2022年03月03日

宇国被寇

ウクライナ国旗(Flag_of_Ukraine).jpg
インターネット・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「ウクライナの国旗」頁掲載の、ウクライナ政府規定の意匠・色により作成されたパブリックドメイン(著作権係争の生じない著作物)画像を縮小利用

まさかの欧州侵略戦勃発

このサイトでは異例な今日の画像は、ここ最近一気に日本及び世界で知名度を上げたウクライナ国旗。存知の通り、先月2月24日、ロシア軍による全面的奇襲侵攻を受けて防戦苦闘中の当事国である。

早くから大規模な露軍の国境集結と侵攻の危険が欧米諸国から警告されていたが、まさかの事態が起こってしまった。攻撃の言い分は両国の直接的問題ではない宇国東部のロシア系独立勢力の保護で、そして真の目的であろう同国の中立と非武装化(つまりNATO加盟封殺)が後付けされていた。

結果、ウクライナ全土の防衛施設にミサイルや航空機による先制攻撃がかけられ、三方位(進軍は主に四方面)からの地上軍進攻が始まるという、真の目的完遂をむき出しにした全面戦争となった。

全く以て酷い話である。

差し迫った問題ではない「危機」を理由に難癖をつけ、大軍を以て国毎ねじ伏せようとする、正に弱い者いじめで、さながら彼の旧ソ連の独裁者・スターリンが戦前フィンランドに仕掛けた冬戦争の如き暴挙である。

こんな前近代的国家悪が21世紀の欧州で具現化されるとは信じ難かった。しかし現実は冷酷で、開戦以降、破壊される施設や傷つく人々の話が連日報じられることとなった。

希望ある新生国家襲う悲劇

ソ連崩壊を機に悲願の独立を果たして以来、新しい国づくりに励んできたウクライナ。地中海とも繋がる黒海に面した好立地や豊かな農・鉱業資源に恵まれるも、度重なる政変等によりその道程は苦難の連続であった。

私はウクライナを訪れたことはないが、その昔、幾つかの旧ソ連系共和国には行ったことがある。

各地共通したソ連型の街並みが残るなか、どの国も経済等の多くの問題を抱えながら手探りで独自かつ新しい歩みを進めていた。

その進展は緩慢で現実は厳しく思われたが、それでも、暗いイデオロギーの重しが去った空の下、皆思いおもいに自由な暮しを楽しんでいた姿を目にし、希望を感じさせてもらったものである。

そんな国の一つで、怪しい親ロ政権を何度も国民自決で倒し、更に欧州の一員としての発展を目指していたウクライナに汚い干渉の暴力が襲い掛かった。結果、折角築いた皆の暮しが瞬時に滅茶苦茶にされてしまった。

断じて許し難い行為であり、只々悔しく、同国には衷心からの同情を禁じ得ない。

露見したプーチン・ロシアの陰謀

これも全てプーチン・ロシアの所為。ロシアでも反戦運動が起こり、同国全てが悪ではないので、責任主体の政権名としてこう呼ばせてもらう(勿論「一応の選挙」を経た政権なので国民全てに責任が無い訳ではない)。

しかし、当初は露軍の圧倒的武力により2日で決着がつくとされたこの侵略は、ゼレンスキー宇国大統領の下で団結した人々の懸命の抵抗で、1週間を経ても未だプーチンの勝ちをみていない。それどころか、早期終結していれば判らなかった事実が当事者ではない我々の目にも明らかになった。

その一つが、以前から報告されていたように、虚言や数々の陰謀実行である(そもそも侵攻直前まで「攻撃意図はない」と虚偽発信)。「ウクライナ東部の係争地に進駐する」と言いつつ全土を攻撃、「市民や一般施設は攻撃しない」と言いつつ無差別爆撃、要人暗殺や都市攪乱を狙うスパイや所属を隠した特殊部隊の投入、そしてサイバー攻撃である。

これらの嘘や陰謀はウクライナ各地から発信された映像を含む情報により確定された。侵攻前後の大規模なサイバー攻撃は、こうした陰謀露見を封じるために行われたと思われるが、幸いその意図は完遂されなかった。

全く以て汚い手段満載の、凡そ現代国家とは思えぬ野蛮手法である。さすがは元カーゲーヴェー(KGB)諜報員のプーチン。G7等の国際政治の表舞台に接近しつつ、裏で謀略の限りを尽くしていたのである。思えば、クリミアの併合や東部独立派の件も住民に扮した特殊部隊を送り込むなど、同じ手法がとられており、ウクライナの主張に分があったことが判明した。

暗殺に関しても彼のオレンジ革命の盟主・ユシチェンコ元宇国大統領のダイオキシン中毒事件への関与も濃厚であろうし、それどころか、ナワリヌイ氏等の国内反体制派に対する毒殺未遂事件への関与も疑いないであろう。正に旧ソ連さながらの政敵抹殺手法である。

これらは全てプーチンがロシアの国政を掌握した2000年から今に至るまでに起こった出来事である(それ以前の疑惑もあり)。そう考えると、当初はグルジア(現名ジョージア)が悪者にされた同国とロシアとの戦争(2008年)も、政治的背景や経緯が似ており(グルジアが国内独立派及びそれを支援するロシアと衝突)、プーチン政権の陰謀が濃厚となる。

サイバー攻撃についても、以前から欧米等に対するものが問題になっており、取締りを求めるも、白を切るばかりだったが、やはり相手国の情報を遮断・攪乱するための国家的犯罪・兵器であることが明白となった。

プーチンの最終目標

そして、それらの謀略を用いて達成されるべき、プーチン・ロシアの最終目標も露見した。それは、自国周辺の安全圏の構築と汎ロシア的民族(ロシア・白ロシア・ウクライナ)の統合である(プーチンはウクライナ東部の2地域に対する独立承認の際に、旧ソ連の共和国自治を批判し、ロシアとウクライナ等との領土同一を説く演説を行っている)。

その目的により、欧州最後の独裁者と呼ばれるルカシェンコが統治し、ロシア前衛地帯中央に位置するルカシェンコ・ベラルーシ(白ロシア)を生き永らえさせ、今前衛南部のウクライナの無力化を図っているのである。

そう考えると、次はロシア前衛北部に当たるバルト三国が危ない。

そして、最終的には前衛北端のフィンランドや、大油田とそのパイプラインがあり小アジアや中東との回廊となるグルジアとアゼルバイジャン、ロシア中央下部と長大な国境線で接するカザフスタン、シベリアの要衝イルクーツクと中国との緩衝地帯となるモンゴル等を押さえる筈である。

そういえば、2010年頃、フィンランドの隣国スウェーデンの友人が「近々ロシアが攻めてくるかもしれない」と話していたことを思い出した。

当時は他の友人共々杞憂に過ぎるのではないかと笑ったが、歴史的に周辺大国の動向に敏感な北欧ではプーチンの悪辣を見抜いていたのかもしれない。その後スウェーデンは一旦廃止していた徴兵制を復活させた。それには、友人が話した憂慮や、2014年のクリミア侵略が影響したとみられる。

北方領土交渉の無駄思い知る

今回の侵略で遂に馬脚を露したプーチン。

正に同様の利己的国土強大化を進めたスターリンの再来か(または自治否定なので旧ロシア皇帝の復活か)。思えば、プーチンの忠実な渉外担当ラブロフも、同じくスターリンに忠実だった旧ソ外相モロトフと似ている。

スターリン・モロトフコンビといえば、不可侵条約を破り、宣戦布告の連絡を妨害して満州・樺太等を奇襲し、結果20万人以上とされる邦人死亡者を生んだ惨事の首謀者である。ラブロフもまたプーチン同様、ウクライナ侵攻の前に世界を欺き、そして同じく核使用の脅しを発している。

こんな陰険侵略者コンビに対し、日本は長年多大な労力や費用をかけて北方領土交渉を行っていたのである。

私は当初から彼らが、大きな代償を得ずに島を返すつもりはないと確信していた。何故なら、交渉の度にラブロフが「四島占拠は大戦の結果であり、その事実を受け入れよ」と内外に発していたからである。

つまり「力で得たものは力でしか戻せない」という、日本側主張に対する明確な否定・拒否が一貫して主張されていたのである。

プーチンの「異常」と危険性
ウクライナに栄光あれ


しかし、この20年以上プーチン・ロシアが巧みに事を進めたにも関わらず、ここにきて全て露見させるとは稚拙を感じずにはいられない。彼らは今回の侵略で一線を越えたとされるが、更に核使用をほのめかして「二線」をも越すなどの粗雑ぶりも見せている。

予想外の長期戦や非難・制裁の嵐で焦っているのか。また、旧ロシア皇帝の金ぴか宮殿で長年ふんぞり返っているから勘違いでも起こし始めたか。

欧米の外交・軍事関係者らによると、近年プーチンの性格が変わり、精神異常の可能性も疑われているという。もしそれが本当なら、絶大な権限と大量の核兵器を握っているだけに大変危険な状況といえる。

だが、世界はこんな前時代的蛮行と妥協してはならない。安易な妥協が新たな侵略と被害を生むことはこれまでの歴史が証明済である。そして一刻も早くプーチンの野望が挫かれウクライナの状況が改善されますように。

コロナ等々で遠い極東に封じられ、実際的支援が出来ないのが至極悔しいが、この一文を以て細やかながら応援の意を表したい。どうか、現政体と共に、一人でも多くの人々が生きながらえますよう……。

ウクライナと自由に栄光あれ!

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 逍遥雑記
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