2021年09月27日

奥黒部独錬行(上)

奥黒部の最深部、水晶岳傍の標高2900m超の尾根上で見つけた、色鮮やかなウラシマツツジの紅葉

副反応経て十年来の願望実行

新型コロナワクチン2回目接種2日後に企てた山行が、まさかの副反応で中止となって1週余。

懲りずに日程等を再調整し、実行することとなった。副反応といっても微熱程度であったが、接種後5日で漸く小康を得たのは先日記した通り。本来なら気温低下を避けるため少しでも早く行きたかったが、こればかりは致し方あるまい。

まあ、どのみち先週末などはテント泊ですら混雑のため予約が取れず、接種後1週間以内に「激しい運動」とされる登山をすることに身内から批判も出ていたので、丁度良い遅延となった。また、慌て気味だった装備等の準備も、改めて完備・完了させることが出来た。

それでも、無理はしないつもりだったので、出発前には検温するなどして体調の監視を続け、入山前にも再度検温し平熱や体調を確認した(入山前の体調・体温の確認は、現在、奥黒部入域のルールにもなっている)。

さて、改めて実施した山行は、ここ数年恒例化している高山独錬行。3000m級の山々で行う個人鍛錬・研修的山行で、世情的・経済的に遠出し難い身の、細やかな夏季休暇も兼ねたものであった。場所は前年同様本邦有数の高山帯・北アルプス。その中でも、今回は奥黒部を目的地とした。

奥黒部は、かの黒部峡谷や黒部ダムを擁する、越中(富山県)奥地を貫く黒部川の源流域である。交通の発達した現代でも、そこへ到達するのに歩いて2日以上かかるため、日本で最も時間距離の遠い地とされ、「最後の秘境」とも呼ばれる。そこを探訪することは私の十年来の願望でもあった。


上掲写真 登行開始の翌日、奥山の厳しい稜線上で見つけた、色鮮やかなウラシマツツジの紅葉。初め、地を覆う草が黄葉ではなく紅葉しているのに驚いたが、名の通りツツジ科の樹木であった。地を這う茎を持つらしく、その樹高は極めて低い。これも極地に生きる知恵なのか。因みにその漢字名は竜宮城の浦島ではなく、葉裏の縞に由来する「裏縞」であった。



参考地形図(国土地理院提供)。縮小・拡大可。


新穂高温泉中崎の橋上から見た蒲田川の分岐部とその奥で明るみ始める北アルプス山々

意外の温暖・空車の麓発つ

麓へ出発したのは昨日のこと。シルバーウイークは今日で明けるがそれ以前もかなりの人出で登山口最寄りの無料駐車場が混雑していたとの情報を得ていたので念のため前日から車を借りて夕方到着し、車中泊していた。

駐車場の場所は、2年前に槍ヶ岳登山で利用した岐阜県北部飛騨地方奥の新穂高温泉。車道の果ての温泉地であるが、槍穂高や奥黒部等の登山口最寄りとなる、上高地と並ぶ北アルプス登山の一大拠点であった。

車中泊は結局大して眠れずに起床予定の夜明け前を迎えた。寒かった前回とは異なり、今回は暑かったという事情も。まあ、日没前に夕食を済ませ、それからずっと横になっていたので、深夜着きの前回とは違い大いに休むことは出来た。

しかし、前回は9月19日だったが、それより1週以上遅い今日が暑いとは、まさに意外であった。駐車場は既に標高1000m強という高所にあり、その上手にあり各方面の出発拠点となる「新穂高登山指導センター」に置かれた温度計の値は朝5時過ぎで13度もあったのである。

このような温暖で恵まれた気候条件にもかかわらず、意外にも駐車場には空きが目立った。予想では、前回同様、夜間車が増えて朝には満車になっていると思ったが、当たらなかった。

車内で朝食等の準備をし、いよいよ出発。まだ少し暗く、センターまでは林間の細道があるのでヘッドライトを付けたが、センターでトイレ等を済ませると明るくなったので片付けた。センターからは槍ヶ岳方面とは異なる左(西)の谷を進むため、橋を渡り川の左岸を北上した。

写真は、その橋上から見た蒲田川の分岐部とその奥で明るみ始める北アルプス山々。目指す奥黒部の山々はその彼方にあり、まだまだその姿を見ることは叶わない。


新穂高温泉左俣林道の車止めと、2021年9月21日の地震影響への注意を促す看板

登山路兼用の車道を進むと、程なく車止めと登山者用の標識等が現れた。そこには、写真に見える通り、19日に発生した地震についての注意が大書されていた。

報道されたので存知の人も多いと思うが、本来私が入山しようとしていた前日夕方に一帯で地震があり、落石や救助要請が相次いだのであった。

その震度は強く、2年前お世話になった槍ヶ岳山頂直下の槍ヶ岳山荘で震度5弱が観測されたという。当日入山していた人らの情報によるとその後も余震が続き、その轟音や落石で一晩中山々が鳴動する状況だったとのこと。

地震の影響で、槍ヶ岳山荘を交点とする東西の鎌尾根を始め、登山道の崩落も発生し、最寄りの山小屋人員が各所の安全確認を行うまで長時間の足止めが続いていたという。

つまり、副反応がなくても私は20日の朝その混乱に巻き込まれ、情報待ちの待機を強いられて計画通り奥黒部に行けなくなった可能性が高く、2万円程の路銀も無駄にするところであった。正に、不幸中の幸いか……。


新穂高温泉左俣林道に残る2021年9月19日地震に因るものとみられる土砂崩れ跡
未舗装の林道化した車道を進むと、早速路端に崩落跡が現れた。それは数箇所あったが、全て片付けられていた。地震直後にこの林道にも土砂が入り、翌20日に片付けられたとの情報を得ていたが、上部への不安もあり、なるべく山際を避けて歩いた(谷側も崖なので注意が必要だが)。


出水や老朽化で劣化したとみられる新穂高左俣林道の「通行自己責任橋」とその注意標示
これは今回の地震に関係なく増水や老朽化で劣化したとみられる林道橋とその注意標示。林道は各山小屋の物資を運ぶ補給車道ともなっているが、自己責任通行とは随分な状況である。奥山へのルート整備を担う小屋の役割や主要登山路としての観光価値等は考慮されないのであろうか


新穂高・左俣林道脇の山小屋・ワサビ平小屋
林道をひたに進むこと約1時間にてワサビ平小屋通過。林道脇ながら、深いブナ林に囲まれつつ小川等の水にも恵まれた好立地の山小屋。朝早いのでまだ外に向けた営業は行われていないが、冷たい果物等を浮かべる水槽や「ソーメン」と記された布が備えられるなど、立地を活かしたサービスが窺える。とまれ、未だ夏真っ盛りな様子


橋により左俣谷の東岸へと渡る林道と朝日を浴びる標高2500m超の稜線
橋により左俣東岸へと渡る林道と朝日を浴びる標高2500m超の稜線(西鎌尾根・樅沢岳から笠ヶ岳へ至る飛騨山脈・北アルプス支脈)

長い林道歩き終え登山路へ

ワサビ平小屋から15分程で、橋にて東岸に渡る林道と別れ、西岸を進む野道の入口が現れた。鏡平を経て北アルプス稜線上の双六小屋まで続く「小池新道」の入口であり、奥黒部入域の登山口の一つでもあった。


登山口付近の小池新道
鏡平・双六小屋へと続く小池新道。随所で石が人為的に再配置され、大変良く整備されていた


小池新道入口近くから見えた槍ヶ岳の大槍・小槍と朝日を反射する槍ヶ岳山荘の小屋

小池新道の入口付近は標高1500m程となり、周囲も開けてきたので、右手上部に北アルプスの主稜線が見え始めた。

写真中央の尖りが槍ヶ岳の主峰部「槍の穂先(標高3180m。大槍)」で、その左の小さな尖りが彼のアルプス一万尺の歌で有名な小槍。因みに、大槍の右で朝日を反して光るのは「槍の肩」部分にある槍ヶ岳山荘の施設。


北アルプス・小池新道が横断する荒々しい岩石河原
小池新道は基本的に山腹を巻きつつ高度を上げ稜線に出る道程となっている。そのため、この様な沢を幾つも横切る。今は穏やかだが、増水時等に急崖から押し出してきたとみられる無数の岩石が厳めしい

荒々しい沢の狭間の樹林を進む途中、上方彼方に砲着弾のような大音と崩落の轟音を聞き思わず身を竦(すく)める。地震の影響か。陽が登り、気温が上るなどの僅かな変化により崩れたのか。何かあれば人なんぞ一溜りもないことや、そうした「激動の地」にある登山道整備の苦労を想った。


北アルプス・小池新道の途上から見えた左俣谷彼方の焼岳や乗鞍
山腹を巻きつつ高度を上げる小池新道から来し方の左俣を見る。遠く焼岳(標高2455m。中央左の峰)や乗鞍(同右の峰。3025m)も見えてきた


小池新道から見た、草木色づく北アルプスの秋景色
高度が上がると草木も秋めいてきた。本来なら麓を含め紅葉が進んでいる頃だが、高気温の所為か、季節の進みが遅れているように思われた


槍穂高連峰を池面に映す鏡平の鏡池
巻道はやがて溶岩らしき岩が多く散る急登に変わり、そのあと尾根上の平坦地に出た。槍穂高連峰を映すこの鏡池が代表する鏡平である

天空の景勝地「鏡平」

鏡平へは小池新道登山口から2時間半程費やした。鏡平は稜線にある弓折岳(2592m)中腹から分岐した標高2300m前後の尾根上にある高層湿地で、豊富な植生と多くの池塘を擁する景勝地。特に鏡池に映る槍ヶ岳(写真左の峰)の姿「逆さ槍」で著名である。


鏡平からみた槍ヶ岳の拡大画像
陽も高くなり槍ヶ岳の姿も明瞭となってきた。4倍望遠(35mm換算112mm相当)にて撮影


鏡平山荘と樅沢岳等の稜線の山々
鏡平の山小屋「鏡平山荘」と稜線の山々。中央の台形の峰は槍ヶ岳へと続く「裏銀座」西鎌尾根の起点、樅沢岳(2755m)。小屋の正面を撮った写真もあるのだが、敢えて背景込みのものを。因みに、この小屋はかき氷が名物らしく、小屋前の席で大きなそれを賞味する人も見た。そういえば、こんな高所で、しかも10月目前の朝というのに全く寒くないということに改めて驚く。人界同様、高地もまだ夏なのか


鏡平上方の稜線へと続く巻道状の小池新道
鏡平上方の急登を超え、稜線へと続く樹木乏しい小池新道の巻道

再登坂からの不調

これまで結構な登坂を超え、駐車場から順調に1300m程の高度を稼いだが、鏡平を出た再登坂で急に息苦しさが増してきた。槍ヶ岳行の際も標高2000mを超えて急に辛くなったが、あれは色々と無理をした結果。

特に今回は副反応明けで、無理をしないと決めたので、ペースや栄養補給に気を遣ったが何故なのか。一種の高山病か、それともまさかの副反応継続か……。思うように進めず悔しいが、休みやすみ進むことにした。

今回は研究・工夫を進め背嚢の初期重量(3日以上の食糧込)を13s程としたが、それでも辛く、重いことに違いはなかった。理想は10kg以下とすべきか。不可能ではないが、装備を大幅に買替えなければならない。

とまれ、自ら始めた苦行に矛盾や後悔を感じたり、果ては全てを捨てて帰りたくなったが、まあ、これは毎度のこと(笑)。今は進むほか無し。


弓折乗越からみた、頭を雲に隠す槍穂高連峰
そして鏡平から約1時間で漸く稜線上の弓折乗越(ゆみおりのっこし)に出た。標高は2550m。頭が雲に隠れたが、先程まで見上げる角度だった向かいの槍穂高が水平近くになってきた

ここでハイドレーション(背嚢収納型飲水袋)の水が切れたかと思い少々焦ったが、ホースに空気がかんだだけで1.5Lのうち0.5L程の残量があった。ただ尾根道により次の小屋まで補給不能なので留意することにした。


弓折乗越すぐ北に続く急登の小池新道
乗越に着けばあとは稜線歩きで比較的楽になるかと思えば、いきなりこの様な急登が。そして、その後も頻繁に上下を繰り返す辛い道程が続く


弓折乗越北の稜線頂からみた箱庭のような鏡平全景
稜線道から下方を見れば、既に遥か眼下となった鏡平が見えた。箱庭的その全容が良く把握できるか。鏡平にテント場はないので、一度小屋泊でゆっくり散策してみたいものである


弓折乗越と双六小屋間の稜線上の小池新道から見えた奥黒部、水晶岳と鷲羽岳
重荷に喘ぎながら稜線道を進むと、やがて彼方に目的地の奥黒部の山が見えた。中央奥の白っぽい山塊がそれで、それぞれ百名山の一つにも数えられる、水晶岳(黒岳。2986m)と鷲羽岳(2924m)である。今日の野営地は、その手前側の鷲羽岳麓を予定していたが、未だ遥か彼方であった


双六小屋へと下り始める小池新道と彼方の鷲羽・水晶岳
弓折乗越から歩行1時間弱で漸く次の小屋、双六小屋が見えた(中央鞍部の赤い建屋)。息苦しく、重荷が辛い!


双六小屋下流谷の黄葉
小屋まで辛抱と決めた辛い歩行のさなか、小屋下の谷に美麗な黄葉が現れた。少々癒されるが、苦しいことに変わりなし(笑)


奥黒部への近道となる巻道ルートと双六岳山頂との分岐付近から見た奥黒部の方面の山々

本来的野営地から更なる奥地へ

鏡平から1時間強で双六小屋に到着。ちょうど昼時になったので、小屋前で持参した昼食を摂った。この時、何故か空が暗くなり風も強くなった。周囲の人同様、上着を出し、その寒さを凌いだ。

出発から6時間超。本来なら労力配分的にこの双六小屋で宿るべきだが、休息後まだ頑張れそうだったので、当初の予定というか希望通り、奥黒部の入口である次の三俣山荘まで向かうこととした。

今回の希望行動日数は3日。しかし、ここで宿ると、自動的に5日以上費やさないと予定の山域を周れなくなってしまう。予備日含め最長4日しか予定していなかったので、ここは少々頑張る必要があった。

さて、双六小屋では水の汲み直しやトイレ等で手間取り、1時間近い長休みとなった。一先ず先を急ぐが、これまた息が足らず非常な苦しさが……。

写真は、双六小屋脇から双六岳(2860m)方面へと続く辛い急登の中腹分岐部より見た奥黒部の山々。中央の鞍部に今日の野営地「三俣山荘」がある筈だが、未だ遠くしてその姿も見えず、先が思いやられた。


三俣山荘方面への近道「巻道ルート」から見た紅葉や黄葉と背後の北鎌尾根や硫黄尾根等
三俣山荘方面への近道「巻道ルート」を進む途中に見た奥山の色づき。森林限界に達しているため灌木のみだが、独特で美しい。あと10日程経つと見頃に達するか。中央奥に先日の地震でヘリ救助の模様が報道された槍ヶ岳の最難関ルート「北鎌尾根」が見える(日影の尾根背後の明るい岩峰)


双六・三俣間の巻道ルート上に現れた三俣蓮華岳とそこに向かい登坂するルート

双六小屋から三俣山荘へ向かうには、小屋の西側にある双六岳(2860m)とその北奥の三俣蓮華岳(2841m)を経る稜線ルートが本来的だが、かなり高度を上げねばならず、時間もかかることから、帰路通る予定でいた。そのため、双六岳中腹の分岐から「巻道ルート」なる短絡路を進んだ。

しかし、これが意外に上下があり、また足場の悪い場所もあり、辛い。本日最後となる、両小屋間の所要3時間の道程は比較的楽が出来、時間も短縮出来るのではないかと思ったが、大間違いであった。

小休止を繰り返しつつなんとか進んだが、やがて目の前の景色が白化するなどの異状も現れた。こんなことは、昔、炎天下の中央アジアの街を長く歩いたあとに生じて以来である(日射病か、その直後に飲んだ偽物ビール?の所為とも)。そして、幾ら息を吸えども全く足りない……。

只々、最後の一踏ん張りと思い、微速の前進を続ける。

そして漸く巻道ルートの終点となる三俣蓮華岳(写真中央)が見える写真の場所まできたが、なんと道は山頂直下まで長い登りとなっていた。実状にそぐわない「巻道」という名を恨みつつ(整備した人、失礼!)、半ばやけ気味に喘ぎ進んだ。


三俣峠からみた奥黒部の山々(祖父岳・水晶岳・ワリモ岳・鷲羽岳)
なんとか山頂下の三俣峠(標高2750m)に着くと眼前に奥黒部の重鎮達が出迎えてくれた。左から祖父岳(じいだけ。2825m)・水晶岳(黒岳。2986m)・ワリモ岳(2888m)・鷲羽岳(わしばだけ。2924m)の4峰である

三俣峠背後の三俣蓮華岳は、岐阜・富山・長野の県界となっており、その北に広がるこれらの山域は富山県最奥(東南)の地に当たる。遂に、黒部川水系、即ち奥黒部に達したのである。


奥黒部の秀峰・鷲羽岳とその稜線麓に建つ三俣山荘

秀峰に迎えられ奥黒部玄関着

さあ、三俣峠からは山荘まで下るだけである、と思い、休息を我慢して進むと、意外にこれが遠い。それどころか、道はすぐ高山特有の低木・ハイマツの林に入り、小屋の姿は疎か、山の姿さえ見えなくなった。

それもその筈、峠から山荘までは距離1km、高度差200m以上を下らなければならない。写真は、道を違えたかと思い始めて漸く現れた、奥黒部の秀峰・鷲羽岳とその稜線麓に建つ三俣山荘(中央)。小屋(稜線)の左側(西)が黒部川水系、右側(東)が信濃川水系となる分水界でもある。

聞きしに勝る絶景の好立地。限界に近い疲労が報われた気がした。苦労して来て良かったと素直に思う。


奥黒部の南玄関であり、各方面への拠点ともなる三俣山荘(玄関部分)
奥黒部の南玄関であり、各方面への拠点ともなる三俣山荘

結局、三俣山荘には15時過ぎに着いた。休憩を抜いた歩行時間は9時間半程か。予定では15時半着(但し5時丁度出発の場合)だったので、苦しんだ割りに早く着いた。


陽が落ちて寝支度に入る三俣山荘のテント場と、暗いなかでも麗しい姿を保つ鷲羽岳
陽が落ちて寝支度に入る三俣山荘のテント場と、暗いなかでも麗しい姿を保つ鷲羽岳

テン泊値上げの怪と不調で迎えた高地の宵

山荘で早速野営の申し込みと手続きを済ませ、100m程道を戻ったテント場に天幕を設営した。既に多くの人とテントがあり、ハイシーズン扱いの先週程ではなかろうが、人出の多さを感じた。

ところで、野営料金が従来の1泊1000円から2000円に値上げされていた。小屋泊も3割程値上げされていたが、それはコロナ感染防止の人数制限の為と理解できる。しかし制限不要なテント泊の倍額値上げは納得し難い。

しかも、これまで含まれていたトイレ使用料も毎回200円(HP上。現地では「100円か200円の寄付を」との婉曲表現)が要求されるようになったので実質それ以上の値上げとなる。何故そんな急な値上げが行われたのか。

ひょっとして昨年の営業不振分を転嫁しているのか。山小屋運営の厳しさは知っており気持ちは判るが、客に責任はないため、社会通念的・商業倫理上通らない話である。小屋組合の取決めらしいが、同じくコロナの影響を受ける一零細自営の身として、納得いく説明をしてもらいたいと思う。

小屋側からは「日本の登山文化継承のため」との申し開きもされているが、費用増大(特に学生)や装備肥大(小銭の量・重さ等)に因り、正に我が国登山文化の一つである長期縦走が蒙る打撃は多大であろう。

さて、天幕設営後、持参の珈琲を淹れ、寛ぎ休む。空気が薄い所為か、息苦しさが癒えることはなかった。そして、明るい内に夕食を済ませる。

本来ならその後、小屋前の席で鷲羽岳の夕景を眺めながら持参の洋酒を楽しむつもりだったが、不調のため叶わず。折角素晴らしい眺めなのに、残念無念。また、日没後急速に気温も下がったので天幕内に退避した。

そして、19時半頃就寝。かなり早いが、明日も長時間の奥黒部周回行が待っている為である。ただ、疲労の割に眠れない。到着後はすぐ眠くなったが、辛抱して夕食などをこなしていると目がさえてしまった。まあ、前夜の車中泊同様、横になって静かに休むほかあるまい。


「奥黒部独錬行」2日目の記事はこちら

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会
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