2022年01月28日

奧比良雪行

深い雪に覆われる蛇谷ヶ峰南西尾根。2022年1月28日撮影

蔓防の市街避け
また近郊雪中へ


大寒過ぎの寒さが続く日々ながら、雪の画像、温暖ならぬ話題が続き恐縮だが、今日また友人に誘われ山へ行った。

場所は、隣県滋賀西部の比良山脈北西部。近年、所謂「奥比良」と呼ばれる場所で(昔はそんな呼び方はしなかった筈)、その山域で最も標高の高い蛇谷ヶ峰(じゃたにがみね。標高901m)であった。

隣県奥地とはいえ、我々京都左京区の住民なら、大原経由で北上すれば比較的近い場所。

存知の通り京都もオミクロン・コロナの流行により昨日から蔓防期間に逆戻り。前回同様行き場のない状況での体力づくり、鍛錬目的でもあった。

まあ、本来個人的には更に積雪や山体規模に勝る北陸の山や、山陰は大山等に小遠征したかったが、世情や諸々の事情により、お預けとなった。


上掲写真 深い雪に覆われる蛇谷ヶ峰南西尾根。雪のお蔭でルートではないこんな雪の尾根歩きも楽しめそうだが、雪庇の踏み抜き等には注意。


申し分ない雪に恵まれた朽木スキー場のゲレンデ。2022年1月28日撮影

朝、左京市街から車で北上し、大原を抜けて滋賀山間に入ってやがて旧朽木村域に入る。そこから比良山脈北西部を横断する入部谷林道という峠道を登り、写真の朽木スキー場に着いた。

ここの駐車場で車を停め、準備してゲレンデ脇から登山路にとりつく。駐車場の標高は既に440m。本来は麓近くから登りたかったが、ここ数日の好天で雪が無いことを考え、出発時から確り雪が載るここを選んだ。

登り始めに雪がないと、途中でワカン(輪かんじき)等を着脱せねばならず、面倒かつ余分な時間を費やす恐れがあったからである。

ところで、このスキー場。確か以前一旦廃業したような……。ところが今は比較的新しい施設や機材を擁していた。合併により朽木村から高島市に移管され、予算づけと共に改装復活したのであろうか。


朽木スキー場ゲレンデ脇から入る、雪の急斜の登山ルート。2022年1月28日撮影
さて、ゲレンデ脇を進み、その半ばから小さな谷に入り樹林の斜面を登る。積雪は申し分ないが、ここ暫くの高気温と踏み跡により雪が締まっていたため、急斜ながら難なく進めた。勿論、ワカン有ってこそ、ではある


小雪に霞む、比良山脈・蛇谷ヶ峰山頂北東の雪の尾根。2022年1月28日撮影
急斜を詰め尾根上に出ると、視界が悪くなってきた。というか、小雪が降り始めた。一応午前中に少し降る可能性があることを予報で知っていたので、気にせず進むが、気温がプラスの所為か、身が濡れ始めたのでハードシェル(防水上着)を着用した


小雪で視界が悪い蛇谷ヶ峰山頂と雪に埋もれる標識。2022年1月28日撮影
そして、山頂着。変わらず天候が悪く、ある筈の眺望も無し。また、少し風も出始めた。その所為で寒いのかと思えば、温度計が-5度程に。先程温度確認した尾根とは標高差は少ない筈だが、雪が寒気を連れてきたのか


小雪により殆ど視界が利かない蛇谷ヶ峰山頂。2022年1月28日撮影

荒天の頂から更に南へ

夏山と変わらぬ時間で山頂に着いたが、昼食には早く、また寒さで休息もとり難いため、更に縦走路を進んだ「滝谷ノ頭」という小頂まで行くことにした。

写真は蛇谷ヶ峰山頂付近から見た南縦走路方向。本来、方向の目安となる山脈本体は疎か、近くの地形すら判らない状態。スマートフォンアプリやGPSが無かった時代はルートロスが多発したであろう状況である。

とまれ、機器に頼らず、人に頼らず(踏み跡やテープ貼り等)、ただ磁針と地図を使い、確信を得つつ進む。これも鍛錬のうち。読図は語学と一緒で、常に行わないと鈍ってしまうのである。


蛇谷ヶ峰と滝谷ノ頭間に続く先行者の足跡ある雪の縦走路。2022年1月28日撮影
蛇谷ヶ峰山頂から変則的に支尾根を下り、主稜線の縦走路に出た。標高を下げた所為か、陽当たりに因るのか、積雪の割に雪が締まって歩き易かった。勿論、これも先行者の踏み跡及びワカンの効力が有っての話である


蛇谷ヶ峰と滝谷ノ頭間の稜線から見た、近江高島の平野と鴨川が成す白蛇のような眺め。2022年1月28日撮影

初耳・都市伝説?
蛇谷ヶ峰の新たな由来


主稜線を南下するうちに付近の視界が利き始めてきたことに気づく。いつの間にか、雪雲が去ったようである。

暫くして、友人が「白蛇が出た」と若干興奮気味に麓を撮影し始めた。それが、写真の景。確かに手前の雪原が逆さになった蛇の頭に見え、そこから上方は琵琶湖に向け蛇行する川(鴨川)がその胴体のようにも見える。

友人はこれが蛇谷ヶ峰の名の由来と聞いた旨を語ったが、個人的には初耳であった。本来同山の由来はその頂付近を源頭とする「蛇谷」とされており、その流れは蛇の頭に達する前に滝谷川という鴨川支流に合している。

もしこの由来が正しければ、蛇体を成す鴨川自体が蛇に由来する河川名とされる筈だが、聞いたことがない。確かに写真映えする光景だが、最近誰かが実しやかに語り始めた戯言・都市伝説のような気がしてならない。

近年、日本史学等で「わかり易いことには嘘がある」という戒めが発せられているが、これもその類か。

眼の前の風景に対して、どう感じ、何を言おうが自由だが、わかり易さ故に「事実化」し易いこうした「伝説」の安易な流布は、地域の文化や歴史の保全の為にも慎むべきだと思う。

特に影響力が大きな、自治体・企業の観光部署や山岳ガイド等が広めることを危惧する。

勿論「蛇谷ヶ峰に登ると蛇が見えて面白い」「夏の青蛇、冬の白蛇を観に行きたい」などと楽しむだけなら問題はない。むしろ、そこは地元の観光振興に役立ててもいいのかもしれない。

だが、そこから「これは蛇谷の神だ」とか、適当な由来を語る(騙る)などして、勝手な権威を付けしたがる輩が往々にして現れるのが、厄介といえよう(笑)。


蛇谷ヶ峰南にある雪に埋もれた滝谷ノ頭の山頂。2022年1月28日撮影
さて、縦走路を南へ進み、やがて滝谷ノ頭に到着。標高701mのなだらかな頂で、友人が標識を探すも無し。読図のみで特定したが、友人によるアプリ特定とも違いはなかった。元より地形図にないマイナーな山なので無い可能性がある。もしくは、背の低いものが雪に埋もれているのか。因みに、この山名は蛇谷ヶ峰と同じく、滝谷の源頭に当たるためとみられる


P1282609.jpg

粘り勝ちの好眺望

滝谷ノ頭は眺望がなく、風もあったので、蛇谷ヶ峰へ戻りつつ昼食場を探すが、結局天候が回復した山頂でとることとなった。

往復3km、高低差200mを経て戻ったが、見ての通り、嘘の様に眺望が回復しており、彼の「白蛇」の姿も難なく観られた。

先程テント泊装備の縦走者とすれ違ったのを最後に人と会わなかったので、著名な眺望が独占状態に。往路山頂に着いた際は何人かと遭遇したが、皆、荒天を悟り、早々に下山してしまった。

正に粘り勝ちか。少し進んで様子を見て正解であった。


蛇谷ヶ峰山頂から見た、頂部を雲に覆われる武奈ヶ岳。2022年1月28日撮影
蛇谷ヶ峰山頂から見た比良山脈最高峰・武奈ヶ岳(ぶながたけ。標高1214m。中央奥)。頂部が執拗に雲(吹雪?)に覆われていたが、このあと少し顔を出した。こちらも、眺望や休息を諦めた人が多かったであろう

蛇谷ヶ峰山頂にてゆっくり昼食を摂り、その後元来た道を下山した。そして下山後は麓の温泉で冷えた体を温め、京都市街へと帰還したのである。

今日もまた良き雪景色を楽しむことが出来た。友人他、諸々に感謝!

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会
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