2009年05月06日

信楽茶会

茶会の目的地、滋賀県南部信楽の朝宮地区の山間に広がる茶園の新緑

絶望的な雨模様。またしても奇跡が

かねて予告していた、山会ならぬ茶会。連休最終日たる5月6日に行われることとなっていたが、生憎前日から荒天。その夜半過ぎても雨はあがる気配なく、当然の如く当日に対する予報も終日の雨天を伝えていた。初の茶会企画は、実に絶望的な状況にあった。

しかし、翌朝目覚めると、鳥声まじる静けさが……。前日とは違い明るい光が窓を照らし、外をのぞくと小さいながら晴れ間さえ見える。半信半疑で予報を見ると、何と、全日あった傘印が雲に変わっているではないか。昨年春の山会に続き、またしても、の奇跡的状況好転となった。天はまた我々に味方してくれたのであろうか(笑)。

そのような訳で、ほとんど諦めかけていた茶会が予定通り行われることとなった。正直準備すらしていなかったので、急遽それを行い、慌しく出発である。ただし、前日までに多くの辞退者が出た為、参加者は数人という小規模なものにはなったが……。


上掲写真: 茶会の目的地、滋賀県南部信楽(しがらき)の朝宮(あさみや)地区にある茶園景。折しも八十八夜直後、曇天下にも眩しい新緑の茶葉が一面に広がる。正に「新茶景」とでも呼べようか。再度記しておくが、今回の「茶会」は、ここに行って野点等をする会ではない。山ならぬ茶園(道路)を歩き、この素晴らしい眺めを楽しむ会である(笑)。


信楽高原鉄道車輌の運転台窓から見た、信楽高原への登坂の始まり

人数が少なければ、友人用意の車輌にて信楽まで行く案もあったが、やはり連休の渋滞や危険を考慮して公共機関を利用することとなった。我が京都市に隣接する滋賀県南部だが、その信楽へ行くにはひと手間かかる。周囲から隔絶された山中高地にある為である。

先ずは京都からJR線で草津まで行き、そこから同草津線に乗り換え、貴生川(きぶかわ)という駅まで行く。ここまでは普段目にする通勤型車輌が行き交う区域である。しかし、貴生川からは旧国鉄支線であった信楽高原鉄道線を利用するため趣が変化する。1輌のみでワンマン運転する、「レールバス」的な車輌が田園を行く、実にローカルな風情となる。写真は正にその車輌が貴生川駅を出て、信楽高原への登坂区間にかからんとする様子を運転台隣窓から捉えたもの。


信楽駅に置かれた出迎えの信楽焼たぬき

我々を乗せたローカル車輌は、かなりの斜度を登り高原地帯へと入る。そして、古代史跡「紫香楽宮(しがらきのみや)」跡等を経て終点信楽駅へと着いた。駅では、早速多くの信楽焼たぬきに出迎えられる。ご存知、全国に知られた当地の名物である。観光と思しき人は皆、駅前に立つ高さ数メートルの巨大たぬきを記念撮影していたが、私はあえて写真に見る如きノーマル品にした。

とまれ、折しも連休向け陶器市なども駅前で開かれ、朝ながら、曇天ながら、中々華やいだ雰囲気となっている。我々も屋台のかおりに釣られ、早速休憩がてら名物そばなどを食す。


信楽市街散策の際見つけた信楽焼の狛犬(獅子)

茶園がある朝宮は、信楽駅より更に西方にあるので、そこへ行くバスに乗り換えねばならない。しかし、そのバスは昼過ぎまでない。その為、それまでの2時間半程、信楽の街を散策することとなっていた。

写真は、その散策の際見つけた信楽焼の狛犬(獅子)。街の中心にある新宮神社の社頭を守るもの。地元特産品を利用した実に豪勢な神使像である。その製造には、さぞや高い技術と度外の労力が必要だったのであろう。自分たちの生業、そして郷里への誇りが感じられる優品である。


信楽市街散策の際見つけた、漆喰壁と瓦屋根が目を惹く古民家

この写真も信楽散策中に出会った古民家。

貴生川の手前、三雲(みくも)辺りから気づいたが、信楽を含めたこの地方の古い民家に一つの特徴があることが判った。写真にも見える、1階屋根上に並ぶ白い漆喰点の連なりである。

1階屋根と2階壁境の、平瓦の隙間を防水する実用処置と思われるが、非常に目につき、また美しいものに思われた。他ではあまり見ない様式だと思われるのだが、定かではない。もし名称や由来等々の詳細をご存知の方がおられれば、ご一報頂けると幸いである。


信楽焼の登り窯

起伏ある集落の道を上りきったところで、「登り窯」と出会った。傾斜を利用して幾つもの窯室を連ならせた、かなり大きなものである。今はほとんど使われていないようであるが……。

登り窯に適した地形の為であろう。付近には信楽焼の窯元が集まっている。歩きゆく道は、それらを巡るという、観光順路ともなっていた。我々も窯元に立ち寄り、窯を見学をさせてもらったり、参加者の焼物購入に付き合ったり……。


信楽奥の上朝宮集落から山上の茶園に至る細い車道

さて、散策途中に昼食も済まし、茶園ゆきバスに乗る時間となった。近隣の山中にある私立美術館「ミホ・ミュージアム」からの合流者とも無事落ち合え、出発である。

小柄ながらカラフルな市営バスに乗って山間の田園を抜けること約20分。下車地である朝宮集落(上朝宮)に到着した。ここからは歩いて山手に入り、茶園を目指す。写真は正にその途上で、道の両傍に茶樹が現れるが、まだ著名産地たることを実感させる程ではない。


信楽奥地の上朝宮の山間に現れた緑鮮やかな茶園

そして、谷あいの森を抜けたところで現れたのが写真の景である。その様子、景色の変わりぶりに一同声をあげる。

参加者からも質問があったが、茶園方々に立つ扇風機付の柱は、霜害の原因となる湿気を飛ばすものという。


信楽奥地の上朝宮の緑眩い山上茶園
尾根の斜面に沿って続く茶園

実に瑞々しく、端整な眺めである。ここから生まれる朝宮茶は、全国5大銘茶の1つとして珍重されるという。信楽焼同様、人々の知恵や努力の結実たることがうかがわれる眺めといえよう。


標高400mを超す、信楽奥地・上朝宮山間茶園と新緑の樹々
道をひた上り、やがて最も高い場所に出た。標高は400メートルを超えている。遮るものなく、茶園や奥山の連なりが見える。折しも付近の樹木も新緑盛り。茶葉の緑と相俟って、実に明るく、美しい景が広がる


信楽奥地の上朝宮山間の茶園を巡る茶会参加者
茶園中をゆく参加者

尾根上に付けられた道は、「天上茶路」とでも呼ぶべき趣が……。


信楽高原麓を走る列車より捉えた夕闇迫る雲下の信楽高地

そして、夕刻、元来たルートを辿る帰路についた。写真は夕闇迫る雲下の信楽高地を、麓走る列車より捉えたものである。折しも、会の終了を待つかのように雨も降り始めた。この後、一旦石山で途中下車し、打上げを兼ねた食事を済ませ、無事閉会したのであった。

個人的な目標の1つ、朝宮新茶の購入は、それが高所産で出荷時期が遅いため叶わなかったが、中々充実した会にはなった。まあ、茶は諦めて通販購入するしかあるまい(笑)。お疲れ様!

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 茶会