2022年03月12日

伊吹雪登

春めく麓の奥に聳える雪を戴く伊吹山。2022年3月12日撮影

今冬最後?の気になる雄峰行

先月2月の末辺りから、ここ京都市街でも昼の気温が15度を超える日が出てきたが、朝晩はまだ冬の寒さであった。

しかし、今月10日に17度という最高気温が現れると漸く最低気温も上昇し始めた。そして、今日はなんど9度超えという春日になった。最高気温の予報も20度超となっており、この先もその傾向が続くとされた。

遂に冬の瓦解が始まったようである。

勿論、近辺の山々での雪解けは既に始まっていたが、朝晩の低温に守られていた根雪が融け始めるという、積雪期(厳冬期)から残雪期への変化の潮目が感じられた。

故に今日は、今季連続して続けていた雪山行の締め括りとして、隣県滋賀の最高峰・伊吹山(標高1377m)に登ることにした。本来は北陸の山や山陰の大山等にも行きたかったが、コロナ再拡大等の関係で控えた。

そもそも伊吹山は長らく「気になっていた山」。

富士山同様、列車や高速路で東方との往復をする際に必ず目にする雄峰だが、無雪期を含め今まで行ったことがなかった(何故か富士とこの山の傍を通ると、どんな時間・状況でも気づくという、個人的に「強い気配を感じる山」)。故に、今日は初めての機会となったのである。


上掲写真 春めく麓の果てに聳える、雪の雄峰伊吹。帰路の車中より。


冬期ながら8時台で既に満車状態の伊吹登山口。2022年3月12日撮影

泥濘越え雪原へ

前夜借りた車にて朝出発し、約3時間弱で登山口前の駐車場に到着。節約のため下道で来たが、週末の朝の割に交通量が多かった。

また、噂通り駐車場も既に混んでいたが、ちょうど手前に1台分の空き(空いたばかり?)があったので、すぐ停めることが出来た。

まあ、登山口から離れれば他にもあるのだが、幸いであった。そして、準備して9時過ぎに駐車場奥の山林から山に入った。


伊吹登山口から1号目まで続く泥濘の道。2022年3月12日撮影
登山口からは、すぐに「悪名高い」泥の登山路が始まる。昔施された石敷きの道が荒れて水が滞留し、多くの場所で泥濘を成しているのである。滑って転倒しないよう、気をつけて進む


伊吹山登山路1合目にある旧伊吹山スキー場のゲレンデと雪。2022年3月12日撮影
山林内に続く泥濘の悪路を抜けると「1合目」の標識と共に、建屋ある開けた場所が現れた。旧伊吹山スキー場跡である。ここから雪が現れたが、山頂へのルートはこのゲレンデ跡に続くので、それを踏みつつ進む


旧伊吹山スキー場のゲレンデの雪上に続く伊吹山登山ルートの踏み跡。2022年3月12日撮影
ゲレンデ跡を登りゆくと程なくして一面の雪景色となった。積雪は50cm以上あるが、先行者が多いためその踏み跡をゆく限りはワカン(輪かんじき)やアイゼンは不要であった。しかし暑い。防寒グローブ(手袋)無しの素手でも可能なくらいで、Tシャツ1枚のみの登山者も幾人か見られた


旧伊吹山スキー場のゲレンデ上に現れた雪を戴く伊吹山頂と、そこへと向かう大勢の登山者。2022年3月12日撮影
何面かのゲレンデ跡を登り越えると漸く伊吹山頂の姿が現れた。それにしても人が多い。まるで春山のようである。さすがは著名人気の百名山・伊吹(私はこういう格付けに関心ないが)。冬でもこんなに人が多いのか。関西・中部・北陸の交点で交通至便なことも影響しているのだろうか


旧伊吹山スキー場のゲレンデから望遠撮影した、6合目から伊吹山頂まで点々と雪面に連なる登山者の姿。2022年3月12日撮影
山頂直下の登頂ルートを望遠撮影すると左下の6合目避難小屋から点々と雪面に連なる登山者の姿が見えた。やはり冬山にしては恐るべき人出である


伊吹山6合目避難小屋の脇から山頂へと続く、雪の登頂ルート。2022年3月12日撮影
そして6合目避難小屋着。これまでも傾斜が強い場所があったが、ここからは最も強い「核心部」となるので、アイゼン(靴底氷雪爪)を装着した


伊吹山6合目避難小屋の上に続く雪の急登。2022年3月12日撮影
6合目の小屋を出て急登に挑む。速度が落ちるためか人の密度も増す。ヘルメットにピッケル(斧頭雪杖)持ちの完全装備の人も多いが、チェーンアイゼン(滑止靴底鎖)に軽装という人も少なくない。大丈夫であろうか


伊吹山7合目付近の雪の急斜上から見た、下方や彼方の湖北平野と琵琶湖。2022年3月12日撮影

急斜只中にて

写真は6合目上の急斜(7合目?)から振り返って見た下方や彼方の湖北平野・琵琶湖(右上)。今日は基本曇り予報だったが、霞はあるものの何故か晴れたままであった。

ただ、ここまで高度を上げるとさすがに肌寒くなった。雪崩等に備えて上着(中間着)や防水グローブは付けていたので問題はないが、何故か倦怠や息切れ・腹痛が襲ってきた。

思えば3時間弱の車行と2時間の山行でまだ休憩をとっていなかったが(更に前夜睡眠4時間!)、その所為か。

これはまずい、急傾斜の只中なのに……。

これまで比較的快調であった進行速度は落ち、止まっては進むの繰り返しとなった。そして、一度踏み跡横の、僅かに傾斜が緩い場所に退避し、立ったまま数分休んだ。

すると体調がマシになり、また進むことが出来た。一時はどうなることかと思ったが、雪崩危険もあるため早く動けてよかった


伊吹山8合目付近の雪の急斜。2022年3月12日撮影
無理せず、しかし早く危険な急斜を脱すべく登坂を続け、やがて8合目辺りの最も急な場所に来た。先行者の姿(先頭)で判る通り、手をつく程の急斜である。今日は雪が緩んでいたのと踏み跡が段状になっていたのでストック(山杖)のまま進むことが出来たが、新雪や凍結の際は滑落防止のピッケル使用は必須に思われた


伊吹山8合目付近の雪の急斜。2022年3月12日撮影
仰角の画像では傾斜が判り難いが、断面的な横側を撮ってみるとその急斜ぶりがわかるか……(水準器搭載カメラにて)


なだらかな伊吹山山上の雪原。2022年3月12日撮影
やがて急斜を脱し山上へ。先程の険しさからは信じがたいが、伊吹山上はなだらかなテーブルランド(卓状地)となっており、山頂は緩やかな登りの先にあった。以前登った、同じく石灰岩質の鈴鹿山脈・御池岳に似るか


雪上にたつ伊吹山山頂の山頂標識と日本武尊像。2022年3月12日撮影
そして、程なくして山頂着。山頂標識(左)と伊吹山上の象徴的存在「日本武尊像」(右)が出迎え、それを証する。いずれも厳冬期は着雪・着氷してその姿が判り難くなるらしいが、今はプラス7度の気温のためこの通り。ただ、登坂時とは打って変わって風が物凄く、居られない寒さであった。なかなか丁度良い塩梅とはならないようである


伊吹山山頂から見た伊吹山地北方の雪山。2022年3月12日撮影
伊吹山頂からみた伊吹山地北方。左奥に滋賀県第2位の高さを誇る金糞岳(かなくそだけ。標高1317m)が微かに見えるが、何れもここ以上の冬山ぶりであった。まあ、有数の豪雪地帯なので当たり前ではあるが……


伊吹山山頂から見た南方は滋賀側山麓や鈴鹿山脈。2022年3月12日撮影
こちらは伊吹山頂からみた南方は滋賀側山麓や鈴鹿山脈。南北どちらも霞んでいるが、南の方が少々強めか


伊吹山山頂から見た南方は滋賀側山麓や鈴鹿山脈。2022年3月12日撮影

山上の休息

山上は広くなだらかで、長椅子などの設置もあったが強風により休めないので、登山者は皆冬季休業中の小屋の間にて昼食をとっていた。

私はせせこましい場所が嫌いなので別を探したが、無かったため、結局少し外れた建屋陰で昼食兼休息をとった。

屋根まで雪が迫るこれらの小屋は登山用というよりは遊山向け。実は、伊吹山には山頂裏までドライブウェイが通されているため無雪期には労せず遊びに来られる。

昔から気になりながら未踏だったのは、そういった遊園地的雰囲気を忌避したためである。よって、環境は厳しいが今回のように俗気がないのは本望であった。ただ、名物の稀少植物を見れないことは少々残念に思われた


伊吹山上から旧スキー場へと落ち込む急斜の雪面とそこを下る登山者。2022年3月12日撮影
伊吹山上から旧スキー場へと落ち込む急斜の雪面と慎重に下りゆく登山者

早く終えるも……

昼食後、すぐに下山を開始。

下りは6合目までの急斜でピッケルを使用したが雪質的にアイゼンがよく効き、安全かつ素早く下降出来た。ただ、陽射しと気温の所為か、最上部付近で小規模な雪崩発生を目撃したので、周囲への警戒に努めた。

そして、14時過ぎに駐車場着。休息を除くと4時間程の山行となり、途中難儀した割に早く終えることが出来た。麓の三之宮神社にも無事を謝す。

その後、神社前の洗い場にて最後の泥道で汚れた靴等を洗い、水分と栄養を補給して帰路に就いた。ところが……。

その先の至る所で渋滞に見舞われ、折角早く下山出来たのに結局18時頃の帰宅となった。まだ観光時期ではないが、急に暖かくなったので皆の外出が集中したからであろうか。

本来はこれを避けるためにも列車で行きたかったが、週末は登山口までのバスが無かったのである。

とまれ、山行及び苦手で慣れない車行を無事完了出来て何より。積雪期というより、雪質や気温条件的に既には残雪期の趣であったが、念願の伊吹登頂とその雪景堪能を果たせた。

また、飲水量の急増や体温調整の難しさなど、季節の変わり目特有の課題を改めて認識することも出来たのである。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会
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