
第42回日本盆栽大観展最終日
週明けの今日午前、少々展示鑑賞に出掛ける。
向かったのは、京都市街東部にある京都市勧業館「みやこめっせ」で今日まで行われている「日本盆栽大観展」。
毎年この時期に行われる恒例展示で、解説役の盆栽研究家・川崎仁美さんから招待を受けていた関係から私にとっても恒例行事的な展示であった。
上掲写真 日本盆栽大観展出展の受賞盆栽展示の一部。夜空に浮く朧月の画軸と合わせ、深山孤高の情景を成す秀作。

みやこめっせへの途中、東山山麓は「哲学の道(琵琶湖疏水分線)」の紅葉も視察。ここは午前に陽が入らないが、紅葉は見ての通り良い具合に

そして京都市勧業館「みやこめっせ」に到着。かの平安神宮の近くである

勧業館に入館し、みやこめっせ1階の第42回日本盆栽大観展会場へ。平日午前とあって、人は少なめ

先ずは、入口傍の個別ブースにある、大観展の大トリ的存在「内閣総理大臣賞」作品から

それは、盆栽の王道たる真柏による豪壮な作品であった。正に王者の貫禄

こちらは今時分らしい姿を誇る、鮮やかに紅葉した山紅葉(楓)作品

こちらは今日の表題写真作品。自然をよく知る人が、同じく自然をよく観察する人に提示したような交流的作品

こちらは柿の実のある作品。同様のものはよくみられるが、小さな鉢で高木の生命感を表現した技巧的力作。足下に自然な落葉があるのも、それを補うようで、良い

盆栽は自然の姿を写すことが目的の一つとされるが、この蝦夷松作品はその思想を濃厚に示す典型例といえよう。深山の小頂や森なかでこのような景と出会った記憶を持つ人は多かろう。斯いう私も、先日登った甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根上で遭遇した森を思い出した

盆栽以外の気になる展示
盆栽以外で今回特に気になったのは写真の水石(すいせき)。「白雲」と銘打たれた、瀬田川虎石という珍しい石材を用いた出展物である。非宝石鉱物ながら、大変美麗で、正に名石と呼ぶに相応しい物であった。
川崎さんから聞いたところ、水石は自然環境中で得ることが難しく、川底を掘削するなどの多大な労力と鑑識眼が必要という。

これも気になった展示物。古い盆栽鉢で、平安東福寺という陶工によるものだという。以前手がけた仕事の関係で、京焼をはじめ、古今東西の焼物にはある程度造詣があるが、その人物は未知であった。写真が残るので、近代以降の人らしいが、盆栽関係には著名な存在のようである。鮮やかで透明感がありながら沸え(にえ)がある青釉が独特で美しい。器胎造形や装飾意匠にも優れ、盆栽鉢に限らず、一流といえる作陶ぶりであった

鑑賞終り冬の気配きく
番外編からまた盆栽へ。先程の盆栽群と違い、写真のように背景が明るい色で簡素になったが、これは主要賞以外の入賞作のため。
それでも、写真作品の如く、絶妙な枝ぶりの優品がみられた。量感ある樹体に対し、根を見せず土から直立させる様にも技術の高さが窺われる。

こちらは石(珪化木?)に寄り添う皐月の作品。巨岩傍に自生する高木を想わせるような独創的盆栽。または生樹と化石を対比させる哲学的表現か
今回も盆栽等の諸作品を十分鑑賞し、観覧を終えた。折しも紅葉も終盤。今日で大観展が終ると程なく年末12月、いよいよ冬の始まりである。