2007年11月17日

比良山会U

比良山脈西北にある葛川地区の坊村集落より見た西側の丹波高地

晩秋の一日(いちじつ)、山会を行った。場所は前回の夏季山会に同じく、滋賀西部にある比良山塊。今回は一部の参加者の希望もあって、その最高峰である武奈ヶ岳(1214m)を目指すこととなった。本来なら、この時期の比良は既に紅葉も散り、雪も見え出す頃。しかし、今年は季節推移の遅れの為、未だ秋山風情が楽しめそうな気色であった。

折しも、気候が冬型に入るとの予報が出た直前。早朝からの快晴にも迎えられて、絶好の山日和(やまびより)山行を始めることとなった。


上掲写真 比良西北にある葛川(かつらがわ)地区「坊村(ぼうむら)」集落より丹波高地(西)を撮る。坊村は比良登山の拠点。天台修験の名刹「葛川明王院」の所在地で、いにしえ京と若狭を結んだ「大原北陸道」沿いにある。安曇川上流、丹波高地と比良山塊の谷あいにある坊村の朝は遅い。写真は9時頃であるが、未だ集落に陽は入らない。その為か、気温1度の寒さであった。


市街から比良西麓へ。<坊村 ― 武奈ヶ岳>

山肌に積るブナや楓の落葉が美しい武奈ヶ岳西南稜ルートの自然林

前回に同じく、出町柳駅7:45発の京都バスに乗り、山あいを縫う旧大原北陸道(R367)を北上した。シーズンの為か、バス乗場は多くのハイカーで賑わっていた。その為、我々が乗車する便も1便増便されたのである。そしてその増便車に乗り、その終着地となった「坊村」集落にて下車した。所用時間は1時間強。つまり、前回下車した「平」から更に北上した位置に着いたのである。

途中、山間をゆく車窓から外の温度標示をみて驚いた。気温2度の表示が出ていたからである。確か市街ではさほど寒さを感じなかった筈…。始めはその故障を疑ったが、次の標示も同様であった。そういえば、遠近(おちこち)に霜が降りている。而して、到着地坊村の標示は更に進んだ1度であった。バスから降りる人々は次々にその寒さに声を上げる。やはり標示は正確だったようである。これも油断ならぬ山事情の一つであろう。

寒さの中、バス停付近に集まって準備する。今回の参加者は前回参加したM氏とKに、友人のTちゃん(男)とY夫妻の計6名であった。前回参加し、今回もその予定であったY氏は、残念ながら直前に不可能となった。その他、4、5人が惜しくも不可能となったが、これらの人々には次の機会でのご同行を期待したい。

さて、準備を整え早速本日の目標、武奈ヶ岳を目指した。コースは明王院の脇から尾根に出て縦走する「西南稜ルート」。幾度も武奈の頂を踏ませて貰っている私も初めてのコースである。


上掲写真 武奈ヶ岳西南稜ルートで遭遇した自然林地帯。山肌に積るブナや楓の落葉が美しい。稜線に近い、かなり標高の高い場所で、正に静かなる奥山の風情であった。


西南稜ルートの果てに聳える冬枯れ風情の武奈ヶ岳

山裾から続く植林帯の九十九(つづら)の道をゆき尾根道を目指す。急登に難儀する登山初体験のY夫妻を庇いながらの前進である。延々と続く急登には口数を下げるも、前回参加組は温度負荷がない為か、少々余裕の気色も見られた。

幾度かの休息をとりつつやがて尾根筋に出、緩やかに高度を上げてゆく。そして現れたのが、写真にある武奈ヶ岳である。漸く、かつ突如現れた、蒼空に屹立するその姿に皆感慨しきり。しかし、山頂位置確認の為に出された指は、皆自分の期待を映してか、手前側の嶺を指すことしきり。残念賞、山頂は最奥の嶺である。西南稜ルートは高低差は勿論、距離も長いのである。

まあ、それでもここまで来たらあと僅かである。手前の長い尾根道を進み30分弱であろうか。


比良山脈の雄大な山景を背にして西南稜最後の登坂に挑む参加者
雄大な山景を背にして西南稜最後の登坂に挑む参加者。前掲写真で山頂直下に見える三角形の枯草地帯である。


武奈ヶ岳山頂から見た冬枯れ風情の比良山脈

そして正午、遂に山頂に到着した。坊村からの所用時間は約2時間半。登山地図等にも記載されている標準的所用時間で、予想していたより早くに到達出来た。めでたい限りである。

写真は山頂からの眺め。さすがに中腹等とは違い、既に冬枯れの風情となっている。しかし、天気がいいので山頂は実に多くの人で賑わっている。折しも時は昼時。皆それぞれのグループ毎に集まって昼食を楽しんでいる。その中には、ガスストーブ(携帯調理器具)を持参して煮物や麺類を調理しているグループもある。Y夫妻とM氏、その香に当てられ羨ましがることしきり。


武奈ヶ岳山頂から見た京都市左京区久多方面の丹波高地の紅葉
色づく丹波高地。山頂から久多(くた。左京区最北部)方面を撮影

山頂にて食事後、暫くは皆で寛ぐつもりであったが、俄に風が出て寒くなってきたので、先へ進むことにした。坊村からのバス便が使い難い為、距離はあるが湖西側へ降りるコースをとる。


奥山の魚と、環境回復事業の進展を目撃。<武奈ヶ岳 ― 八雲ヶ原>

武奈ヶ岳下山中の標高1000m以上の沢で遭遇した渓流魚

来た道を少し戻り、西への分岐に入って高度を下げる。森中をゆくルートだが、所々足場が悪く難儀する。写真はその途中で目撃した渓流魚。アマゴだと思うのだがよく判らない。ただパーマーク(体側斑紋)が殆どなかったことだけは確かである。体長は10数センチ程であろうか。沢の源頭に近い標高1000m以上の場所にいたのには驚いた。確かこの沢の下流は魚止めになる滝が幾つかある筈である。まして冬季は沢ごと雪で埋まってしまう地帯でもある。それにしても、シャッタースピードが遅かった為、被写体ブレしたのは残念であった。ともかく、水生動物好きのTちゃんが興奮することしきり。


旧比良山スキー場のゲレンデ跡に広がるススキ野原をゆく山会参加者
現れた一面のススキ野原をゆく参加者。陽を浴びて枯野輝く様は、正に森が纏う金帯の風情。実は、ここは3年前に営業を停止した比良山スキー場のゲレンデ跡。未だその痕跡は明瞭だが、やがて元の森へと還っていくのであろう。


旧比良山スキー場廃止後に原状回復された八雲ヶ原湿原北部と木橋

ここも旧スキー場跡。山中の大きな平坦地で、往時は食堂やトイレ等の建物があったが今は全て取り払われていた。しかし、最も驚いたのは、板橋架かるこの池の存在であった。実はスキー場営業当時にはなかったものであるが、自然公園法の原状回復義務によって回復されたらしい。即ち、スキー場以前にあった湿地を復原したものだったのである。この平坦地には隣接して「八雲ヶ原」と呼ばれる自然湿地が存在するが、平坦地はこの半分程を埋めてなされたものだったのである。

八雲ヶ原は氷期より続く高層湿地で、希少植物の自生地として国定公園に於ける特別保護区域に指定されている。どうしてその様な場所が、レジャー施設建設の為に破壊を受けたのか理解に苦しむ所もあるが、ともかく、こうして復原されるようになったのは喜ばしい限りである。実現に尽力された関係各位の労に敬意を表し、この様な破壊が2度と起こらないことを願う次第である。


急峻な山肌を下り帰還。<北比良峠 ― 比良駅>

旧比良ロープウェイ「山上駅」跡(北比良峠)から見た琵琶湖と近江舞子雄松浜辺りの湖西平野

八雲ヶ原から少し登坂し、旧比良ロープウェイ「山上駅」跡(北比良峠)に到着して小休止した。ここも全てが取り払われており、その徹底ぶりには感心させられた。確か、駅は鉄筋コンクリートで作られた頑強で大型のものだった筈である。休息中、Y夫妻の夫人側であるYちゃんが、足元の折れ枝に守られた(囲われた)植物が苗木であることに気づいた。良く見れば、施設跡とその広場に無数のそれがある。これも、土砂流出を防ぎ、原状回復を促進する処置であろう。

比良に於ける環境回復事業の進展を見、湖西への最後の下りに入る。写真眼下に見えるのが、湖西平野と琵琶湖である。因みに中央の内湖付近が、9月に水浴に行った近江舞子(雄松浜)。しかし見ての通りの急峻である。これからこの山肌を一気に下るのである。実はこの地点の標高は未だ1000m近い。このことは敢えて伏せ、皆さんにはもうひと踏ん張りして頂くことにした。


大山口登山口の河原に無事下山した山会参加者

森中のルートを下りに下って「大山口」と呼ばれる登山口に出た。足場が悪く、急傾斜も多かったので、人によってはかなり辛いルートであったが、辛抱してくれたお蔭で無事下山出来た。写真はその直後の様子で、時間は16時過ぎ。これより先は車道を下る。従来はこの少し下方から駅行のバスが利用出来たが、スキー場閉鎖と共に廃止となったので歩いて駅までゆく。

そして、すっかり陽が落ちた頃、比良駅に辿り着き、京都市街へ帰還したのであった。今回は私の体調の関係等で打上げは行わなかった。些細な不注意に因る番狂わせを陳謝したい。また、交通機関の都合に因るコース選定とはいえ、かなりハードな行程となったことも併せてお詫びするところである。まあ、それでも皆さんからは楽しんだ旨の言葉を頂けたので幸いであった。ともかく今日は歩いた。その距離は15キロ以上かと思われる。最大高低差は900m。下りも入れると実に1100m以上の高低差を自力で移動したこととなる。皆さん本当にお疲れ様でした。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/7359542
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック