儀した(笑)。

分水界と水源探査
今朝は朝食を済ませてから少し余興を行った。野営地裏手の尾根から道のない斜面を登り、その少し上部に続く分水嶺を観察しつつ野営地の沢の源流を探索したのである。勿論、昨日同様マスク着用である。
野営地からは、いずれの沢もその源流が近く、観察に適していたため、随分前にも参加者の一部と探索をしたことがあったが、今日はまた別の参加者の希望により再案内することになった。
ただ、前回は沢を遡上したが、今回は尾根から。沢が大きく屈曲しつつ奥まで続いているため、早く到達できる分水界を先にし、その後源流から野営地まで下ることとした。
道なき場所とはいえ、鹿の食害の所為か、山腹に藪は少なく、高低差も数十m程度なので、難なく稜線に出られた。しかし、ここからが少々難しいところ。一帯は比較的なだらかな地形だが樹々により見通しが悪く、かつ支尾根が錯綜しているからである。
一応こんな時の為に紙の地図も持参していたので、それを参照して尾根を辿り沢の源頭を目指す。写真はその稜線の道。そうとは見え難いが、一応流れ下りる集落も異なる、歴とした川の分水界でもあった。
稜線上には薄く踏み跡の如きものが窺われるが、基本、廃道風情であり、地図を持ち、それを正しく利用出来なければ正確に辿ることは難しい。

途中、古い巻き道などに誘引されるも、主稜線上を進み、やがて写真の河川源頭部に出た。上部奥が分水界の頂部で、そこから下に向かって続く、極浅い窪みが谷の始まりである。
見たところ、水気もなく、水源とは言い難いが、間違いなく沢の最上流部であった。

そして乾燥した源頭の窪みを下ると、間もなく写真中央に見える更なる窪みが現れた。周囲から滑り落ちてきた枝等が溜まるその下には水があり、右側から僅かに流れが始まっていた。
即ち、これが野営地で我々が利用する沢水の源であった。小さな湿地状で沢が始まるのは、地形がなだらかなこの山域に共通する特徴でもある。
正に、老耼(ろうたん。老子)いうところの、人知れずひたすら恵を産む「玄牝之門(げんびんのもん。『道徳経』)」か……。

水源近くで発見した水中から黄色い頭を伸ばす植物。控えめで可憐な姿のそれは「冠茸(カンムリタケ)」とみられる。水中の落ち葉や朽木を養分として育つ変わったキノコらしい。ちょうど盛りなのか、広範にみられた

沢の水量が少し増すと、石組みの堰堤が現れた。この山域に多い花崗岩を用いる砂防堤である。恐らくは戦前の物とみられる。湖南アルプスは淀川治水の要として明治期から砂防工事が続けられている。都城や寺社造営用の木材伐採により古くから山が荒廃したためである。痩せた山林、野営に適した砂場の存在は皆その影響であった。堰堤上部に戦後のコンクリ護岸があるのも興味深い

当初はか細い流れであった源流の水も、やがて写真の如く確りとした沢となった。そして、程なく元の野営地に帰還。約1時間の小冒険の終りである。希望者共々、皆楽しんでもらって何よりであった。

下山時の残念
その後、野営地にて参加者の個人的試みである手作り麺麭(パン)を賞味させてもらったりしつつ、昼食等を済ませた。
本来は初参加者がいたので、近くの名所(小峰)も案内したかったが、欲張らずにゆるりと過ごしつつ、撤収の準備に入った。
そして、全てを片付け、忘れ物や消火、ゴミの確認を抜かりなく行い下山した。昨日先客に占められ、今は無人と化した、いつもの野営地も通過したが、そこで、写真に見える残念な光景が目に入った。
見ての通りの、トイレ紙の散乱である。ハイカーの通路、またはテント場の直近でのこの有様。しかも、写真のものだけでなく、近くにもまた別の同様があった。
これを残したのは昨日の先客らか、大人数の日帰りハイカーかと思われる。先ずは場所をもっと奥にするべきだが、靴先で簡単に穴が掘れる場所なのに、せめて埋められなかったのであろうか。次にここへ来る人がこんな光景を見せられてどういう思いになるのか想像できないのか。
また、コロナ禍の状況下では、防疫的にも大問題の行為である。
全くもって情けない限り。これらは年端もゆかぬ若者ではなく、親子連れや中高年の団体の所業なので尚更である。これでは山に入る資格は無い。
こんなことではハイカーやキャンパーの評判を落とし、入山自体を禁止されかねないので、厳に慎んでもらいたい。
無事試行終了
さて、最後に良からぬものを見て、愚痴めいてしまったが、野営会自体は無事下山出来、帰宅も叶った。
今回の「試行」の課題としては、生野菜の扱いがあげられるか。野外での防疫の限界から、やはりそれは止めるべきかと思われた。もしくは個人で用意すべきかとも……。
とまれ、皆さんお疲れ様でした。色々とご協力有難う、またよろしくお願いします!
「2021春野営会」1日目の記事はこちら。