
大陸行最終車行。寛ぐも問題が
夜中3時過ぎに到着した三門峡市から、ほぼ24時間後の同じく夜中4時前に乗り込んだ長距離列車。終点北京までの乗車であることと、そこが帰りの飛行機に乗る為だけの終着地であったこともあり、これまでの車行にはない寛ぎを得ることが出来た。朝は遅くまで寝台上にあり、その後は、昨日デパートで買ってもらった食品にて、車窓を眺めつつゆるりと食事を行うなどして過ごす。
しかし、まだ問題が残されていた。それは、飛行機の離陸時間に間に合うかどうか、ということである。搭乗機の離陸は本日16時5分。列車が定時である11時半に北京に着けば、問題なく間に合う時間であるが、列車は乗車時に既に30分の遅れを出していた。乗車約10時間、走行距離1000キロ弱の車行中に更に遅れが拡大すると、間に合わなくなる恐れがあったのである。
郊外の空港までは駅からタクシーを飛ばしても1時間はかかるので、14時までに到着しなければ搭乗は危い。友は三門峡から最大3時間40分の遅れを経験したというが、こうなればお手上げである。航空券の買い直しのみならず、今日でビザが切れる為、様々な厄介が生じる。思えば、列車の動きが鈍くなってきた。明らかに速度が落ち、時には駅でもないのに停車する。どうやら、以前聞いた通り、先進地路線への新幹線投入により、一般列車の遅延が恒常化しているようである。
昼に近づく程、北京に近づくほど、停車や徐行は頻繁になり始めた。寛いだ朝とは変わり、焦りと苛立ちが生じてきたが、こればかりはどうすることも出来ない。正に「俎板の上の鯉」であった。
上掲写真: 北京西駅行き特快車窓より見た、北京郊外の建設中高層住居。今この国の都市部で普遍的に見られる光景である。過熱する不動産投資とその高騰。「今買わないと将来家が買えなくなる」。先日聞いた若者たちの言葉がよみがえる。かつて、どこかでよく囁かれた危い「常識」――。泡沫の予感、危険に満ちた光景に感じられた。

到着予定時刻を大きくまわり、漸く現れた終着駅「北京西駅」の停車場と駅舎群
交通変化への懸念からすぐに空港へ
長らく焦燥を感じさせられた大陸行最後の車行は、結局昼過ぎに終了。途中3本の新幹線に先を譲ったが、何とか定刻から1時間半の遅れで済むことになった。離陸まであと3時間、一応時間的には安全圏に収まったのである。しかし、まだ安心することは出来なかった。
前回北京空港を利用したのは実に13年前。その間に行われたオリンピック等の影響により、市内の交通やその事情は大きく変化していた。故に、タクシーを飛ばしても予定どおり空港に着くか不明であった。もし、前回も懸念されていた渋滞が更に深刻化していたら、そこで間に合わなくなる可能性もある。よって、駅到着後、すぐにタクシーにて移動することに。本来は久々の北京市内を少しでも味わいたかったのであるが……。まあ、致し方あるまい。

一握の焦り抱えて乗り込んだタクシーであったが、意外と順調に進む。すぐに環状高速に入り、次いで空港線から郊外の空港を目指す。以前より通行量は増えているが、道が拡幅されたようなので、懸念された事態にはならなかった。途中、運転手から「どっちらの空港か?」と聞かれて戸惑ったが、国際線と国内線で下りるインターチェンジ違う、ということと判明。拡幅された新空港では、双方のターミナルが数kmも離れてしまったようである。
そして、意外なほどあっけなく空港着。真新しい巨大ターミナルの建屋と、余裕の対面を果たしたのであった。先ずはひと安心。天候もよく、もはや出国に対する懸念の発生はありえまい。
厳戒のODA新港。笑われつつヨーグルト干す
写真は空港内部。古びた地方駅舎を思わせた以前のものとは格段の違いを見せつける豪華・美麗さ。斬新かつ先進的なそのつくりは正に国際的・未来的といえよう。ただ、構内無線LANに誰でもアクセス出来ないことは、個人的に魅力を減じさせた(笑)。因みに、この首都空港一新。実はその費用のかなりの部分に日本の公金が使われている。外務省によると、その額300億円。政府開発援助、即ち「ODA」の有償資金協力である。双方の国共々、その国民(人民)には殆ど知らせていないようなので、ここに記す次第である。
しかし、テロを警戒してか、噂通りの警戒ぶりである。多くの警官が電動車を使ったりするなどして構内を隈なくを見回っている。また荷物や身体検査もこれまで経験した中で最も厳重なものであった。ここにて、昨日持たされたヨーグルト飲料を没収されそうに。好意を無にするには忍びないため係官の目前で飲み干すことに。そのような人間は初めてだったのか、うら若い美男係官は笑いまじりに上司の許可をとり、それを認めてくれた。

離陸。ありがとう、そしてさようなら
さて、やがて離陸の時間に。自動運転の軌道車輌に乗って搭乗口に。その後、場内バスにのり予定機へ。広大な空港只中に降り立ち、タラップをのぼる。振りかえれば、穏やかな秋風をおくる大陸の淡い夕景が広がっていた。
ありがとう、そしてさようなら。手強くもかけがえなき日々、愛すべき大陸の諸々よ……。
