2012年06月23日

改塗会蕎麦蛍会

古色塗り前に町家の玄関欄間のモールガラス裏に追加した木柱

塗会延期。調合実験実施

町家・古民家の補修に必要な古色塗りの、実見・体験の場を兼ねた塗会。

今日は、前回生じた未了部分を完了させるために再開催する予定であったが、告知が遅くなった所為で参加者が少なく、また個人的な都合等も有ったため延期扱いとなった。

夕方から行う蕎麦小会は予定通り開催の手筈だったので、それまでの合間に、今回の課題でもある、顔料調合問題の解決を図ることとしたのである。

色々な調合を試し、その都度木片に塗布して結果を見るつもりであったが、「どうせなら」と、施工部分に行うことにした。写真は、その為に欄間ガラスの裏に追加した白木の柱。白木と言っても、家から出てきた日焼けした古材の再利用である。

まあ、元は貧弱な丸棒が添えられているだけであったので、いつか修繕したいと思っていた場所でもあった。正に一石二鳥といえば大袈裟か。

今日の表題は長くて読み難いが、「塗会改め蕎麦・蛍会」と読んで頂ければ有難い。


玄関土間に置いた容器内でのベンガラ(弁柄・紅殻)と松煙(アイボリーブラック・ボーンブラック)の調合作業

「調色の基本」通りには

さて、ベンガラ(弁柄・紅殻)と松煙(アイボリーブラック・ボーンブラック)の調合作業。先ずは、求める焦げ茶色を出すため、調色の基本、黒2、赤1で行ってみた。写真は、正にその配合に則って準備し、煮亜麻仁油(ボイル油)の注入を待つところ。

しかし、これでは前回同様の、赤勝る色になってしまった。仕方ないので、小匙で定めた量の黒(松煙)を順次投入し、様子を見ていく。だが、中々改善が図れない。ベンガラの赤みは、相当強いようである。


玄関土間に置いた容器内でのベンガラ(弁柄・紅殻)と松煙(アイボリーブラック・ボーンブラック)の調合作業後、煮亜麻仁油(ボイル油)で溶いて完成させた、焦茶色の町家用天然古色塗料
完成した古色塗料。結果、赤1、黒25以上という予想外の割合で、望みの色が得られた


完成した焦茶色の古色塗料が塗られた、町家玄関欄間のモールガラス裏の木柱
出来た試験塗料を、先に施した欄間柱に塗布してみた。一応、望み通りの色具合である。秋ぐらいに再開催する予定の塗会では、この配合を使い、以前の失敗箇所共々、塗ってしまおうかと思う


塗会終了後の蕎麦会で、蕎麦の伸し作業を行う手打ち蕎麦初体験の西陣在住英国人Gさん

蕎麦小会

さて、夕方からは、人が来て蕎麦小会に。国産良質の蕎麦粉・つなぎ粉等を使って手打蕎麦作りを行う。写真は初体験のGさん。西陣在住の英国人で、日本好き、京都好きさんである。


塗会終了後の蕎麦会で、蕎麦切り前の折り作業を行う手打ち蕎麦初体験の西陣在住英国人Gさん
蕎麦切り前の折り作業。やり方や仕草に、人それぞれの性格が出て興味深い


切り終った不揃いの生蕎麦を鍋に投入する塗会・蕎麦会参加者
仕上がりは不揃いになったりするが、まあ、それもご愛嬌


塗会・蕎麦会終了後に行った蛍会で見た下鴨神社「糺の森」の蛍の光跡

「蛍会」経て終了

夜は蛍を見に賀茂の河原へ。しかし見当たらず、結局は下鴨神社の「糺の森」まで行って漸く見つける。不味いものしかなくて申し訳ないが、写真は草葉の上でフワリ漂うその様である。

気温が低めのためか、動きは一応に不活発なように見られた。賀茂川(鴨川)で1匹も見なかったのもその所為であろうか。

とまれ、皆さんお疲れ様。また塗会の告知が遅れて申し訳ない限り。次回は抜かりなく行う予定なので、どうかご容赦を……。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 塗会

2012年06月09日

入梅塗会

ベンガラ(弁柄・紅殻)と松煙(油煙)を煮亜麻仁油(ボイル油)で溶いた手作り天然塗料で、町家玄関の木製格子戸の古色塗りを行う塗会参加者

梅雨前に間に合わぬも塗会開催

梅雨入りに備え、拙宅玄関戸を修復塗装しようという個人的事情から生じた古色塗り体験会「塗会(ぬりかい)」。丁度、昨日6月8日に近畿での梅雨入りが宣言され、当初の意図としては間に合わなくなったが、幸い荒天にはならず、無事決行となった。

先ずは5人程が集まり、後に3人が加勢する予定だったが、直前の都合により2人開始に。加勢の3人は拙宅への道に悩み大幅に遅れることとなった。まあ、それでも元々狭い現場なので、程よい人数、有難い加勢となった。

先ずは築約80年の拙宅や伝統塗装について軽く解説を行い、早速作業を開始したのであった。


上掲写真: 日没辺りまで続いた古色塗り作業に従事するS君。芸大洋画科卒業らしく、初参加ながら大小の刷毛を使い分け手際良く進める(何故か大陸購入という人民帽姿だが。笑)。お疲れさん!


床上に用意された古色塗り材料の、ベンガラ(弁柄・紅殻)、松煙(油煙・アイボリーブラック・ボーンブラック)、煮亜麻仁油(ボイル油)
今回の「古色塗り」材料。左からベンガラ(弁柄・紅殻)、松煙(但し松ではなく羊骨を燃焼材とした代用品「アイボリーブラック〈ボーンブラック〉」)、そして煮亜麻仁油(ボイル油)である

町家や古民家の着色に古くから用いられる素材。有機溶剤や有毒乾燥剤を含まず、乾燥後の性質も優秀な自然由来塗料である。しかも、安価(調達先を工夫する必要があるが……)。但し、乾燥時間が長い為、近年は敬遠され、代用完成品塗料に取って代わられつつある。しかし、それらは性能優秀ではあるが、高価かつ外産蝋を添加している為、質感や色合いが異なる。

有意義な材料調達

さて、今回は茶色の塗料を作るので、赤顔料であるベンガラと黒顔料の松煙を調合する。煮亜麻仁油やベンガラは以前の集りで仕入れたものが残っていたが、松煙は殆どなかった為、開催前の午前に買いに行くこととなった。場所は左京区東南に隣接する山科は清水焼団地内にある「井上顔料店」。陶芸・建築関係御用達の専門店である。

原料情報や化学知識を交えて丁寧に商品解説してくれることで定評ある、そこのご店主に、いつもの様に色々と教えを頂き、無事購入。「今時、油溶きで塗装とは珍しおすな」と感心されつつの、有意義な調達であった。


古色塗り作業に備えガラス部分を新聞で養生した、塗装前の町家玄関の格子引戸
ガラス養生処理を施した塗装前の拙宅玄関戸。即ち「ビフォア(before, 施工前)」画像である

樋(トユ・トイ)の不備に因る雨水の跳ねかえりを受けて下部の腰板(こしいた)を中心に傷みが見られる。腰板は、元は無垢板が使われていた筈だが、古い時代に合板に交換されている。そして、それもまた朽ちようとしていた。本来は交換を考慮しなければならない頃だが、一先ずは塗ってみることにした。


古新聞でマスキングした町家玄関の格子戸に手作り天然塗料で古色塗りを施す塗会参加者

アイデア・マスキング
和気藹々と塗装開始


顔料を調合し、煮亜麻仁油を注入して忽ち塗料を完成させる。そして、塗装作業開始。マスキング(不塗装面保護)が面倒な格子下のガラス面に、折った古新聞を挿し込む、というアイデアを実行して手早く養生し、大胆に塗ってゆく。

少々粘度が高いが、ペンキなどと違って嫌な臭いも一切なく、一同和気藹々と作業する。時折、近所の人も何事かと話しかけたりもする(笑)。


伝統的天然塗料による古色塗り作業が完了した、町家玄関の木製格子戸
伝統工法による塗装が完了した玄関格子戸(翌6月10日撮影)。即ち「アフター(after, 施工後)」画像。想定したよりかなり赤くなってしまったが……。まあ、今日のところはご愛嬌(笑)

難しい顔料調合。一応予定完了

途中、男女2人が仕事のため離脱、その後、男女3人で継続。1度目の塗料が無くなり再調合するが、微妙に色が合わない。そして、同じ回の塗料を塗っている最中にも色の変化が起きた。というより、全体的に想定以上に赤くなっている。研究不足、そして顔料調合の難しさを実感したのであった。

そして完成。変ではないが、何か可愛い玄関になってしまった。やはりこれは失敗と言えよう。「綺麗になって良かったね」との近所の声にも苦笑するばかり(笑)。仕方がない、一先ずはこれにて梅雨を乗り切り、また適当な時季に再塗装を考えよう。

因みに、日没過ぎにまで及んだ作業ではあったが、全てを終らせることは出来なかった。外面のみ、つまり片面のみの完成であった。一見大した面積ではないが、格子は面が多い(1本3面)為、時間がかかったのである。しかし、これは大方想定済のことであった。迫り来る雨や蚊の猛威に備えて外面を優先完成させることが、午後遅くから開催することとなった、今日の目標だったのである。

だが、この後予定していた手打ち蕎麦作りは中止となった。時間が押したのと、皆の手が、その作業に耐えられる状態ではなくなってしまった為である(笑)。これも、致し方あるまい。

今回の失敗を教訓として、近々また挑戦してみたいと思う。皆さんお疲れ様でした。ご協力有難う……。

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 塗会