2023年02月20日

雨水訪駿

三保の松原の浜から見た、夕陽を浴びる雪の富士山

馴染みなき地の名所へ

2月も下旬に入った20日の今日。海越しに富士山が見える地を訪れた。

二十四節気の「雨水」を過ぎた今らしい温暖のそこは、東海・静岡の名勝「三保の松原」であった。

これまでの人生で馴染み無いここに突如現れたのは、年末から続けていた知人支援の関係。無事難局の峠を越えたので、今回は逆に当地の名所を案内してもらうこととなったのである。


東海大学海洋科学博物館エントランス
三保の松原の前に連れて行ってもらったのは、この博物館。松原がある砂嘴というか半島の先端部分にある東海大学運営の「海洋科学博物館」で、所謂水族館であった。これはエントランス部分なのだが、屋根上にある施設名の幅広字体を含め、何か懐かしいというか見覚えある雰囲気である


東海大海洋科学博物館の海洋水槽
東海大海洋科学博物館の目玉的展示である「海洋水槽」。その大きさは幅10m四方・高さ6mで、アクリル張りでは日本最大という規模といい、約50種1000体以上の生物を飼育とのこと。水槽右上に写っているが、かの鮫も遊泳している。弱小の魚等とどうやって共生させているのであろうか


東海大海洋科学博物館の津波実験水槽での人口津波実演
こちらは個人的に気になった津波実験装置。屋外に設置されたもので、毎時人口津波を発生させて街の浸水や波の河川遡行等を実体的に見せる。写真は第一波のあと再び港湾に波が入るところ。昭和期に造られたものとしては先進的だが、もっと危機啓発を広めるものとして、後の被害軽減につながったなら、と複雑な気にもさせられた

実は水族館を含む一帯の施設は3月で廃止されるという。知人は、そのこともあり、急ぎ私を連れてきたが、こうした有益な施設は更に進化させて活用して欲しいと思った


東海大自然史博物館の山田守建築

古式建築の正体

海洋水槽や津波実験の他、多くの興味深い水族展示等を見たあと海洋博物館をあとにし、隣にある、写真の自然史博物館を訪れた。ここであることに気づく。この博物館建屋は何処かで見たものではないか。というか、日本では珍しい、古のゼツェション様式ではないか。

ここで一瞬日本の建築史を考えた。そうだ、日本モダニズム建築の旗手・山田守氏の作品に違いない。入場時に受付の女子に訊けば、正しく氏の設計との返答があった。ただ、前身施設の開館が1970年とのことなので60年代に没した氏の活動期と合わない。

また晩年に設計を済ませていたとしても、アーティストたる建築家が若年期の作風を再用するのかという疑問も生じた。真相はともあれ、受付女子によると3月の閉館と共に壊されるとのことなので、更なる衝撃を受けた。

惜しまれつつ戦後解体消失した氏の大正期の傑作「東京中央電信局」を想わせる建築なので、何とか残してほしい。きけば、同じ山田建築の水族館(入口での既視感の原因!)も惜しむ声に押され、暫く日を減らして継続することになったらしいが、ここも解体だけは避けてほしいと思った。


山田守建築のドーム天井の下に恐竜の大型骨格標本等が展示される、東海大自然史博物館上階
さて、自然史博物館の内部はこの様な具合に。主に恐竜等の古生物を紹介する施設となっていたが、上階の山田建築のドーム天井が大型骨格標本等の展示に良く合っていた


三保の松原の浜と松並木

雄々しくも残念?な並木

東海大の両博物館見学の後は、半島の先端から付け根側に戻り、いよいよ三保の松原を訪れた。

波が高い太平洋に面しているだけあり、去年行った天橋立より、土砂の盛り上がりが高く、雄々しく感じられた。昔削られ、海中に堆積した、西方は久能山の土砂が運ばれ形成されたらしいが、それでも、よく高波に削られないものだと感心した。


P2201298.jpg
三保の松原は松並木の樹勢が強く、大径木が多いのも橋立とは異なる点であった。環境的には厳しいが、土の厚み等で養分が得やすいのか。また、管理養生が行き届いている為か

ただ、少々残念なのが、周辺の市街化が進み、それとの境界が曖昧なところであった。海側から見るとそれらしく見えるが、陸側から見ると他の防風林と変わらない……という具合である。

知人によると、近年地元では「残念名所」と呼ばれているらしいが(笑)、そう言われるのも仕方ないようにも感じられた。まあ、それでも古代から知られた天下の名勝なので、今後も存続し、良くなってほしいと思った。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 紀行
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/190207992
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック