二輪のまち京都昨今、京都はよく自転車のまちと称される。
市街主要部の大半が平坦で、その規模も過大ではない為、自転車の利用に適しているからである。
しかし、そこにもう一つ加えたいことがある。
それは、自転車だけでなく、他の二輪、即ちバイクのまちということである。化石燃料は使うが、小型車なら四輪に比べて排気量が格段に小さく、それでいて市街全域を苦も無く走破出来るからである。
特に旧市街的な街の中心部等は、道が狭いにも拘わらず交通量が多く、恒常的な渋滞を生じさせている。本来は便利な筈の四輪車も忽ちこれに絡めとられ、身動きもままならない。
因って、その合間を抜けることが出来、駐車場所にも然程困らない二輪は、京都では、ほぼ最速・最至便の交通手段となる。
為に、それを愛用する人は多く、私もその一人であった。
「頼みの綱」壊れるしかし、言わずと知れたその弱点は天候である。雨風は無論、夏の暑さや冬の寒さがその乗車を難儀にした。特に今頃の寒さはライダーをして最も運転から遠ざけるに十分な理由を成している。
だが、私は比較的その難儀を思わず利用を続けていた。それは、ハンドル部分にヒーターを仕込んでいたからである。即ち「グリップヒーター」という装置である。
毎年冬になる度に人から気の毒がられたり感心されたりしていたが、実は反則技を用いていたのであった(笑)。
ところが、先日の最も寒い晩にその故障が判明した。
厚手のグローブをしていたが、かじかむ寒さである。普段のヒーターの有難さを痛感したのは言うまでもない。ということで、暇をみて、その修理を行うこととなった。
上掲写真: グリップヒーター故障の原因として真っ先に疑われたスイッチ部。非防水だったので、雨水侵入による接触不良を疑い、新しいものに交換し、更に今後の対策として防水カバーまで取り付けた。

交換されたスイッチと、溶けた端部が適当に繕われたケース
最初の2作業先ずは先週末に最初の作業を行う。スイッチの入り切りで改善されることもあったので、その接触不良を疑い、取り外して接点復活剤等で対処したのである。しかし、その安易な姿勢が良くなかった。
一度は改善がみられたかと思われたが、結局また不具合発生。よって、後日スイッチ自体を交換することとした。元々密閉型で接点の清掃が困難なタイプだった為である。
しかし、それも効果なし。それどころか、横着して養生をせず、半田ごての熱でスイッチケースの端を溶かす二次災害まで起こしてしまった。
原因判明ここで漸く真面目に原因探求。ハンドルグリップに巻くヒーター部を取り外して抵抗値を測定すると、不安定な値から無限大までの振幅が現れた。
断線である――。
当然、最も起こり得ることとして考えてはいたが、取り外し等が面倒なのと、思い込みにより、後回しにしてしまった。この様に、物の修理は往々にして裏目となることが多い。それを知りつつ、楽をしようとするのは、やはり自家用故の気の緩みか。
電線を確認すると、その中途ではなく、ヒーター根元の半田付け部分での疲労断線であった。脆そうに見えた細い線は意外にも丈夫なものが採用されており、それ故に接続部にストレスがかかったのであろう。
半田が付かず早速電線を外し、端部処理をやり直して溶接したが、何故か付きが悪い。
半田ごての熱が足りないのだろうと思い、時間をかければ何とか付いたが、今度は熱でヒーターカバーの一部に穴が開いてしまった。これもまた、ヒーターを引き出して作業しなかった横着故の二次災害である。
それでも、何とか防水処理をして作業を完了させた。しかし、はじめは効いていた温熱もすぐに生じなくなった。そこで漸く気が付いた。
ヒーターからそのまま延長された接点の素材が、銅ではなく半田の付きにくいものではないか……。良く考えればヒーターは抵抗器の一種なので、抵抗値が低くく、耐久性もない銅箔が使われる訳がない。
これも、ヒーターの表面がプリント基板同様の銅色で覆われていた為の思い込みであった。
いやはや恥ずかしい限り。久方ぶりの半田づけなので、少々感が鈍っていたようである。

難物半田の救世主「ステンレス用半田セット」
また不具合出るも直ぐ対処そして今日。難物の半田付けを可能にする材料を市街中心部まで買い出しに行き、漸く再修理。
銅箔や純金端子に施すより作業性は悪いが、目論み通り確かな半田付け叶い、修理が成ったのである。
しかし、仮組して試験するも、全く温熱が生じず。抵抗値の計測では間違いなく補修出来ているのだが……。だが、感が戻った今回はすぐに原因を悟る。即ち、反対側のヒーターの異常である。
そこでこれまで不具合がなかった右側のヒーターを点検すると、案の定、同様の断線が生じていた。そもそも同じタイミングで症状が進み、紙一重のところで左が先に切れたようである。

フィルム型ヒーター接点への半田付け。この銅箔色に騙された(笑)

無事補修されて二輪に取り付けられたグリップヒーター
冬乗りの楽しみに役立てば横着をせず、そして落ち着いて順を追って調査していれば、この様な数次に渡る工事にならずに済んだ。何事も「急がば回れ」である。
とまれ、これでまた冬の二輪乗車が楽しみになったのである。
本来、今回の小補修なぞは「手工」分類に入れて紹介する程のものでもなかったが、ネットにもヒーターの半田付けに関する情報が少なかったので、敢えて記事化することとした。
冬乗りの楽しみを知るライダー諸氏のお役に立てれば幸いである。