
雪を求め、雪に阻まれる?
今日は友人と約束していた雪山日。
向かったのは京都市左京区北部に隣接する滋賀西部の比良山脈。当初は滋賀北部と福井若狭の境にある大御影山辺りを予定していたが、前日からの寒波と降雪で麓に辿り着くことすら困難に思われたため急遽変更した。
朝、京都市街から友人の車で出発するも、やはり、危惧通り市街地を抜け八瀬・大原の谷あいに入った途端に一面の雪景色となり、路上にも積雪を見る危うい状況となった。
乗せてもらった車は四駆に冬タイヤ装備なので、慎重に進めば問題なかったが、途中の峠や坂道で走行不能となった普通車やトラックによる小渋滞に遭遇し、所謂「雪中の立往生」の始まりを体験することとなった。
幸い停滞開始直後だったのでなんとか追い抜き脱出したが、こんな条件・場所での、備えを欠いた運転は、諸方危険なため止めてほしいと思った。
そんな状況のため、府県境の途中峠より更に北の標高の高い峠越えは断念し、比良山脈でも南端の、権現山辺りを目指すこととした。
なお、比良・権現山付近はこれまで多く紹介しているが、今回はいつもと異なり、比較的麓に雪の少ない東側から登ることとした。
上掲写真 麓にもかかわらず多くの雪に覆われる、比良山脈南端域の登山口付近。

麓から雪深い比良南端へ
峠や坂道での雪の混乱を越え、比良南麓に達する。
栗原という集落から林道に入ったが、普段雪が無いことが多い路上に20cm程の積雪があり、白い水路を舟で進むように車で雪を分けて進み、写真の登山口で下車した。
登山口からも、まだ林道は続くが、雪が深いため最初からワカン(輪かんじき)を履いて出発。

途中の砂防堤辺りまでと思った林道は、意外と長くそして高所まで続く。林道とはいえ、雪が深く前夜の新雪も載っているため体力負荷が高い。
ただ、先行者が一人あったため少しはマシか。しかし、その踏み跡にはワカン等の装着を見ず、かなりの苦行を強いられている様に思われた。
写真の如く、進む林道(右)には所々山肌に深く掘られた古道(左)が併走していた。最近適当に通されたと思われた林道は、どうやらこの古道を踏襲して造られたものであることが判明した。
即ち、林道が古道と重なる区間を主に、かなりの部分の古道が破壊されたのである。地域の交通・交流史を知る上で貴重な手がかりとなるものなので、これ以上の破壊は止めてほしい。

古道を踏襲した林道は結局山頂直下の急坂始点「ズコノバン(標高約726m)」という鞍部まで続いていた。写真はその手前辺りの、道が尾根を巻き進む場所。完全な厳冬期風情で、氷点下数度の温度に風も生じて寒い

ラッセル&吹雪の縦走路
ズコノバンからは高低差300m強の急登の尾根道を登り、権現山山頂(標高996m)に着いた。ここから主稜線をゆく山脈縦走路になるが、写真の通り天気が悪く、吹雪さえ観察できた。
今日の目標はこの先の稜線上の風雪退避地「小女郎ヶ池(こじょろがいけ)」だったので、アイゼン(靴底氷雪爪)やハードシェル(防風防水外套)を身に着け、とりあえず進むことに。

進むのはいいが、権現山から北の稜線上には全く踏み跡がなく、正に「ラッセル(深雪作路移動)」を強いられることに。強い風雪の彼方に、権現山と小女郎ヶ池の間にあるホッケ山(標高約1050m)が見えたが、恰も北海道の山を見るが如き光景であった

ホッケ山山頂縁には名物の雪庇、しかも、ここ最近見たことが無いような巨大なものがあった。山頂へ行くにはこの際を通るので、注意して進む

そしてホッケ山着。無雪期なら権現山から10分程で来れるのに深い雪の所為で40分もかかってしまった。風雪の彼方に見えるのは先程通過した権現山山頂(左奥)。しかし、風が強く、熱吸収の良い黒土に覆われたこの山頂には、やはり積雪は少なかった。雪庇形成との関係が興味深い。さて、同行者がこれ以上進めなくなったので、今日はここで引き返すことにした

霊仙山への寄り道下山
ホッケ山頂から元来た道を戻り、風雪を避けられる同山下の鞍部樹林にて昼食休憩をとり、下山を続ける。
終始天候が悪かったが、ズコノバン近くまで下ると、写真の様に晴れ間も見え始めた。そして同所からは元の道を下らず、右奥に聳える三角の山「霊仙山(標高750m)」を経て下山することにした。
一応、疲れ気味の友人の了解を確認したが、結構な登り返しとなりそうである。

霊仙山はズコノバンから続く稜線上にあったが、最後はやはりこの様な急登となった。しかも標高の割に雪が深く、倒木等もあって登坂に難儀した

そして霊仙山山頂着。ついでに登る程度かと思えば、意外と手強く、先月行った京都北山の地蔵杉山を想わせた。

霊仙山山頂では一寸の雲(またはガス)の晴れ間から琵琶湖と、そこに浮く世界希少の湖沼定住島「沖島(中央大小の島。両島は低地て連繋)」も見えた。友人はもっと開けた眺望を期待したが、まあ仕方なし……

比良山脈南端部の霊仙山山頂からみた、吹雪に覆われる権現山(左峰)とホッケ山(右峰)
最後はラッセル&雪の読図で
霊仙山山頂からは車を置いた登山口まで下る。ズコノバンから霊仙山までと同様、踏み跡はなく、またラッセルとなり、加えて微小な尾根を渡りゆくコース取りが難しい道となったため慎重に進んだ。
そして、読図通り、意図した位置の林道に下り、無事車まで帰れた。僅か一日の寒波再来で山や麓の様相が一変したのには驚いたが、有意義な山行・鍛錬をすることが出来たのである。
友人を始め、関係全てに感謝!