2021年05月23日

山茶手工

京都東山の奥で採取した野生の新茶葉

※2021年6月13日下段追記

裏山の幸での試み

5月を代表するような産物といえば新茶。

初旬の「八十八夜」の頃からはかなり過ぎたが、先日の裏山行で野生の新茶葉を見つけたので、予てからやってみたかった煎茶作りを試みた。

とはいえ、本当の緑茶づくり、所謂「製茶」は時間がかかり大変なので、現代の家庭利器を利用した簡易なものであった。

実は、一度それを先週にも実施したが、緑を保ち発酵を止める蒸し作業に失敗したのか、黒っぽい大陸風緑茶の仕上がりになった。

その味も正に中国新茶「春尖」の如きで、これはこれで美味なのだが、意図したものとは違うので、再挑戦することにした。

写真は、奥山で手摘みしてきたその茶葉。状態の良さから先週のものを掲げたが、見ての通り素晴らしい色合いなので、是非それを活かした宇治風の茶が作りたかったのである。

因みに、先日紹介した路傍の新茶葉は既に何者かに因って綺麗さっぱり摘まれていた。何事にも目敏い人物がいるものである(笑。それとも、ここで紹介した所為?)。


京都東山の奥で採取した野生の新茶葉にみる「一芯二葉」
今日採取した新茶葉にみえる「一芯二葉」の姿(中央)。摘み取り方等は事前に学んで臨んだが、その基本は、枝先の未開の尖った葉を「一芯(針)」として、その下の葉二つまでを共に折りとる「一芯二葉」。特別な高級茶や二葉及びその茎がかたい場合は「一芯一葉」とする場合もある


京都東山の奥で採取した野生の新茶葉を電子レンジで製茶した煎茶

驚きの製法
奥深い茶樹


製茶の方法は、なんと電子レンジを使うもの。手軽に製茶を体験できる方法として、茶産地の研究・教育機関等で紹介されている方法である。釜煎り等よりも、最も宇治煎茶に近い仕上がりが期待できる。

その手順は、最初に数分レンジで茶葉を蒸らして退色と発酵を止め、その後、手揉みとレンジでの乾燥を繰り返すものであった。1時間もあれば製茶が完了するという驚くべき簡易法だが、それが中々上手くいかない。

写真は生茶葉約150gを使い同法を試した完成間近の様子だが、色こそ前回より残せたものの、高い湯温でないと色や味・香りが出ないという茶になった。湯温さえ上げれば悪くはないのであるが、何か違う気がする。

また、完成した茶葉や煎じた茶に若干発酵臭がするということもあった。今回は発酵を防ぐため蒸し作業に十分注意したが(青臭さがなくなるまで蒸す)、その後の工程が悪かったのであろうか。しかし、発酵臭といっても嫌なものではなく、所謂、桜餅同様の良い香りではあった。

ところが、後日調べてみると、桜餅の香りをもつ茶の品種があるという。それは、静岡で開発されたものらしいが、個体選抜を経て品種化されたものなので、茶樹元来の性質かもしれない。

因みに、その品種は昭和中期頃、開発されたらしいので、それ以前に現地に自生していたと思われる今回使用の茶樹は、そういった品種の原種ともいえる存在かもしれない。

また、奥山とはいえ古代からの歴史痕跡が濃厚な場所なので、更に孤立した古種の可能性も窺われる。若しくは文献上最初(9世紀初期)に茶が現れた場所とされる滋賀・崇福寺から遠くない場所なので最古級品種か……。

とまれ大陸から伝来した只1種の樹種ながら、実に奥深いものを感じさせられることとなった。機会あれば、また製茶法共々研究を深めたいと思う。

※追記

後日のものだが、煎じた茶の状態画像がなかったので以下に追加。

ポット内で葉を開く、電子レンジ製茶した京都東山の野生新茶葉ポット内で葉を開く、電子レンジ製茶した京都東山奥地採取の野生新茶葉。宇治煎茶の淹れ方に反し、熱湯で長時間抽出することにより、色や旨味が出た。今の栽培樹とは異なる特異品種、または古種なのか


清水焼湯飲みに入った、緑鮮やかな、電子レンジ製茶した京都東山の野生新茶清水焼の湯飲みに入った、緑鮮やかな、京都東山の野生新茶。水色もよく、新茶らしい清涼感をもつ逸品であった

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 手工
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