2024年05月11日
2024山茶手工
復活
黄金週間が終り(半ば仕事だったが)、次の行事の合間となる今週末。鍛錬がてら、以前採取した京都東山の野生茶の具合を見に行くことにした。
このサイトでも紹介した通り、最初期に伝来した古代品種の可能性があるそれは、昨年自生地が施工で荒れて以降採取が叶わなくなっていたが、冬に視察した際、僅かに残存しているのを発見していた。
そして、今日現場を覗くと、写真の通り――。
茶樹特有の、鮮やかなな新緑の芽をすっと立てた姿があったのである。しかも、冬確認した時より多くのものを。
元より、灌木なのである程度の荒廃には強いと思っていたが、予想外の残存ぶりであった。少々安堵の心地にさせられた。
風薫る5月の山上から見た京都市街
折角なので少々新茶葉を摘み下山した。とはいえ、摘んだ時から製茶作業の開始となり、途中で止められないので、帰宅後早速始める。先ずは、縁側に葉を広げ風に当てて水分を飛ばし、香りを高める萎凋作業から。夕方から外出する用があったが、さて間に合うか……
まだ巻き尖った先端の新芽を中心とした「一芯二葉」の姿。新茶葉摘みの基本形である
2時間くらいの萎凋作業後にいよいよ製茶本番に。簡易、及び時短法として今回もレンジ蒸し・乾燥法で行った
そして、1時間程して新茶の出来上がり。相変わらず色が良くないが、風味は新茶そのものであった。ただ、今回は以前より短時間での抽出が叶う。揉み作業をしっかりした所為か。1年のブランクがあったが、僅かながら進歩した気にさせられた
さて、その後の用は……。見事遅れて不興を買ったのである(笑)。
2022年11月25日
表皮手工
久々の手工
今日は時間があったので久々の手作り作業を……。
それは、自転車のグリップやサドル等の表皮交換であった。愛用の自転車は高級車や著名ブランド車でもないが、購入当初の装備・外見に少し不満があったため、自分で革を貼るなどしていた。
だが、その素材は有り難い頂き物ではあったが、合皮で手触りや色味に少々不満があった。その為、それが古くなったこの機会に、貼替を行うことにしたのである。
ただ、その為には新たな革が必要だが、素材としての本革は高く、既製品のグリップやサドルの費用を超す程だったので、躊躇していた。
ところが、先日ハンドメイド関連の総合店で、良い端切れ革のセットが安価で手に入ったため、作業の機会を窺えるようになった。
上掲写真 貼替用に用意した、自転車のグリップやスタンド用の本革表皮ならびに、それを貼り込んだサドル。
貼替前の下準備に、縫穴あけとコバ塗り(端面保護の塗装)を施した、自転車グリップ表皮用の本革素材
サドル革は形状・大きさにあわせ、「包める」「引っ張れる」ことを考慮して裁断。裁断後の素材そのものの写真は撮り損ねたため貼り込み後の画像のみだが、ご容赦を。なお、本来は厚さ1mm以下の革なら皴なく綺麗に張ることが出来たが、今回入手出来たのは2mm近いものだったため、なるべく綺麗な皴を作りつつ余分をまとめるという手法を採った。そのため革を伸ばして「張る」というより、革を「貼って」タッカーで端を固定するという方式になった。ポイントは下地表皮(オリジナル素材には手をつけぬ方針により残存)に貼った両面テープを利用して(本来は接着剤が良いがこれもオリジナル保存のため)なるべく皴なく革を貼ることであった
本革表皮素材を用意したあと、このようにグリップやスタンドに貼り、先に蝋引きした革用の亜麻糸で交互縫い(クロスステッチ)して装着した
グリップも形状が複雑で、採寸や裁断に時間がかかったが、この様に一本縫いすることで美麗に仕上げることが出来た。合皮の時はグリップエンド(端面)も覆っていたが、縫製が複雑になり綺麗に仕上げることが困難だった。色々悩んだ末の最もシンプルな方策だったが、予想以上に良い結果が得られた。因みにそのヒントを得たのは鉈や包丁の柄の包み革であった
サドルは再度両面テープを増して上面の皴をとり、このように仕上げた。革の厚みがあるため、どうしても前後に余り皮が生じるが、なるべく美麗にまとめることで、然程気にならない程度にはなった。元より厚みがあるので耐久性には優れる筈である
使用時や折り畳み時に部品接触で傷がつくのを防ぐスタンド表皮もこの通り。同じく交互縫いで装着したが、実際の使用時は当然縫い目は裏に回す
革細工の楽しみや効果再確認
本革表皮装着後、防水スプレーを塗布し(素材革は油を含侵させたオイルレザー・サドルレザーなので、元々ある程度の耐水性あり)、懸案の自転車各部の表皮替えは終了。
やはり合皮より手触りが格段に良く、見た目も良くなった。車体色との関係から、本来はもう少し焦茶ぽい色でも良かったが、それはまた次回にそんな色味の革が入手出来た時の楽しみに……。
今回の革細工。自転車に限らず色々と応用が利く手軽な手工なので皆さんにも是非推奨したい。自身としても久々の実践となったが、実は昔からナイフやカメラのケース、筆箱等を自作してきた。今回の作業で革細工の手軽さとその効果の大きさや楽しみを再確認することが出来たのであった。
2022年05月27日
2022山茶手工後記
製茶より適す?
山会(やまかい)等の「会」の類にはしなかったが、去る5月22日(日曜)に知人と共にまた野生茶(山茶)の新茶摘みに裏山へ行っていた。
その際は、同行者に教えがてら、茶葉をこれまでより良く揉んで味の抽出を増そうと試みたが、明らかな向上を得ることは出来なかった。
あと試せることは、殺青(さっせい。色止め)を簡易法の電子レンジ蒸しではなく、真面目に蒸し器を使うことくらいか……。また、そもそも今の茶とは遠く品種が隔たっている可能性も改めて考えさせられた。
そんな、少々諦め気分のなか、食用として冷蔵庫に保存した茶葉がまだ残っていることを思い出した。そこで、思い切って、これまで経験のない方法で、調理することにした。
それが、写真の揚物。所謂「茶の葉の天麩羅」である。調理といっても、作り方は至って簡単で、水溶き小麦粉に、軽く水洗いした「一芯二葉(一針二葉)」の新茶葉を浸け、180度の米油でさっと揚げただけであった。
あっという間に出来上がった山の新茶天麩羅。揚げている時から良い茶の香りが漂う。これに粗塩を塗しただけで食したが、結果は期待通りの美味。茶の味が立つというより、コシアブラ等の山菜を食べているような感覚で、新芽ならではの鋭さ・力を感じられた。うーん、製茶するより余すことなく味わい尽せる、この方法が最適かもしれない、とすら感じた(笑)。
ついでながら、他の新茶葉調理も紹介。同じく日曜採取した山茶葉を練り込んだ「べた焼き(一銭焼)」である。先日の作で、新玉葱や南瓜も入っており、本来はかき揚げを意図したが、油を切らしていたため仕方なく粉を増し鉄板調理した。こちらも、調理中に良い茶の香りがしたが、食味としては粉に封じられた感じだったので、やはり揚物が適すように感じた
2022年05月15日
続2022山茶手工
「釜炒り」にて再び山茶作り
先月末に試みた裏山の野生茶「山茶」による手作り新茶。
煎じた際に味の抽出に時間がかかる等の課題が残ったが、研究を深めるため、今日また奥山に出向いて採取し、再挑戦することにした。
但し、今日はこれまで行った電子レンジ殺青法を含む日本茶に一般的な「蒸し製法(殺青・さっせい。色止め工程)」ではなく、九州山地等で山茶に対して行われる「釜炒り(釜煎り)」製法を試すこととした。
釜煎り法とは即ち、龍井茶等の中国緑茶と同じ大陸式の古式製法で、前回同様、少し萎凋させた新茶葉を写真のように鉄鍋(釜)に入れて加熱(火入れ)するものであった。
釜炒りの方法は至って簡単で、鉄鍋で加熱して殺青し、その後、蒸し製茶同様、手揉みしてまた鍋で加熱することを繰り返し、乾燥茶葉にする
そして出来上がった釜炒り煎茶(新茶)。温度が高い分、蒸し法と比べ香りが増したが、残念ながら、抽出時間の問題は改善されなかった
比較のため、釜炒りのみではなく、他の製法も試す。計3種で、左から「釜炒り」「レンジ製茶」「レンジ殺青後釜炒り」の各煎茶である。しかし、何れも抽出時間や味に大きな違いは出なかった。うーん、中々難しい……
2022年04月30日
2022山茶手工
一番山茶再び
今年の4月も愈々(いよいよ)今日で終り。
明日から5月に入るが、5月初旬といえば、「夏も近づく八十八夜」。存知の通り、芽吹いた茶葉を摘み、新茶を製す頃である。それは、立春から88日目を言うので、今年は5月2日となる。
折角なので、今年も昨年同様、裏山奥の野生茶「山茶」を摘み、研究がてら製茶してみようと思った。
とはいえ、八十八夜には未だ数日足らず、更に高地の冷涼で成長が遅い山の茶。事実、昨年も5月中旬に新茶葉の芽吹きを確認した。
ただ、今年は4月の気温が高く、平地の茶樹の芽吹きもかなり早くに観察出来たので、今日行ってみることにした。
果たしてその結果は……。
上掲写真 京都東山の奥地で密かに芽吹く新茶葉。先端の巻き葉を一芯(針)として、下に二葉が開く、所謂「一芯二葉」の一番茶を、暑い程の春の陽に晒す。
急登を進み、藪を分けて山中の茶樹に達すると、目論見通り新茶が芽吹いていた。そして、山の気を味わいつつゆるりと茶葉を摘むこと約1時間。中判のコンビニ袋にそこそこ収まる、250g程の生葉を得て下山した。
今年は持ち帰りの際の蒸れに注意し、袋の口を開け、直射光も当たらぬよう、ザック(登山背嚢)に収める形で運んだ。写真は、持ち帰った茶葉からゴミや不良葉を取り除くために新聞上に出したところ。
選別の次は茶葉を広げて少し萎れさせる「萎凋」作業に入る。縁側に置いた新聞紙に茶葉を広げ、1時間以上、日陰の気に晒すのである
そして萎凋後は昨年と同じく、電子レンジを用いる簡易製茶の準備のため、容器に吸水紙を敷き、生茶葉を入れラップをかける。その後、電子レンジに入れ3分程加熱する
電子レンジでの加熱後は容器内で茶葉が蒸れ、この様な状態になる。製茶行程でいう「殺青(さっせい)」という作業の完了で、これにて茶葉の色止めを終える。つまり、「緑茶」を作る上での重要な行程となる
殺青後は、紙に余分な水分を吸わせ、その後、笊(本来は茣蓙)上で茶葉を軽く揉む。笊の目と直交させるように茶葉の塊を転がし、中心葉脈に葉が巻くように揉むのである。そして今度はラップ無しで電子レンジで1分〜2分加熱し、また同じように笊上で揉むという作業を数度繰り返す
完成した野生新茶(山新茶)。250gの生葉は半分以下の重さに。本式製茶だと半日以上かかるので、茶が長らく高級品だったことを改めて認識
美味なるも謎解けず
加熱と手揉みを繰り返すと徐々に茶葉が乾燥してくるので、頃合いを見測り、最後に少々長めの乾燥加熱をを行う。
時間は茶葉の状態に依るが、今回は最初に製した生葉半分が解説書の分数を鵜呑みにしたため、少し焦げてしまった。残り半分は上手くいったが、何故か香りは失敗した方が良く、また味の出も深いものとなった。
そう、今回は去年より手際よく、上手作れたが、結局、焦げた方も含め、熱湯で時間をかけないと味が出ない、という問題は克服できなかった。手法・手順的に間違えはない筈なのに、何故であろう。
やはり、今主流の品種とはかなり性質が異なる茶なのであろうか。市販の山茶は蒸しではなく、釜煎り製茶で作られているので、野生種はそちらが適しているのか。もし存知の人があれば、ご教示願いたいものである。
まあ、それでも淹れた新茶は香り良く、美味であった。ただ、地理風土が近い、宇治の新茶とは異なり、大陸の「西湖龍井」緑茶に似た味になった(龍井最高の新茶とされる「明前」を飲んだことあり)。
やはり、最古の喫茶記録(1200年前)が残る、近くの崇福寺との関わりがある茶樹、「遣唐使の茶」なのであろうか。変わらず想像のロマンは膨らむが、特異な茶葉の謎は今回も解けなかった。
まあ、これも、続けて研究するしかないか……。
2021年05月23日
山茶手工
※2021年6月13日下段追記
裏山の幸での試み
5月を代表するような産物といえば新茶。
初旬の「八十八夜」の頃からはかなり過ぎたが、先日の裏山行で野生の新茶葉を見つけたので、予てからやってみたかった煎茶作りを試みた。
とはいえ、本当の緑茶づくり、所謂「製茶」は時間がかかり大変なので、現代の家庭利器を利用した簡易なものであった。
実は、一度それを先週にも実施したが、緑を保ち発酵を止める蒸し作業に失敗したのか、黒っぽい大陸風緑茶の仕上がりになった。
その味も正に中国新茶「春尖」の如きで、これはこれで美味なのだが、意図したものとは違うので、再挑戦することにした。
写真は、奥山で手摘みしてきたその茶葉。状態の良さから先週のものを掲げたが、見ての通り素晴らしい色合いなので、是非それを活かした宇治風の茶が作りたかったのである。
因みに、先日紹介した路傍の新茶葉は既に何者かに因って綺麗さっぱり摘まれていた。何事にも目敏い人物がいるものである(笑。それとも、ここで紹介した所為?)。
今日採取した新茶葉にみえる「一芯二葉」の姿(中央)。摘み取り方等は事前に学んで臨んだが、その基本は、枝先の未開の尖った葉を「一芯(針)」として、その下の葉二つまでを共に折りとる「一芯二葉」。特別な高級茶や二葉及びその茎がかたい場合は「一芯一葉」とする場合もある
驚きの製法
奥深い茶樹
製茶の方法は、なんと電子レンジを使うもの。手軽に製茶を体験できる方法として、茶産地の研究・教育機関等で紹介されている方法である。釜煎り等よりも、最も宇治煎茶に近い仕上がりが期待できる。
その手順は、最初に数分レンジで茶葉を蒸らして退色と発酵を止め、その後、手揉みとレンジでの乾燥を繰り返すものであった。1時間もあれば製茶が完了するという驚くべき簡易法だが、それが中々上手くいかない。
写真は生茶葉約150gを使い同法を試した完成間近の様子だが、色こそ前回より残せたものの、高い湯温でないと色や味・香りが出ないという茶になった。湯温さえ上げれば悪くはないのであるが、何か違う気がする。
また、完成した茶葉や煎じた茶に若干発酵臭がするということもあった。今回は発酵を防ぐため蒸し作業に十分注意したが(青臭さがなくなるまで蒸す)、その後の工程が悪かったのであろうか。しかし、発酵臭といっても嫌なものではなく、所謂、桜餅同様の良い香りではあった。
ところが、後日調べてみると、桜餅の香りをもつ茶の品種があるという。それは、静岡で開発されたものらしいが、個体選抜を経て品種化されたものなので、茶樹元来の性質かもしれない。
因みに、その品種は昭和中期頃、開発されたらしいので、それ以前に現地に自生していたと思われる今回使用の茶樹は、そういった品種の原種ともいえる存在かもしれない。
また、奥山とはいえ古代からの歴史痕跡が濃厚な場所なので、更に孤立した古種の可能性も窺われる。若しくは文献上最初(9世紀初期)に茶が現れた場所とされる滋賀・崇福寺から遠くない場所なので最古級品種か……。
とまれ大陸から伝来した只1種の樹種ながら、実に奥深いものを感じさせられることとなった。機会あれば、また製茶法共々研究を深めたいと思う。
※追記
後日のものだが、煎じた茶の状態画像がなかったので以下に追加。
ポット内で葉を開く、電子レンジ製茶した京都東山奥地採取の野生新茶葉。宇治煎茶の淹れ方に反し、熱湯で長時間抽出することにより、色や旨味が出た。今の栽培樹とは異なる特異品種、または古種なのか
清水焼の湯飲みに入った、緑鮮やかな、京都東山の野生新茶。水色もよく、新茶らしい清涼感をもつ逸品であった
2019年08月21日
残暑収豆
不出来ながら……
盆明け以降も暑さが続き、今日も猛暑日超えとなった。ただ、秋雨の影響か、曇天や雨が多くなり、日射が無い分、幾分マシには感じられた。
今日は予てより気になっていた菜園の枝豆を収穫。極力実を肥えさせようとしたが、そうなる前に葉の色が変わり始めたので、仕方なく収穫を急いだのである。
写真は、その菜園産枝豆。8苗程からあがった、ほぼ全量であるが、量も少なく、大きさも小さい。わざわざ紹介するほどでもないと思ったが、ここ暫く菜園栽培の記事を上げていないので、その継続を示すため紹介した。
塩もみして茹でるのを待つ枝豆
因みに、塩ゆでしたその味は意外にも甘味があり、美味であった。そうなると、尚更その量的・外形的不出来が気になった。
完全無農薬・国産植物性肥料のみのノーガード農法なので、ある意味仕方ないが、次はもう少し工夫して収量を増やしたいと思う。
2018年09月03日
菜園凶暑
我が菜園も世間同様か
久々に菜園の話題。
今年も春から準備して色んなものを育ててきたが、初夏収穫の香菜と馬鈴薯の豊作を最後に、猛暑の影響を受け始めた。
比較的暑さに強い茗荷や里芋も葉先が枯れる程で、実の成らないものや、そもそも発芽すらしないものが続出した。影響を受け難かったのは、ニラとエジプト伝来のモロヘイヤぐらいか。
原因は暑さと水分不足かと思われる。雨なら7月の豪雨時にとんでもない量が降ったが、その後は夕立すら来ない状況が続いていた。そして40度近くにも達する連日の猛暑。途中2度の台風もあったが不足を補えた観はない。
お蔭で、連日2度以上大量の水を撒くことを強いられたが、それでもすぐに方々乾く有様であった。
世間でも、野菜の値段が上がり、モロヘイヤがホウレンソウの代用にされるなどといった、同様の動きがみられた。
写真は、そういった状況下での本日の収穫。千両茄子は立派だが、漸く出来た一つ。その他、枝豆や茗荷、ピーマンも小型で量も少ない。鷹の爪も色はいいが小さめか。オクラを採るのを忘れていたが、それも今夏は成長が遅かった。
こういうことも偶にあるのか、これから良く起こるのかは分からないが、残念なことである。
2017年11月23日
芋頭秋穫
今年は豊作の見込み有り?
ここのところ、またご無沙汰の菜園。
冬の農事仕舞いの時期なので仕方ないが、まだ一つ二つは収穫するものがあった。それは里芋である。一昨年初めて植えた際は大して獲れなかったが、今年は葉も大きく育ち、見込み有り気であった。
まだ青々としており、侘び風情の秋庭中央にて貴重な生気を供していたので躊躇われたが、霜が本格化する前に収穫しなければならないとのことなので、今日収穫することとなった。
上掲写真: 里芋の収穫に際して切り取られたその葉。かなり数が減っていたが、戯画の如く、傘に出来そうな程の大きさと色艶を保っていた。茎の「芋茎(ずいき)」も食べられるらしいが、今回は手が回らず挑戦はしなかった。葉は順次更新されていたので、もし来年以降欲しい人があれば知らせてほしいと思う。
そして掘り出され、分離されたのが写真の里芋であった。
茎がある大型のものは所謂「親芋」で、これが葉の元ととなり、周囲に子芋を実らせる主部となる。品種により食べられるらしいので、一応収穫。
子芋は比較的大きく、幼児の拳大程のものもみられた。春実験的に買った1苗、即ち1ポット分の収穫なので、同じ条件の一昨年の収穫に比して悪くない。今年は比較的土が良かったからか。
数苗植えれば冬の自給に適いそうなので、来年は是非そうしたいと思う。
皆の期待も高い、香菜(パクチ―、コリアンダー)もただいま生育中
不作の挽回願うも……
残りの野菜は、春収穫した残りから自然に生じたジャガイモや香菜等か。今年は色々と不作だったので、色々準備して挽回したいとも思うが、連作の問題等々、中々難しい。
本来は今までで観察出来た、ここに適した野菜の量産を目指した方がいいのかもしれないが、まあ、思案中である。
因みに、今日の表題の「芋頭(うとう)」とはサトイモの芋の部分のこと。漢語でも「里芋」そのものを指す語なので、漢字表題に合う語として採用した。
2017年10月15日
秋菜製餅
先日到着の秋野菜を整理
先週、野営で家を留守にする直前に荷物が届いた。
馴染みの配送員氏が一度在宅を確認しに現れ、その後、重そうに持ってきたのが、大き目のその段ボール箱であった。送り元は北海道。中身は野菜であった。
妹の婚家が送ってくれた恒例の秋野菜の詰め合わせである。有難くも毎年頂いているが、今年は新じゃが2種と南瓜の3品が詰められていた。
野営からの帰宅後、馬鈴薯から徐々に使用していたが、落ち着いた今日、改めてその整理や南瓜の切り分け等を行ったのである。
上掲写真: 北海道から届けられた自家製の南瓜。底部が尖っているので、「ダークホース」という品種のものであろうか。
仕分け中の道産秋野菜。丸い男爵芋は半分取り分けた後の残り。仕切りに入れられた新聞は勿論、北海道新聞で、栽培・発送者である義母の「お元気ですか」との書きつけがあった。「はい、元気です」と黙して返す(笑)
さて、南瓜を切り分けて一先ず保存したあと、ちょっとした調理に入る。男爵芋を手にして、加熱した後、写真の如くボール内で潰してまとめる。
その際添加したのはバターと片栗粉(馬鈴薯澱粉)。さて、何が出来るのやら……。
そして、次は写真の如く男爵芋の生地を棒状にして切り分ける。打ち粉がなくとも意外と貼りつかないが、かなり弾力があり、少々成形しづらい。
肥後細川家の家紋ではありません(笑)
その後、それを鉄板に並べて弱火でじっくり両面を焼き……。
香ばしい名物完成
もっちりと膨らめば、最後に砂糖醤油を絡めて出来上がり。
香ばしい醤油色で皿上に置かれたのは、北海道名物「いももち」であった。彼の地の、開拓時代からの保存食・おやつである。
昔、現地のラーメンに添えられていてその存在を知って以降、好物となっていた。そして、一度自分でも作ってみたいと思っていたのである。
今現地では、おやつとしての役割が重視されるのか、総じて生地にも砂糖が入れられ、タレもみたらし風だが、今回はおかず風に辛めにしてみた。
手前味噌ながら、作りたてということもあり美味い。たまにこちらでも市販品をみかけるが、弾力や香ばしさが違う。生地を冷凍して保存すればいつでも食べられるらしいので、次は多めに作って備えたいと思う。
とまれ実験は成功。お義母さん有難う!
2017年10月03日
糖果成熟
※2020年7月24日 水さらしと仕上げについて追記
※2020年8月05日 皮の整形について追記
※2020年8月08日 箇条書部分を要点記述から手順・要点式に改変
中秋近し
10月となり、早3日。
昨今、日の入りが随分早くなり、日没後も急に暗くなるようになった。迫る宵闇に追われるように歩く夕方の山辺にて月の出を見る。
それは、山の端より昇る大きなものであった。まだ満月ではないが、秋の気を射通す強い光を放つ。そういえば、中秋の名月が近づいていた。
上掲写真: 夕方、大文字山頂より昇る秋の月。
秋夜に日向夏ピール調理確立
その夜、昨日仕込んでおいた調理の仕上げを行う。日向夏蜜柑の皮を使ったピールづくりである。昨晩調理して冷まし、砂糖を化粧がけして乾燥させていたのであった。今晩は、殆ど片付けるくらいであった。
材料は春に出た日向夏の皮を冷凍保存していたもの。煮詰めて水分を飛ばすのに時間がかかるため、涼しい時期まで延期していたのであった。そして昨晩、中秋も近づく確かな秋到来をみて一気に仕上げたのである。
些細なことながら、またも紹介するのは、今回で一応調理法が確立されたため。砂糖と炒めるだけの簡単なものだが、乾燥具合等色々あって奥深い。今回はこれまでの経験を基に一応自分なりに納得出来る仕上がりが得られた。その手順と要点は以下の通りである(※)。
【日向夏ピールの作り方】
(藤氏式・手順と要点)
(藤氏式・手順と要点)
1. 実を食べて生じた皮を1cm×5cm程の短冊状に切って整形し、すぐに密閉容器で冷凍保存し、貯めておく(皮の原形が判る大きさは廃物利用の観が強くなり、見た目と食感が悪化)。
2. 調理の1週間程前から冷蔵庫での一晩の水さらしを何度か行う(水の色が透明になるまで。1週間弱。風味保護のため茹でこぼしは行わない。なお、エグミは完成後暫くして減少)。
3. 調理に当たり砂糖を用意。色のくすみや味のクセをなくすためグラニュー糖を使用。その量は、さらし後に水を切った皮重量の半分くらい。
4. 水を切った皮と砂糖を厚めの鍋に入れて煮詰め、更に炒めるようにして乾燥させる(天日干しやオーブン乾燥は色や風味の劣化原因となるので行わない。また完成後に進む乾燥を考慮し、水分は少し多めで仕上げる)。
5. 仕上の粉糖等は味が変わるので不要だが、必要なら鍋に付いた糖分を再利用するのが最適で、無駄もない。
このような感じか。以上、自分の備忘を兼ねて掲げておくので、ご参考あれ。このやり方で上手くいったとか、報告を頂ければ嬉しいかも。
自作「日向夏ピール」の接写。正に手前味噌だが、一応最高傑作となった。次は形状、即ち切り方を工夫してみたい
2017年07月17日
夏菜試食
菜園の夏野菜は?
暫しご無沙汰の菜園収穫。
今年は害虫に派手にやられて不作気味だったが、夏野菜も少しは獲れた。写真の茄子と伏見&万願寺唐辛子がそうであるが、テントウムシダマシ(ニジュウヤテントウムシ)との壮絶な攻防となった茄子は一つのみとなった。
因みに、玉葱も以前紹介した菜園産である。
小玉ながらも量は獲れた菜園産ジャガイモ
葉が全滅したジャガイモの収穫状況
その他、最近収穫できたものではジャガイモがあった。本来なら梅雨の本格化前に収穫すべきだが、5月の冷涼で成長が遅れ、7月の多雨で収穫時の乾燥状況が得難かったのである。
2日雨がなかった先日に、葉が枯れていた大半の株を掘り起こし、数日暗所で乾燥させたのが写真のものである。これも害虫との闘いの所為か、実に小玉な仕上がりとなった。それでも、ビー玉数個状態の去年よりマシか。
今年は、例年と違い消毒済の種芋を植え、病気にもかからず盛大に成長したが、6月後半からテントウムシダマシの猛攻撃に遭った。油断していたら、知らぬ間に葉が全滅に近い状態となったのである。
茄子がやられたのもこれが発端かもしれない。やはり色々と難しいものである。
収穫物を併せて食し、実験・実践す
まあ、後悔しても仕方ないので、獲れたもの、有るものを一先ず使ってみる。とっさに作ったのは、上記全てを豚肉と共にカレー粉で味付けした炒め物。
小玉のジャガイモは、毒素により中毒を起こすので、捨てるべきとの警告もあったが、構わず丸まま蒸し焼きにしたのち他と併せた。
そして、早速試してみると、若干痺れを感じる箇所もあったが、特に問題なく食せた。
これも実験・実践か。
2017年06月10日
初夏増虫
諸々の虫増える
春になり、初夏となって気温が上がり増えてくるのが諸々の害虫である。
蚊やムカデ(これは益虫でもある)がその代表だが、これら直接人を害するもののみならず、間接的に害を加えるものもある。
その代表が田畑の農業害虫といえる。農家ではないので、本来ならその害が直に及ぶことはないが、菜園が被害を受ける。これまでのところ、天然国産の植物肥料と無農薬での栽培を続けているので、特にその影響が目につく。
菜園でそれが生じた場合は、基本的には目視駆除となるが、手が回らない時、怠けた時は一種全滅に追いやられることも珍しくはない。これも勉強で、農事の難しさや近代農業の凄さを身を以て感じるところではある。
初見。アシナガバチの捕虫
そんなことで、水遣りついでに今日も害虫の目視と除去を行ったが、育ってきた茗荷葉の上に最近よく目にする葉物野菜を喰らう毛虫を見つけた。
本来なら、茗荷には付かない虫だが、暫くすると葉裏からアシナガバチが伝い現れ、写真の如く、何やら口で整え始めた。巣に持ち帰る為の準備であろうか。
アシナガバチは害虫を捕獲する著名な益虫だが、今までその仕事ぶりを見たことはなかった。菜園内を縦横に飛び回るのはいつものことだが、本当に図鑑通りの仕事をしているのか謎であった。しかし、今日実態に接することが出来た。
しかし、カマキリやトカゲ等でも観察し、実感しているが、到底追いつけまい、害虫の数に。どんどん捕まえてちょうど良いバランスにしてくれれば楽で有難いのであるが……。まあ、有り得ない人の勝手な幻想か。
そういえば、アシナガバチは最近数が減っているらしい。うちの周囲の軒下等に毎年営巣するが、今年は巣を見ない。去年2個あったのがヒメスズメバチの攻撃で全滅したことが影響したのか――。
菜園の味方なので、その際はヒメスズメバチの駆除も考えたが、これもまた減っているという。ヒメスズメバチはアシナガバチの幼虫に強く依存して生息しており、連動する関係らしい。因って、手を出すことは控えたのであった。
自然たるもの、色々と繋がっている。それなら、やはり、うちの害虫も上手く調整してもらう術があるのではないかと、また懲りずに考える(笑)。
入梅直前に収穫した玉葱
小玉化する?玉葱収穫
そういえば、先日5日の朝に玉葱を収穫した。日持ちに影響する為、梅雨入り前の乾燥期にそれを終えたのである。その際、写真を撮り忘れたので、今日撮影して紹介する。
ごく少量なのだが、毎年大きさが小さくなっている気がする。最大でも直径10cm未満。肥料はやっているのであるが、根本的に土が痩せてきたのか……。
こんな時は、動物性肥料や、更には化成肥料なぞをどんどん使えば、効果覿面なのかもしれないが、何故かその気にはなれないのであった。
まあ、ここでも農事の難儀や近代農業の凄みを思わされたのである。
2017年06月02日
入夏得菜
北地共々、はや6月
特に記事にはしてなかったが、最近、菜園の豌豆(エンドウ)が収穫盛期となっていた。とはいえ、日産は掌(てのひら)に入る程の微々たるものなのではあるが……。
それはともあれ、今日北海道の親類から同地自家製のアスパラガスが届いた。鮮度が命というので、早速前者と共に頂く。写真はその記念的一写。少ないならが、豆も丸々として良く、アスパラもまた然り(しかり)。
我々西日本も北地・北海道も、共に野菜が実る季節に入ったか。何しろ、はや初夏6月である……。
2017年05月18日
飾床補修
置き床補修
今日は久々の木工紹介。
とはいえ、作業が完了したのは先月のことであった。仕上げに施した植物油の乾き等に時間がかかったため、完成の日が定められず、そのままとなっていたのを、漸く今日紹介することとなったのである。
行ったのは、客間の「釣り床」下の畳上に置いていた「置き床」名目の杉板修理。友人から頂戴した分厚い良材であったが、残念なことに穴を伴う「死に節」が幾つかあった。これを埋めることと、水染みの恐れがあった白木表面に乾性油がけをすることを目的としたのである。
上掲写真: 立てかけた置き床材。凡そ90cm×40cmの大きさで厚みは6cmある、店舗カウンターの端材である。下方中央に見える色の濃い場所が「死に節」箇所。裏面まで続き、更にもう一箇所あった。
刻苧漆と桐油にて
節埋めには、伝統的な天然素材「刻苧漆(こくそうるし)」を使用。
本漆に小麦粉と水を合わせたもので、単純ながら伝統接合材のなかでは最強の接着力と強度をもつものとされる。ただ、調合を失敗すると全く役に立たなくなる恐れもあった。
そのため、以前は敢えて避けていた工法であったが、近年ネット上で詳細な調合法が紹介されるようになり、その会得に成功したため、多用することとなった。実に有難い限り。
写真は刻苧により埋められた「死に節」。輪状の複雑な形状であったが、完全に埋めることが叶った。手順としては、紙テープで周囲をマスキングしてから刻苧を埋め込み、ラップで均して乾燥後に削り平滑化する。
表面と同様に埋められた、裏面に続く「死に節」
「死に節」補修後、全体的に乾性油の「桐油」を塗布して水染み対策(防水)とする。
乾燥後に再度塗る、2度塗り仕上げである。しかし、最初に記したとおり、当初は気温が低かったため、乾きが悪く、時間がかかってしまった。これもまあ、教訓である。
また、色変化が最も少ないとされる桐油だが、やはり濃いめの仕上がりとなり、好んでいた白木の風情は失われた。これもまあ、仕方あるまい。
とまれ、全てが完了したのが、初めの画像の姿。色のことはあったが、やはり「死に節」も埋まり、外見的には良い具合に落ち着いたのであった。
2017年05月17日
糖果手工
意外に奥深い夜半の炒め物
夕食を終えたにもかかわらず、夜遅くに長時間の炒め物を始める。
果物の皮を使ったピール(糖果)作りである。材料は先月紹介した好物の日向夏みかんから出たもの。近年、自分の食用や人に進呈するため恒例的に行っている手工である。
手工といっても、砂糖を加えてひたすら炒めるだけ。料理をする人からすれば、調理の内に入らないものともいえるが、これが中々奥深い。
砂糖の分量や種類は勿論、渋味抜きや炒め(乾燥)等の具合や方法についてのことが、である。
写真は、1晩以上替え水に浸けた刻み皮を炒めているところ。いつもは渋味抜きに茹でこぼしを行うのであるが、今回は香りを保持する為に湯通ししない方がいいとの説を知り、従ってみた。
完成。香りは良いが……
そして1時間近く炒め、写真の如く水分を飛ばし完成させる。
色や香りは中々。しかし、やはり渋味というか若干エグミが残った。水さらし時間を増やした方がいいのであろうか。また、グラニュー糖を使ったが、甘味に角が立つ感じもした。諸本を参考にした、「さらし後の重量比で半量」という量が多すぎたのか。
なお、これを楽しみにしている甥らに送付後感想を訊くと、問題なしとの返答も。何度も作っているので、作り手の感覚が細かくなっているということもあるのか。
実は、これは先月の結果。作業は変わらないが、今日はそれをふまえて準備を変えてみた。即ち、一度茹でこぼしを入れたのである。
結果は、やはり香りは大幅に減じ、色も赤黒くなってしまった。完成度としては先月が上か。今日の画像をそれにしたのはその為である。ただ、今回は砂糖を三温糖にして量を3分の1にしてみたが、グラニュー糖であればこれくらいでいいのではないか、との経験則の如きも得た。
やはり、簡単に思えて、やるほどに難しいものである。
なお、これまでの実験により、乾燥は最後まで炒めきることが最短・最良ということだけは判明させている。諸本には天日干しやオーブン入れ等も紹介されるが、基本的にそれらでは無理であった。
以上、興味ある人はご参考あれ……。
2017年05月16日
近来菜園
長引いた冬の影響あれど
そうえば、ここのところ菜園の様子を報告していなかった。
別にやめたという訳ではなく、毎度の如く地味には続けていたが、特に新しいものの栽培を始めたとか、収穫出来たという新味に欠けていたので、後回しとなっていただけである。
今年は冬後半からの寒さが長く続いたので、春野菜の成長に影響が出た。しかし、それでも香菜(コリアンダー・パクチー)などは世代交代で土地に馴染んできたのか、盛況を見ることが出来た。
写真は、それら調子の良い野菜のその他の例。大きな葉が「うまい菜(便利菜)」、細い葉が「韮(ニラ)」である。玉葱やレタス等は育ちが悪かったり、生育が遅れ気味である。
あとは、去年連作障害で散々となったエンドウを別所で春植えしたものが花をつけ始めた。こちらは、少しは期待できそうか……。
2017年02月19日
修理電熱
二輪のまち京都
昨今、京都はよく自転車のまちと称される。
市街主要部の大半が平坦で、その規模も過大ではない為、自転車の利用に適しているからである。
しかし、そこにもう一つ加えたいことがある。
それは、自転車だけでなく、他の二輪、即ちバイクのまちということである。化石燃料は使うが、小型車なら四輪に比べて排気量が格段に小さく、それでいて市街全域を苦も無く走破出来るからである。
特に旧市街的な街の中心部等は、道が狭いにも拘わらず交通量が多く、恒常的な渋滞を生じさせている。本来は便利な筈の四輪車も忽ちこれに絡めとられ、身動きもままならない。
因って、その合間を抜けることが出来、駐車場所にも然程困らない二輪は、京都では、ほぼ最速・最至便の交通手段となる。
為に、それを愛用する人は多く、私もその一人であった。
「頼みの綱」壊れる
しかし、言わずと知れたその弱点は天候である。雨風は無論、夏の暑さや冬の寒さがその乗車を難儀にした。特に今頃の寒さはライダーをして最も運転から遠ざけるに十分な理由を成している。
だが、私は比較的その難儀を思わず利用を続けていた。それは、ハンドル部分にヒーターを仕込んでいたからである。即ち「グリップヒーター」という装置である。
毎年冬になる度に人から気の毒がられたり感心されたりしていたが、実は反則技を用いていたのであった(笑)。
ところが、先日の最も寒い晩にその故障が判明した。
厚手のグローブをしていたが、かじかむ寒さである。普段のヒーターの有難さを痛感したのは言うまでもない。ということで、暇をみて、その修理を行うこととなった。
上掲写真: グリップヒーター故障の原因として真っ先に疑われたスイッチ部。非防水だったので、雨水侵入による接触不良を疑い、新しいものに交換し、更に今後の対策として防水カバーまで取り付けた。
交換されたスイッチと、溶けた端部が適当に繕われたケース
最初の2作業
先ずは先週末に最初の作業を行う。スイッチの入り切りで改善されることもあったので、その接触不良を疑い、取り外して接点復活剤等で対処したのである。しかし、その安易な姿勢が良くなかった。
一度は改善がみられたかと思われたが、結局また不具合発生。よって、後日スイッチ自体を交換することとした。元々密閉型で接点の清掃が困難なタイプだった為である。
しかし、それも効果なし。それどころか、横着して養生をせず、半田ごての熱でスイッチケースの端を溶かす二次災害まで起こしてしまった。
原因判明
ここで漸く真面目に原因探求。ハンドルグリップに巻くヒーター部を取り外して抵抗値を測定すると、不安定な値から無限大までの振幅が現れた。
断線である――。
当然、最も起こり得ることとして考えてはいたが、取り外し等が面倒なのと、思い込みにより、後回しにしてしまった。この様に、物の修理は往々にして裏目となることが多い。それを知りつつ、楽をしようとするのは、やはり自家用故の気の緩みか。
電線を確認すると、その中途ではなく、ヒーター根元の半田付け部分での疲労断線であった。脆そうに見えた細い線は意外にも丈夫なものが採用されており、それ故に接続部にストレスがかかったのであろう。
半田が付かず
早速電線を外し、端部処理をやり直して溶接したが、何故か付きが悪い。
半田ごての熱が足りないのだろうと思い、時間をかければ何とか付いたが、今度は熱でヒーターカバーの一部に穴が開いてしまった。これもまた、ヒーターを引き出して作業しなかった横着故の二次災害である。
それでも、何とか防水処理をして作業を完了させた。しかし、はじめは効いていた温熱もすぐに生じなくなった。そこで漸く気が付いた。
ヒーターからそのまま延長された接点の素材が、銅ではなく半田の付きにくいものではないか……。良く考えればヒーターは抵抗器の一種なので、抵抗値が低くく、耐久性もない銅箔が使われる訳がない。
これも、ヒーターの表面がプリント基板同様の銅色で覆われていた為の思い込みであった。
いやはや恥ずかしい限り。久方ぶりの半田づけなので、少々感が鈍っていたようである。
難物半田の救世主「ステンレス用半田セット」
また不具合出るも直ぐ対処
そして今日。難物の半田付けを可能にする材料を市街中心部まで買い出しに行き、漸く再修理。
銅箔や純金端子に施すより作業性は悪いが、目論み通り確かな半田付け叶い、修理が成ったのである。
しかし、仮組して試験するも、全く温熱が生じず。抵抗値の計測では間違いなく補修出来ているのだが……。だが、感が戻った今回はすぐに原因を悟る。即ち、反対側のヒーターの異常である。
そこでこれまで不具合がなかった右側のヒーターを点検すると、案の定、同様の断線が生じていた。そもそも同じタイミングで症状が進み、紙一重のところで左が先に切れたようである。
フィルム型ヒーター接点への半田付け。この銅箔色に騙された(笑)
無事補修されて二輪に取り付けられたグリップヒーター
冬乗りの楽しみに役立てば
横着をせず、そして落ち着いて順を追って調査していれば、この様な数次に渡る工事にならずに済んだ。何事も「急がば回れ」である。
とまれ、これでまた冬の二輪乗車が楽しみになったのである。
本来、今回の小補修なぞは「手工」分類に入れて紹介する程のものでもなかったが、ネットにもヒーターの半田付けに関する情報が少なかったので、敢えて記事化することとした。
冬乗りの楽しみを知るライダー諸氏のお役に立てれば幸いである。
2016年11月26日
続古家修戸
町家の建具調整続編
今日は、先日23日の祭日同様、大工さん登場での作事。
実は、先日は工事が午後からの開始となった為、完全に終らせることが出来なかった。因って、その為の再出動であった。
今日は朝9時に開始。前回と違い、建屋に対する工事はなく、新しい建具を調整するだけだったので、無事午前中に終ることが出来たのである。
写真は、前の硝子障子に代わって取り付けられた障子。紙の柔らかさと腰板の木目模様がいい。京間1間半を4枚で仕切るもので、新しいものではなく、以前中古を格安で入手していたもの。
勿論、先日調整した前の硝子障子も、何時でも交換が楽しめるよう、保管してある。
新建具の実体は……
この障子、実は普通のものではなく、写真の如く、下部が跳ね上げられるものであった。即ち、雪見障子(猫間障子)である。
どうしてこれを欲したかというと、前の曇り硝子の建具だと、冷暖房時に外が見えず息苦しさを感じたからである。これなら熱気・冷気を遮断しつつ(跳ね上がり部には透明硝子あり)採光と庭への視界が得られる。
そう、時により本当に雪見も可能なのである。まあ、ささやかな風流、贅沢といったところか……。
とまれ、敷居の問題等々、課題解決や希望が叶ってよかった。これも、親身に工事に当たってくれた大工さんのお陰である。
2016年11月23日
古家修戸
町家の敷居と建具改修
祭日の今日、懇意の大工さんが家に来て、敷居と建具の調整を行なった。
春くらいに頼んでいたのだが、先方の都合で漸く今日の施工となった。まあ、こちらも色々と無理をお願いするところなので仕方なく、どのみち年末までに完了すればよいことだったので問題はなかった。
先に掲げるが、写真は作事完了の様。結果、檜を削り出してもらった立派な敷居となった。元のものは入居時より調子が悪く、ガラス戸が中途で外れて危険だった為、一安心となった。
また、歪んでいた各部の水平出しや床下の補強も出来、更に建具の隙間も改善されたので、これからの厳しい季節への備えとしても喜ばしいこととなった。
可能な限り当初の部材を残すとの方針であったが、元の敷居は下部の大引(おおびき)共々虫食い等で腐食していたので、交換することに。
写真は、先ずはそれらを撤去したところ。根太(ねだ)等の状態から、そう遠くない過去に床の補修がされたようである。
敷居や根太等と受ける補強を床下に再構築
また、以前の補修が悪かった為に、床板を受ける根太の支えを兼ねた補強を行うこととなった。
当初の予感通り、建具調整の準備だった筈が、何やら大層な工事となってきた。
大工氏に作事を任せて奥で仕事を進めるつもりだったが、難工事ぶりをみて途中より手伝いに入る。
写真は、一度所用で抜けた際に覗いた真如堂の紅葉。どうやら境内盛りを過ぎたか……。
特設作業台で最終加工される檜敷居
外はすっかり陽が落ちたが作業は続く。路地に設けられた特設作業台ではライトを付けて、ひたすら二人作事。
敷居の設置に腕を揮う大工氏
難航するも完了して気分一新
敷居の設置後は、建具の調整。微調整の連続ながら、これが意外と難しい。結局午後13時過ぎから始めた工事は、21時完了となったのである。
とまれ、ガタもとれ、隙間も塞がり、正に気分一新。
大工さんお疲れ様でした。休日遅くまで有難う!