
驚きと不思議さに迎えられた目的地
今日午後から大阪東部の枚方まで行く。そこは、自宅がある京都市街から電車を使って40分程の距離。京都と大阪中心部との中程にある衛星都市といえば、馴染のない人にも理解頂けるであろうか。どこまでも家並が続くそんな衛星市の南方、「星ヶ丘」という駅の近くに、今日の目的地があった。
地名通り、駅からの坂道を上り、宅地の頂に現れたのは、「星ヶ丘洋裁学校」と書かれた古い門柱。そして、その奥には、土道と樹々に囲まれた、懐かしい板張りの建屋が連なっていた。恰も、数十年の昔に逆戻ったかのような、時が止まったような場所――。そんな、驚きと不思議さに迎えられることとなった此処こそ、本日の目的地であった。
加藤智哉「星は輝くリズム」展参観
周囲の都市景とは明らかに異質ではあるが、他にはないゆとりと解放感を擁すこの場所。だが、ここを訪れたのは、その特殊さを目的としたものではなかった。実は、友人の画家で、以前このサイトでも紹介した加藤智哉君が、ここで個展を開いていた。不意にこの不思議な場所に出向くこととなったのは、正にその参観の為だったのである。
だが、その個展は今日が最終日。会期が3週間あったにも拘らず、昨年同様の駆込みとなったのは、私の体調不良から。連休行った野営会直後に熱を出し、珍しく長患いしていた為である。実は、今日もまだ完全とはいえぬ状態であったが、幸い自宅からの交通の便が良かったことと、会場自体のユニークさを強調していた加藤君の勧誘により、何とか出掛けることにしたのであった。
上掲写真: 「星ヶ丘洋裁学校」の校舎入口に掲げられた展示場(ギャラリー)を示す木製銘板。

不意に、宅地化した丘上に現れた、存在感ある「星ヶ丘洋裁学校」の門柱

洋裁学校敷地内にある懐かしい板張り校舎と、そこを利用した展示室の入口部分。今もなお現役の学び舎というのも興味深い

入口から校舎に入ると、まだ廊下であったが、早速馴染の加藤作品が現れた。それにしても、内部も昔の風情を保っている

廊下から木製建具を潜り教室に入ると、一面の加藤ワールドが構築されていた。教室という、他では少ない大空間を利用出来た為、本人も、いつも以上に力を注げたようである

展示室最奥に飾られた大型作品と、小作品・小物たち。気さくで寛いだ雰囲気ながら、何処か祭壇めいた様子が、他所とは違う空気を造出する。今回の要所と見たが、さて如何

外窓側より展示室を眺める。展示室は間仕切りにより、大きく二分されている。こちらは、その広い方で、主室と思われる空間

こちらは廊下と接する、入口側の空間。奥に古い足踏みミシンを利用した記帳台がある
展示最終日、しかも閉場までの時間もあまり残されていない状況であったが、なんとか無事に観覧し、本人とも会うことが出来た。身体の状態によっては、途中で引き返すことも覚悟していたので、幸いであった。

豊かで稀少な丘上を去り帰着
この後、加藤君、そしてその作品たちと分かれ、校内の敷地を少々散策。そこが、多くの緑ある空隙に囲まれた、豊かで稀少な場所であることを確認できた。
写真は、敷地に隣接した墓地からの眺め。「星ヶ丘」という地名との関わりは不明だが、ここが丘上であることを実感できる、眺望ある場所であった。

そして、何とか京都市街に帰り着く。見上げる5月の夕空には、それに相応しい、潔い飛行機雲一筋……。
※5/16 作家より撮影とWEB掲載許可済。