
梅雨前に間に合わぬも塗会開催
梅雨入りに備え、拙宅玄関戸を修復塗装しようという個人的事情から生じた古色塗り体験会「塗会(ぬりかい)」。丁度、昨日6月8日に近畿での梅雨入りが宣言され、当初の意図としては間に合わなくなったが、幸い荒天にはならず、無事決行となった。
先ずは5人程が集まり、後に3人が加勢する予定だったが、直前の都合により2人開始に。加勢の3人は拙宅への道に悩み大幅に遅れることとなった。まあ、それでも元々狭い現場なので、程よい人数、有難い加勢となった。
先ずは築約80年の拙宅や伝統塗装について軽く解説を行い、早速作業を開始したのであった。
上掲写真: 日没辺りまで続いた古色塗り作業に従事するS君。芸大洋画科卒業らしく、初参加ながら大小の刷毛を使い分け手際良く進める(何故か大陸購入という人民帽姿だが。笑)。お疲れさん!

今回の「古色塗り」材料。左からベンガラ(弁柄・紅殻)、松煙(但し松ではなく羊骨を燃焼材とした代用品「アイボリーブラック〈ボーンブラック〉」)、そして煮亜麻仁油(ボイル油)である
町家や古民家の着色に古くから用いられる素材。有機溶剤や有毒乾燥剤を含まず、乾燥後の性質も優秀な自然由来塗料である。しかも、安価(調達先を工夫する必要があるが……)。但し、乾燥時間が長い為、近年は敬遠され、代用完成品塗料に取って代わられつつある。しかし、それらは性能優秀ではあるが、高価かつ外産蝋を添加している為、質感や色合いが異なる。
有意義な材料調達
さて、今回は茶色の塗料を作るので、赤顔料であるベンガラと黒顔料の松煙を調合する。煮亜麻仁油やベンガラは以前の集りで仕入れたものが残っていたが、松煙は殆どなかった為、開催前の午前に買いに行くこととなった。場所は左京区東南に隣接する山科は清水焼団地内にある「井上顔料店」。陶芸・建築関係御用達の専門店である。
原料情報や化学知識を交えて丁寧に商品解説してくれることで定評ある、そこのご店主に、いつもの様に色々と教えを頂き、無事購入。「今時、油溶きで塗装とは珍しおすな」と感心されつつの、有意義な調達であった。

ガラス養生処理を施した塗装前の拙宅玄関戸。即ち「ビフォア(before, 施工前)」画像である
樋(トユ・トイ)の不備に因る雨水の跳ねかえりを受けて下部の腰板(こしいた)を中心に傷みが見られる。腰板は、元は無垢板が使われていた筈だが、古い時代に合板に交換されている。そして、それもまた朽ちようとしていた。本来は交換を考慮しなければならない頃だが、一先ずは塗ってみることにした。

アイデア・マスキング
和気藹々と塗装開始
顔料を調合し、煮亜麻仁油を注入して忽ち塗料を完成させる。そして、塗装作業開始。マスキング(不塗装面保護)が面倒な格子下のガラス面に、折った古新聞を挿し込む、というアイデアを実行して手早く養生し、大胆に塗ってゆく。
少々粘度が高いが、ペンキなどと違って嫌な臭いも一切なく、一同和気藹々と作業する。時折、近所の人も何事かと話しかけたりもする(笑)。

伝統工法による塗装が完了した玄関格子戸(翌6月10日撮影)。即ち「アフター(after, 施工後)」画像。想定したよりかなり赤くなってしまったが……。まあ、今日のところはご愛嬌(笑)
難しい顔料調合。一応予定完了
途中、男女2人が仕事のため離脱、その後、男女3人で継続。1度目の塗料が無くなり再調合するが、微妙に色が合わない。そして、同じ回の塗料を塗っている最中にも色の変化が起きた。というより、全体的に想定以上に赤くなっている。研究不足、そして顔料調合の難しさを実感したのであった。
そして完成。変ではないが、何か可愛い玄関になってしまった。やはりこれは失敗と言えよう。「綺麗になって良かったね」との近所の声にも苦笑するばかり(笑)。仕方がない、一先ずはこれにて梅雨を乗り切り、また適当な時季に再塗装を考えよう。
因みに、日没過ぎにまで及んだ作業ではあったが、全てを終らせることは出来なかった。外面のみ、つまり片面のみの完成であった。一見大した面積ではないが、格子は面が多い(1本3面)為、時間がかかったのである。しかし、これは大方想定済のことであった。迫り来る雨や蚊の猛威に備えて外面を優先完成させることが、午後遅くから開催することとなった、今日の目標だったのである。
だが、この後予定していた手打ち蕎麦作りは中止となった。時間が押したのと、皆の手が、その作業に耐えられる状態ではなくなってしまった為である(笑)。これも、致し方あるまい。
今回の失敗を教訓として、近々また挑戦してみたいと思う。皆さんお疲れ様でした。ご協力有難う……。