
史上初の戦地演説
今日夕方18時よりウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン国会演説が行われた。
その意図と内容は、先月24日から始まったプーチン・ロシアによる同国侵略に対する日本の支援や加害側制裁に対する謝意表明と、支援継続及び反権威主義暴力への連帯を求めるものであった。
日本の憲政史上初とされる、外国元首による即時遠隔演説。しかも、近くは僅か15kmに敵が迫り、市中への爆撃が続く中での、約12分に及ぶ濃密かつ切実な訴えであった。
日本に先立ち、欧米やイスラエル等の国々でも同様の演説が行われたが、何れも肯定的な評価を得ていた。私は日本での開催打診の段階から気になっており、今日、衆院サイトの中継を視聴することにしたのである。
そして、今回の演説も、これまで同様、相手国に合わせた真摯で良く出来た内容が述べられ、無事の終了をみた。同時通訳の難しさに因り、一部判り難い箇所もあったが、概ね、その趣旨は理解出来たのである。
何より、一月近く切迫状況が続き、大統領自身もプーチンの放つ汚い暗殺の手をかわし続ける戦地から、直にその窮状を聞くことが出来て良かった。それは、声だけでなく氏の緊張や疲労の姿を見ることでも窺われた。
2019年の就任直後から内外の難題と共にコロナ禍に呑み込まれ、その後こんな大侵略に遭うとは、大統領の個人的状況としても同情を禁じ得ない。
最近では、そのゼレンスキー氏以下、政府や自治体、そして軍民の尽力により敵の停滞が伝えられているが、人的・物的被害は連日膨らんでおり、未だ予断許される状況ではない。どうか一刻も早くプーチン・ロシアとその一味の野望が頓挫し、ウクライナの国難が取り去られますよう……。
とまれ、今日の演説が前例を超えて実現し、無事完了したことを喜ばしく思う。そして、オンラインという、新しい「直接手段」による歴史的瞬間に立ち会え、これからの政治課題を再認識することが出来てよかった。
演説決定前には「紛争国一方のみに加担するな」や「国民に諮らず勝手なことをさせるな」等の門違いな反対もあったが、武力侵攻は明白な国際法違反で、国民の代表が集う国会で先にプーチンの侵略を認定し、非難決議をした上での実施のため、問題はあるまい。
何より、状況は一刻を争う。戦乱を少しでも早く終らせるため、弁舌という平和的手段を用いた抵抗を支援することは、現代日本の政治・外交方針とも合致して好ましい。ともかく、事態を好転させるため、ウクライナや他の協調国共々あらゆる方法を探り、実行せねばならない。
公敵退散、ウクライナと自由に栄光あれ!
衆議院による演説全文の仮翻訳はこちら。
上掲写真 衆議院議員会館・国際会議場のスクリーンに現れたゼレンスキー宇国大統領と、演説を待つ国会関係者。衆議院公式サイトの中継動画を筆者が画像変換・調整加工。因みに、今日の表題の「遠説」は誤字ではなく「遠隔演説」の略。即ち、全体で「宇国統領遠隔演説」の略となる。